新たな証拠が280点以上!福井市の女子生徒殺害事件、再審決定
1986年、福井市で中学3年生の女子生徒(当時15歳)を殺害したとして、殺人罪で懲役7年の判決が確定し、服役した前川彰司さん(59歳)の第2次再審請求で、名古屋高裁金沢支部は、裁判をやり直す再審を認める決定を出しました。10月24日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が今回の再審決定について解説しました。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く再審決定の理由
1986年3月19日午後9時40分頃、福井市の市営住宅で留守番をしていた中学3年生の女子生徒が殺害されました。
その日は中学校の卒業式で、女子生徒の顔や首、胸には50数ヶ所の傷がありました。
前川さんは事件翌年の87年に逮捕・起訴され、2003年に出所。そして2024年10月23日に再審開始が決定しました。
再審開始が決定した理由は「証拠が不十分だった」というのが大きなポイント。
確定判決は、複数の関係者による供述を証拠に前川さんを犯人としました。
しかしこの内のひとりは「自分の刑事事件で有利な量刑を得るため、前川さんが犯人という嘘の供述をした疑いが拭えない」とされています。
他の関係者からも同様の供述がありましたが、これらがすべて「捜査機関が不正に誘導して作られた疑いがあり、いずれも信用できない」ということで再審決定となったのです。
新たな証拠と証言の矛盾
捜査当時の証言や証拠資料の中に、これまで法廷に出てなかったものがありました。
弁護側は証拠の提出を求めていましたが、これまで検察側はかたくなに拒否していたのです。
今回の再審請求で、裁判所側が検察側へ証拠の提出を強く要望したところ、なんと280点以上の証拠が出てきました。
この中で興味深いのは、「事件の日に〇〇のテレビ番組を見ていた」と証言した人の話。
実はこのテレビ番組はその日に放送されていたものではなかったのです。
当時の捜査当局も、もちろんこのことに気が付いていたはず。通常は再調査や証言を外す必要がありますが、当時はこういったことが行なわれませんでした。
「当然やるべきことをやっていなかった」。これがかなり大きなポイントとなりました。
バレなかった隠ぺい
一番の問題は、捜査当局がこの間違いを「隠ぺいした」、または「都合よく解釈した」であろうということです。
佐藤楠大アナウンサーは「バレるじゃんと思ってしまう。今は隠していたことがどんどんバレていく時代」と不思議がりますが、当時は現実にこれがバレてはいませんでした。
これが明るみにならなかったからこそ、結局は服役する羽目になってしまったのです。
逮捕から58年経って、死刑囚の立場からようやく無実が認められた袴田巌さんの例もあります。
弁護側や裁判所側が証拠の開示を求めても、検察側がかなり抵抗する場合があります。この動きを法律で変えようという動きもあるそうです。
待たれる全容解明と法整備
今回の事件については再審が決定しただけで、無罪確定となったわけではありません。
新たに提出された証拠を元にした、裁判のやり直しが認められたということ。
しかし検察がこれに不服を申し立てる場合もあるため、ルール作りが求められるという指摘もあります。
38年前の事件ですが、改めて証拠が出て再審が決定しました。事件の全容が明るみに出ることはもちろんですが、同じことを繰り返さないための法整備も待たれます。
(minto)