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愛知の自動車業界にはびこる“下請けいじめ” 「赤字でもやらないとつぶれてしまう」 過剰な値引き交渉に憤り

愛知の自動車業界にはびこる“下請けいじめ” 「赤字でもやらないとつぶれてしまう」 過剰な値引き交渉に憤り
CBCテレビ『チャント!』

下請け企業の弱い立場につけこむ過剰な値引き交渉が存在しています。今回は、厳しい“下請けいじめ”の実態を取材しました。

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45%の値下げ要求に怒りの告白

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愛知県内で金属加工を手掛ける中小企業の社長のAさん。主に自動車部品を扱う、いわゆる下請け企業で、発注元からの「値下げ交渉」に憤りをあらわにします。

(愛知の下請け企業・A社長)
「言われたコストでやったら、赤字とはっきり分かっている。赤字でもやらないと、つぶれてしまう弱みを持っている。(値下げ要求が)2割なら、かわいいもの。半分とか3分の1は、結構多い」

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下請け企業を守る「下請法」は、発注元が取引価格を通常支払われる対価に比べ“著しく”低く設定することを「買いたたき」として禁じています。

Aさんの会社が直面した実際の「値下げ交渉」のやりとりを見せてもらいました。新たな部品の発注に、Aさん側の見積りは36万円を提示。しかし、発注元の要求は「20万円以下でできないか」という内容。約45%の値下げを要求されました。

Aさんは「赤字になってしまう」と、この取引を断りましたが、受けざるを得ない場合もあるといいます。

(愛知の下請け企業・A社長)
「中小零細の厳しいところで、とにかく仕事を取らないと従業員の給料を払えない」

中小企業の弱い立場に付け込む“買いたたき”

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下請け企業の弱い立場に付け込んだ「買いたたき」について、元公正取引委員会の専門家に聞きました。

(同志社大学大学院司法研究科・小林渉特別客員教授)
「デフレでなかなか価格が引き上げられなかったいろいろな企業が、利益を上げるために、生産性の向上や付加価値の向上による利益増ではなく、コスト削減によって利益を確保していくという思考がある」

中小企業の弱い立場に付け込んだ、不当な要求はほかにも。愛知県常滑市の「山本プレス工業」で起こったケースです。

山本プレス工業は、主に自動車向けの部品を手がける町工場。数年前、発注元から増産の話があり、新工場を造りました。しかし、コロナ禍などの理由で仕事は増えず。発注元からは、何の補償もないといいます。

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(山本プレス工業・山本正好社長)
「第2工場は『増産する』と取引先に言われて増設した。“出す出す詐欺”という言葉が、僕らの間では、はやっている。(増産がなくて)みんな泣いている」

(同志社大学大学院司法研究科・小林渉特別客員教授)
「事情変更のリスクを、一方的に下請けが負うような話。増産発注を何月からどのくらい予定していると言われて投資したのに、一方的にキャンセルするというのは、下請法上の問題があると思う」

下請法違反を勧告した企業数は2倍に “下請けGメン”は330人に増員

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公正取引委員会が下請法違反を勧告した企業数は、2022年度までは毎年5社程度で推移してきました。しかし、2023年度は13社と前年の2倍に増加。これは、国が目指す「中小企業の賃上げ」を妨げる行為に、公正取引委員会が監視を強めていることが背景にあります。

特に自動車業界は、2021年にはマツダが、2024年は3月には日産自動車、7月にトヨタ系列の車体製造会社が、下請法違反で是正勧告を受けました。

自動車に関わる企業は全国に約6万社。取引額は約42兆円にのぼりますが、立場が弱くなる中小零細になるほど、コストカットの圧力が増し、利益が少なくなるといういびつな構造になっています。

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下請け企業の状況に目を光らせているのは、中小企業庁に所属する「下請けGメン」。2017年に誕生し、中小企業を回り、買いたたきなどで下請けいじめが行われていないか、取引の実態について聞き取りを行っています。

聞き取りは、2023年度までに全国で5万件以上。2024年度は、300人から330人に増員しています。また、公正取引員会は2024年5月、「物価や人件費が上がっているにも関わらず、価格を据え置いた場合も“買いたたき”に該当する恐れがある」と下請法の運用基準も見直し、監視をさらに強化しています。

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しかし、違反行為を告発したことが発注元にばれると、仕事を切られてしまうのではないかという中小企業側の不安は解消されていません。監視が強化されても、明らかになる発注元の不当行為は、氷山の一角かもしれません。

「損害は3億円」 大企業との不当な関係

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山本プレス工業は、売上の7割を占めていた部品をめぐり、大手金属メーカーを相手取った訴訟を起こしています。山本社長によりますと、このメーカーから仕入れた素材に欠陥が見つかり、出荷できなくなりました。しかし、メーカーに人件費など加工費を補填する意思はなかったとして、山本社長は、裁判で生産がストップしているこの4年間の損害約3億円を支払うよう求めています。

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(山本プレス工業・山本正好社長)
「引き延ばし、引き延ばしで。これは僕の解釈ですが、潰れるのを待っているか、和解してくださいと言いに来るのを待っているとしか考えられない。それが一番の苦しみ」

下請けいじめをはじめ、大企業との理不尽な関係を抱えてきた中小企業。国が不当な取引にメスを入れ始める中、「言うべきことは言える」環境に変われるのか注目されています。

CBCテレビ「チャント!」2024年9月4日放送より

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