売れたものランキングに異変?米にコーヒー、値上げがそのまま順位を直撃!
米が注目され続けた1年だった。「新語・流行語大賞」でも「今年の漢字」でも、トップにこそならなかったが、「米」という文字はランキング入りを果たしている。「今年の漢字」では「熊」に次いで僅差の次点だった。しかし、相変わらず米の値段は高い。
売れた商品トップは「米」
株式会社インテージが、毎年この時期に発表している年間の「売れたものランキング」には、そんな米を取り巻く状況が、色濃く映し出された。全国6,000店舗から集めたデータで、前の年よりも売れ行きを伸ばした商品、2025年(令和7年)のトップは米だった。前年比は162%で、2位以下を大きく引き離しての1位であり、コロナ禍前の2019年(令和元年)と比較しても189%と、2倍近い売れ行きだった。
コロナ禍では世相を反映
このランキングは、これまでもその時々の社会情勢や暮らしの実状を映し出してきた。最近では、コロナ禍の2022年(令和4年)は検査薬がトップだった。コロナ禍が少しずつ収まり始めた翌年は、マスク生活から脱け出しての口紅が上昇、さらに再び外出する機会が増えた2024年(令和6年)のトップは靴クリーナーだった。
値上がりによって順位上昇
そして、今回の米のトップ、しかし、これを“売れたもの”という額面通りに受け取ってはいけない。調査したインテージによると、あくまでも推定販売金額の伸びからのランキングであり、米の販売量は前年と比べて、大きく変化しているわけではない。米の価格の上昇分がそのまま反映されているのである。かつては5キロで2,000円ほどだった米の値段も、今は4,000円近くに上がっていて、政府の対策にもかかわらず、価格は下がっていない。お正月に向けて、米を使う餅もかなり高騰している師走である。
コーヒーの順位にも影響

米だけではなく、コーヒーにも同じような現象が起きている。「売れたものランキング」の3位はインスタントコーヒーで前年比119%、5位はレギュラーコーヒーで前年比117%と、コーヒーがベストテンに2項目も入るという、珍しい事態となった。実はこれも米と同じように、販売価格が上がったことが理由であり、気候変動や輸送のコストの影響である。コーヒーの販売量は、インスタントが8%、レギュラーが6%、それぞれ前年よりも落ちているのである。米もコーヒーも“売れたもの”ではなく“値上がりしたもの”ということだ。何とも複雑な調査結果と言えようか。
「マーラータン(麻辣湯)」ブームで?

2025年ならではのものとしては、春雨・くず切りが15位にランクインしたことだろう。前年比111%だった。なぜ春雨?それは、今年人気商品となったマーラータン麺が理由である。中国の四川省で生まれたスープ料理で、複数の香辛料や唐辛子と共に、肉、海鮮素材、そして野菜などを煮込む辛い料理である。そこに春雨が“麺として”加わる。こうした食べ物のトレンドが分かることも、このランキングの楽しみである。
使い捨てカイロもランクイン

この他、雑貨では、使い捨てカイロが14位に入った。インテージによると、気温が急激に下がった月に一気に売れ行きが伸びたということで、海外からの旅行客にも、使い捨てカイロは人気だという。使い捨てカイロは、米軍の装備品をヒントに、1970年代に日本で開発された画期的な商品である。“日本生まれ”と言っていいだろう。半世紀の歳月を経てなお、冬の生活必需品として重宝されている。
1年後、2026年の年末には、どんな「売れたものランキング」が発表されているだろうか。米とコーヒー、食卓に欠かせない2つのランキング順位が、今から気になる年の瀬である。
【東西南北論説風(653) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】



