「鉛筆削り器」の思い出~手回し式そして電動の登場!筆記具の記憶を旅する

「鉛筆削り器」の思い出~手回し式そして電動の登場!筆記具の記憶を旅する

筆者が小学生だった時代、学校の校門近くには文房具店があった。授業で使う数々の文房具の他、校舎の上履きや体育で使う赤白帽子も販売していた。小さな店内に並ぶ沢山の商品、まさに“ワンダーランド”的な魅力があった。

鉛筆たちの思い出

そんな文房具店の主役のひとつが鉛筆だった。店には、沢山の種類の鉛筆が陳列されていた。1ダースの箱売り、そして1本ずつのバラ売りもあった。小学生の頃、最初は人気アニメのキャラクターが描かれた鉛筆を買っていた。その後、鉛筆には“芯の硬さ”が表示されていることを知り、ノートの筆記用には「HB」、図画工作の授業用には「4B」を選ぶようになった。「F」という珍しい鉛筆を自慢気に使っていた友人もいた。新しい鉛筆を買うと、まずその先端を削らなければならない。3センチほどの小さな箱に刃物がついている小型の削り器を使っていたが、やがて、机の上に置いて、手回し式で鉛筆を削る“機器”が登場した。「鉛筆削り器」である。

鉛筆を削る“工場”

CBCテレビ:画像『写真AC』より「鉛筆と削りくず」

それはいわゆる“2階建て”の構造だった。上の部分に鉛筆を差し込む口があり、そこにしっかりとセットして固定する。そして、横に付いているハンドルをクルクルと回す。機器の中には刃が付いた歯車があって、それが鉛筆の先を削っていく。すると、下の部分にある容器に削りくずが落ちてくる。鉛筆の先が尖って削り終わると、ハンドルは空回りして「削り上がり」を知らせてくれた。削りくずが溜まったら、容器を取り外してそれを捨てる。そんな仕組みだった。当時、こんなクイズ問題があったことを思い出す。

問題「上は工場、下はゴミ捨て場、それは何だ?」
答は「鉛筆削り器」

今ふり返っても、その構造をうまく表現したクイズ問題だった。

驚きの登場!電動鉛筆削り器

CBCテレビ:画像『写真AC』より「電動と手動の鉛筆削り器」

1970年代に入り、電動の鉛筆削り器が登場した時は、衝撃的だった。電気のコンセントを差し込んで、鉛筆を初めてその差し込み口に入れた時の興奮は忘れられない。心地よい削り音と共に、鉛筆が一気に前へ進み、削れていく。そのスピード、そして、簡単なこと。手動の削り器でも十分に便利だったのだが、それを電化製品として進化させたことにも驚いた。目新しさからついつい何度も試してみたくなり、新品の鉛筆1ダース12本、すべて削ってしまった思い出もある。電動の鉛筆削り器にも削りすぎないように“ストッパー”がついていて、先が尖ったら、自動的にそれ以上、鉛筆は入っていかなくなった。こういう構造も見事だった。やがて、今度は、持ち運びが簡単な電池式も登場した。

シャープペンシル時代の到来

CBCテレビ:画像『写真AC』より「シャープペンシルと芯」

その後、シャープペンシルが登場して、鉛筆から主役の座を奪っていった。文房具店でも、数々のシャープペンシルが並び、それぞれに「0.3ミリ」「0.5ミリ」「0.7ミリ」と芯の太さの表示も加わった。替え芯も別に用意されていて、鉛筆のように“削る”必要がなかった。ノックする部分には小さいながら消しゴムも付いていた。シャープペンシルは、それ1本あれば、筆記具の役割を十分に果たすようになった。そんな“ニューフェイス(新顔)”に押されながらも、もちろん鉛筆には鉛筆の良さがあった。芯も折れにくく、鉛筆にしかない“書き味”がある。これからも鉛筆が重宝され続ける限り、「鉛筆削り器」も進化しながら存在し続けるのであろう。

象がふんでもこわれない!

鉛筆やシャープペンシルなど筆記具に関連して、筆入れの思い出も鮮明だ。筆入れにもセルロイド製やプラスチック製など種類があり、消しゴム、定規、そしてコンパスなどを一緒に入れて学校に通ったが、懐かしいのは「アーム筆入れ」である。この商品名が忘れられないのは、コマーシャルで流れた、あの有名なフレーズによるものだろう。

「象がふんでもこわれない!」。

実際にテレビ画面で、象がプラスチック製の筆箱を踏む、しかし、それでも割れていないという驚きの映像を見た時は、翌日すぐに、文房具店に買いに走ったものだった。「ポリカーボネイト」という衝撃に強いプラスチックが使用されているものだと、後になって知った。発売元のサンスター文具株式会社の公式ホームページによると、1965年(昭和40年)の発売以来、現在でも製造販売されているそうである。「アーム筆入れ」健在なり。

鉛筆、鉛筆削り器、シャープペンシル、そして筆入れなど、文房具たちの思い出は尽きない。大人になってからも訪れる文房具売り場に、今でも心をワクワクさせる人は多いことだろう。もちろん、私もそのひとりである。

          
【東西南北論説風(485)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』
昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。

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