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思わず食べたくなる!肉まんとあんまん、魅力たっぷり日本での「はじめて物語」

思わず食べたくなる!肉まんとあんまん、魅力たっぷり日本での「はじめて物語」
CBCテレビ:画像『写真AC』より「蒸したての肉まん」

あの白い湯気が食欲をそそる。熱々の肉まんを手にして、フーフーと息を吹きかけながら頬張る瞬間、誰しも至福の時を迎えるのだろう。そんな「肉まん・あんまん」の日本での進化を辿る。

もともとは中国の「包子(パオズ)」。柔らかい皮で、いろいろな具材を包んで蒸した饅頭(まんとう)だった。日本には、14世紀半ばに、禅宗の僧によって伝えられたとされる。お茶と一緒に食べるお菓子、仏教では「肉食は禁止」のため、小豆などを入れたそうだ。やがて「中華まん」として、日本でも中華街を中心に広がっていった。

「創業者・井村和蔵さん」提供:井村屋グループ株式会社

舞台は明治時代の三重県松阪町(現・松阪市)へ。1896年(明治29年)に、井村和蔵(いむら・わぞう)さんが、菓子店「井村屋」を創業した。井村さんは、和菓子製造の経験はなかったが、「自分でも作れそうな気がする」と、羊羹(ようかん)作りから始めた。固める型に大きなお膳を使うアイデアから「流しようかん」が誕生して、評判になった。

「とらまき」提供:井村屋グループ株式会社

さらにお手製の自慢の餡(あん)を使った「うずまき」や「とらまき」によって、井村屋の和菓子は人気を集めた。その後、和蔵さんから経営を引き継いだのは長男の二郎さん。戦後になって「即席ぜんざい」など商品を生み出したが、「何かもっと新しい商品はできないか」と考えた。

そんな時、「中華まん」という饅頭の存在を知った。いろいろ調べた結果、「よし!自分も中華まんを作ろう」と決意した。自分は和菓子屋であり、餡(あん)は得意中の得意、その味には自信があった。そこで中華まんの中に、お手製の餡を入れることにした。ぜんざいで人気の粒あんを入れたら、これが美味しい。井村屋の「あんまん」誕生だった。それまでの中華まんにも肉が入っていたが、味はついておらず、辛子しょうゆをつけながら食べるものだった。

「初代の肉まん・あんまん」提供:井村屋グループ株式会社

「最初から具の肉に味がついていたら食べやすいのに」。

井村さんは独自に味付けした肉を包んだ。井村屋の「肉まん」誕生だった。1964年(昭和39年)のことだった。

井村屋は、アイスクリームも製造していた。町の駄菓子屋さんに、冷凍ケースを貸し出して、アイスクリームを販売してもらっていたが、この冷凍ケース、夏はフル稼働だが、冬は“お役御免”だった。そこで、開発したばかりの「肉まん・あんまん」を、寒い季節に冷凍ケースで売ってもらうことにした。しかし、思ったように売れない。お客さんにとって、家に買って持ち帰って、温め直して食べるという“もうひと手間”が面倒くさかったからだった。
 

「電気スチーマー第1号」提供:井村屋グループ株式会社

そこで知恵をしぼった。持ち帰ってもらうのではなく、熱々の商品をその場で食べてもらえばいい。思いついたアイデアは「蒸し器」を用意することだった。1968年(昭和43年)に、オリジナルのスチーマーが完成した。最初は灯油を使って湯を沸かしていたが、どうも油の臭いも気になる。そこで3年後の1971年(昭和46年)には「電気スチーマー」を機械メーカーと共同で開発した。円筒型の容器の中に、4段に分けて、肉まんとあんまんを並べた。当時、駄菓子屋には「温かくて、すぐ食べることができる」商品はなかったこともあって、井村屋の肉まん・あんまんは大ヒットした。寒い日に、店頭で熱々の肉まんやあんまんが、温かい湯気と共に食欲をそそる。この「立ち食い」は、食べ盛りの若者を中心に大ヒットした。

コンビニエンスストアの広がりも、大きな追い風になった。全国のコンビニには、特製のスチーマーに入った「肉まん・あんまん」が並び、おでんと共に、まさに“冬の名物”となった。今では夏でも人気の、定番商品になった。

「カレーまん・1977年」提供:井村屋グループ株式会社

進化は続く。井村屋グループ株式会社は、1977年(昭和52年)には「カレーまん」、2年後の1979年(昭和54年)には「ピザ肉まん」を相次いで発売。その後も「テリヤキまん」「チョコまん」「焼き芋まん」など、その数は500種類を超えた。現在の人気は「ゴールド肉まん」と「ゴールドあんまん」。生地を2段階で熟成発酵させることで、もっちりとしながらも、口溶けの良さが好評の“1ランク上”の「肉まん・あんまん」である。

「現在の冷凍2個入りゴールド肉まん」提供:井村屋グループ株式会社

中国から伝わった中華まんを、人気のおやつに成長させたアイデアと工夫。「肉まん・あんまん はじめて物語」のページには、日本の食文化の歩み、その確かな1ページが、美味しそうな湯気の向こうで、ホカホカと温められている。

          
【東西南北論説風(411)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

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