「団体はより本質的なメンタル競技」リオ金メダリスト山室光史が語る体操競技の奥深さ
11月13日(木)~16日(日)の日程で行われる全日本体操団体・種目別選手権(高崎アリーナ・群馬県)を前に、リオ五輪体操団体・金メダリストの山室光史氏が体操団体競技の魅力や見どころを語った。
「学生時代は社会人に勝ちたい」団体競技ならではの熱量
体操競技のシーズン終盤を飾る全日本体操団体・種目別選手権について、山室氏は団体戦の特別な魅力を強調する。
「団体はその所属で団体を組んで戦う試合なので、代表での団体と違ったモチベーションと言いますか、違った熱意だったり喜びだったりがある大会。特に大学生の時は社会人に勝ちたいという思いが結構強かった。」と振り返る。
社会人チームが総合力で優位に立つなか、いかに全員がミスなく演技をつなぎ、勝利を目指すか。そのために練習段階からプレッシャーを掛け合って、誰かが失敗したら負けるという状況を作り出し、本番に臨むという。
団体と種目別の違い「自分だけじゃない、チームのために戦う」

山室氏によれば、種目別と団体では求められるメンタリティが大きく異なるという。
「種目別や個人総合は自分だけの責任なので楽なんです。自分がちゃんとやればいいだけなので。ただ団体となると、その人の演技に委ねなきゃいけない部分が出てくる」
自分の前の選手のパフォーマンスも気になる団体戦。「種目別は自分の世界に入るだけ。究極を言ったらもう見なければいいだけじゃないですか。ただ団体となるとそういうわけにはいかないので、視野を広くして全体を見なきゃいけない」と、両者の根本的な違いを説明する。
「おとんとママ」チーム内の役割分担がカギ

団体戦では選手それぞれの役割も重要だ。リオ五輪の日本代表チームでは「内村航平はおとん。他みんな子供で僕が母親みたいな」と笑顔で語る山室氏。
「内村航平パパは?」との問いには「航平は背中で引っ張るタイプなので、ちょっとは言いますけど、基本的には自分がやることやったら後はもうしっかりみんなついてきてくれるからっていう感じのタイプ」と説明。
「盛り上げる係とか色々見ながらチームをまとめていく係とか、しっかり引っ張っていく係とか色々と役割分担があるチームの方がパワーバランスとしては強い」と、チーム構成の重要性も指摘した。
新ルールでより厳しさ増す演技に
ルール変更により、体操競技はより高い完成度を求められるようになった。「技数が減った分、より高難度で全部揃えなければならなくなっている」と山室氏。
特に「着地を止めたら加点がもらえるというルールになってるので、なおかつ終末技の難度であったり着地での加点だったり、難しいことをやらなければいけないのに着地での完成度を求められてる」と、最後まで気を抜けない競技になったという。
日本代表そろい踏み!見どころは?


今大会の注目チームについては「徳洲会体操クラブとセントラルスポーツが2チーム抜けている」と指摘。徳洲会体操クラブはパリ五輪の個人総合・金メダリストの岡慎之助選手、セントラルスポーツは東京五輪の個人総合・金メダリストの橋本大輝選手が主軸となる。
両チームを追う立場としては「順天堂大学」を挙げた。
種目別・ゆかでは「南一輝選手は今回の世界選手権で決勝に残ったが決勝は良くなかったので、どういうモチベーションで演技をするのか」が見どころ。
跳馬では「米倉英信選手は自身の名前が付けられた技『ヨネクラ』を跳ぶのかどうか」や、平行棒・鉄棒については「日本の選手はどちらかと言えば平行棒と鉄棒が得意な選手が多いので見ていて楽しさはある」と述べた。
「ドラマが生まれやすい団体の方がいろんな部分が見える」と語る山室氏。体操を楽しむ新たな視点が広がる。


