資金繰りの苦しさから事業承継。やりたかった仕事に挑む社長
昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学んでいます。6月12日の放送では、食品製造・加工会社の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。
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今回藤原さんがしょうかいしたのは、食品製造・加工会社の承継事例です。
藤原「資本金は5千万円、年商は7億円。従業員さんは30名ほどいらっしゃいました」
北野「年商7億あればM&A考えなくてもいいんじゃない?」
しかし資金繰りは厳しかったようで、社長はM&Aを選択。経営不振に至った背景を説明する藤原さん。
藤原「こちらのオーナー社長さんは、もともとは経営よりも研究が得意で、加工技術や微生物を用いた無農薬栽培などを追求されていました」
食品製造や加工をする中、健康的かつ高品質な製品開発に力を入れていたのだそう。
創業当初は、その研究開発力の高さからベンチャーキャピタルなどからも資金調達し、工場を設立して事業をスタートしました。
北野「幸先はいい感じなんですけど、イマイチ売れなかったんかな?」
藤原「そうなんです。無添加のアレルギー対応の食品やベジタリアン向けなど商品は良かったんですが、当時は、国内で取り扱ってくれる食品販売会社の反応がイマイチだった」
北野「特化すると、当たる時爆発的に当たるんだけど、流通が難しいね」
流通先となる大手の会社は、実績がないとなかなか取り扱ってくれません。資金繰りが厳しくなり、人員を削減して営業は社⻑ひとりになってしまい、販売がさらに伸びない悪循環に陥ってしまったそうです。
海外からの需要
買い手はどのような会社なのでしょう?
藤原「大手のお菓子製造・販売会社さんで、海外展開もされているメーカーさんが興味を持った」
お菓子のメーカーが、健康的かつ高品質な製品開発が得意とする会社の、どこに興味があったのか気になる北野。
藤原「海外ではイスラムの教えに則った食品の『ハラルフード』やベジタリアン人口が増えていて、売り手の会社が手掛けていた内容とピッタリだった」
北野「豚を食べれないとか宗教上の規則ある中で、買い手さんがちょうど求めていた技術だったわけですね」
本来やりたかった仕事に
M&Aは成功したのでしょうか?
藤原「M&Aの後、売り手の社長さんは、お菓子メーカー子会社の取締役として、製品開発の責任者として活躍中だそう」
北野「もともと得意だった製品開発に就いたんだ」
いまも、売り手の社長は「日本初の『新たな食べ物』を開発して世界に届けたい」と意気込んでいるそうです。
このM&Aをきっかけに、売り手社長が本来やりたい仕事に邁進できるようになれたことに「良かったね」と労う北野でした。
(野村)