今年もマスターズが開幕!松山英樹も栄冠に輝いた“歴史と伝統”その歩み
“ゴルフの祭典”と呼ばれる、世界で唯一の大会だろう。マスターズ・トーナメントが、今年も4月9日(現地時間)に開幕する。日本からは、過去のチャンピンである松山英樹、そして、片岡尚之の両選手が出場する。
「マスターズ」とは?
マスターズは、毎年4月上旬に、米国ジョージア州にあるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで開催される、男子ゴルフの大会である。4大メジャー大会の中で最も出場選手の数も少なく、プロもアマも世界で活躍する強豪ゴルファーが集結する。まさに“ゴルフの祭典”と呼ばれる所以だ。
歴史は2人の友人から
あらためてマスターズの歴史を訪ねよう。マスターズは2人の人物によって、1934年(昭和9年)に始められた。ジョージア州アトランタ出身で、当時の4大メジャー大会を制覇したゴルファーであるボビー・ジョーンズと、友人で実業家のクリフォード・ロバーツ。この2人が、ゴルフ界に貢献したいと、毎年開催のトーナメントを企画した。荒地を購入して開拓して、オーガスタの地にゴルフ場を作った。
大会名にも葛藤あり
ロバーツは“名人だけが出場できる”という意味で「The Masters Tournament(ザ・マスターズ・トーナメント)」と名づけようとしたが、ゴルファーだったジョーンズが「その大会名は敷居が高い」と反対し、最初は「Augusta National Invitation(オーガスタ・ナショナル・インビテーション)」という大会名だった。「マスターズ・トーナメント」となったのは、第6回の大会からである。
難攻不落のコースたち
コースの特徴は、超高速のグリーン、極めて起伏のある芝で、パットに苦しむ選手が多い。特に、11番から13番まで3つのホールは「アーメン・コーナー」と呼ばれる。そこまでのスコアを一気に悪くしてしまう可能性を秘めた難しいコースであり、“神に祈る思いでプレーする”という意味で「アーメン・コーナー」なのだそうだ。
優勝賞金は直前に決まる

マスターズには、他のトーナメントと比べてもユニークな伝統がある。まずは大会の賞金。実は、事前には決まっていないのである。大会3日目までの入場券収入などをもとに決められて、最終日を前に発表される。ちなみに前回大会である2025年(令和7年)の優勝賞金は324万ドル、日本円で4億3,000万円、この10年間で2倍になった。今回の大会の賞金額はいくらになり、そして、誰がそれを手にするのだろうか?
ジャケットは門外不出
優勝者には、グリーンのジャケットが前年の優勝者から贈られる。しかし、このジャケットを大会会場から持ち出すことができるのは、優勝した後の1年間だけに限られる。次の大会までに返還しなければならず、その後は、クラブのロッカーで厳重に保管される。それだけ権威のあるチャンピオンシップなのである。観戦するギャラリーは「パトロン(支援者・後援者)」と呼ばれる。会員については秘密主義が貫かれていて、何人のパトロンがいるか、誰がパトロンなのか、これも公式には明らかにされていない。
ニクラウスとタイガー・ウッズ
過去の優勝者では、まず“帝王”ジャック・ニクラウスが挙げられる。1963年(昭和38年)に23歳で初優勝すると、大会初の連覇も含む、通算6度の優勝を果たした。今も大会最多であり、46歳で優勝した6度目は、大会最年長での栄冠になった。一方、大会最年少で優勝したのは、タイガー・ウッズ。1997年(平成9年)に21歳3か月で初優勝した。通算でも5度、優勝している。
『風と共に去りぬ』の舞台
このタイガー・ウッズの優勝には大きな意義がある。マスターズは最も保守的と言われる大会で、そこには人種差別があった。ゴルフクラブのあるジョージア州は、不朽の名作映画『風と共に去りぬ』の舞台であり、米国南部の保守的な風土。映画のシーンにもあるように、「黒人は白人に仕える」という風習で、ゴルフは白人のスポーツ、黒人の役割はキャディーだった。1983年(昭和58年)までは、キャディーは全員が黒人だった。当然、大会への黒人参加もなかなか認められなかった。そこに風穴を開けたのがタイガー・ウッズだった。
黒人差別と女人禁制
黒人差別だけでなく、女人禁制でもあった。初めて女性会員が受け入れられたのは、まだ最近である2012年(平成24年)のことだった。時代と共に、女性団体などが「女性会員がいないのはおかしい」など抗議をして、また米国企業にも女性トップが登場するなど、時代が動いた。初めて女性でクラブメンバーになったのは、国務長官も経験したコンドリーザ・ライス氏だった。黒人女性初の国務長官が、女性差別の扉もこじ開けたのだった。
松山と片岡に期待

タイガー・ウッズが優勝した頃、いずれはアジアからも優勝者が出ると予想された。それを実現したのが、2021年(令和3年)の松山英樹だった。その快挙に日本中が喜び、米国内でも大きなニュースになった。その松山は過去のチャンピオンとして今大会にも出場、日本オープンゴルフ選手権 2025で優勝した片岡尚之と共に、その活躍に期待と注目が集まる。
米国によるイラン攻撃など、地球上に不穏な空気が立ち込める中で開催される2026年(令和8年)のマスターズ。栄光のグリーンジャケットに袖を通す選手は、はたして誰になるのだろうか。
【東西南北論説風(681) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】




