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リニア中央新幹線2027年開業へ“大井川越え”の行方は?

リニア中央新幹線2027年開業へ“大井川越え”の行方は?
画像『写真AC』

「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」・・・江戸時代の川越(かわごし)を歌った民謡『箱根馬子唄』の一節である。2027年(令和9年)に東京と名古屋の間で開業をめざすリニア中央新幹線、この計画が令和時代の大井川を越せるかどうか、時ならぬ注目を集めている。

2027年へ走るリニア計画

リニア中央新幹線は最高時速500キロ、東京と名古屋の間を最速40分、そして東京と大阪の間を最速67分で結ぶ。まず開通するのは名古屋までの区間で、2027年開業予定である。その後、大阪までの区間は2045年の開業予定だが、最大8年の前倒しも見込まれている。
2015年には山梨県で本体工事が着工、終点の名古屋駅でもリニア新駅の建設に向けて掘削工事が着々と進んでいる。そんな中「2027年に間に合うのか?」という問題が持ち上がっている。

静岡県がかけた「待った!」

リニア中央新幹線は東京の品川駅を出発した後、神奈川県、山梨県、静岡県、岐阜県を通って愛知県の名古屋駅へというルートを通る。本体工事着工に足踏みしているのは、この内の静岡県内ルートだ。
リニア中央新幹線は静岡県の北端を通過する。山梨県を主とする「南アルプスのトンネルルート」は全長およそ25キロで、この内の「静岡工区」はおよそ9キロ。ここには大井川の源流があり、リニアのトンネルは流れの地下に建設されることになるのだが、その工事に対して静岡県が「待った」をかけた。
理由は「水」である。大井川の地下を掘ることによって水が流出してしまうためだ。リニア計画を進めるJR東海が工事に伴う環境アセスメントで明らかにした推定では「量が多いところで毎秒2トンの水が減る」という。静岡県によると、毎秒2トンは60万人分の生活用水に当たり、静岡県の人口の6分の1に匹敵する量なのだ。

水はどうなる?両者の言い分

JR東海は「建設で流出する湧き水はすべて戻すように対策を取る」と説明しているが、静岡県は「具体性がない」と反論。リニア中央新幹線は静岡県を“通過”するだけで県内に新駅は予定されていないため、静岡県ではその代わりの地域振興策も求めている。これに対してJR東海は「リニアの開通によって“のぞみ”の利用客がリニアに移ることが予想されるため、静岡県内で停車する“ひかり”や“こだま”の本数が増える」と話している。
こうした両者の膠着状態の中、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会の会長である大村秀章愛知県知事は、静岡県での本体工事未着工について、国の調整を求めている。
この期成同盟会には静岡県は加わっていない。

対立解消への動きも・・・

工事の遅れが懸念される中、静岡県の川勝平太知事と大村知事とのトップ会談が、9月上旬にも実現することになった。合わせて、国土交通省が、静岡県とJR東海の協議の仲介に入っての協議も始まるなど、夏の暑さが少しだけ和らぎ始めた中で打開への動きが加速し始めた。

大きなプロジェクトだからこそ

計画当初、JR東海はリニア中央新幹線については「全額自社で負担する」姿勢だったが、その後、総工費9兆円の内3兆円を国が「財政投融資」として出すことになり、今やリニア計画は「国家プロジェクト」となっている。沿線では2027年開通に向けての将来計画も進んでいて、そんな中での遅れはどうしても避けたいところなのだ。
しかし、こうした大きなプロジェクトだからこそ、それに関わる自治体や市民がきちんと納得した上で進めることが大切である。時計の針は容赦なく時を刻んでいくが、関係者はしっかりした話し合いをした上で、良き方向をめざすことが必要だろう。

徳川幕府の江戸時代は、参勤交代はじめ旅の難所だった大井川。リニア中央新幹線にとってはどうなるのか?その川越が成るかどうか?始まった協議の行方に注目が集まっている。

【東西南北論説風(119)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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