「東京の空が変わる日」羽田空港で新しい飛行ルート開始
【CBCテレビ チャント!金曜論説室】
※3月27日放送の「チャント!~金曜論説室コーナー」に基づく原稿内容です
2020年春、東京の空が変わります。首都圏の“空の玄関”羽田空港に新しい飛行ルートが誕生します。3月29日から運用開始です。
新しい着陸飛行ルートは?
空港の飛行ルートは風向きによって変わりますが、羽田空港に到着する場合、南風の時は東側から東京湾を横切って着陸するコースでした。今回導入される飛行ルートは、都心上空を通って北側から空港に入るコースです。
国際線が多い時間帯、午後3時から7時の間のおよそ3時間運用され、北風の場合は午前中にも運用されます。国土交通省によりますと、この新しい飛行ルートを使うことによって、現在は昼間の時間帯に1時間あたり最大80回発着している国際線の便数が90回まで増加できるということです。
国際線増便なぜできるの?
なぜ増えるのでしょうか?羽田空港には4つの滑走路があります。
大まかに説明しますと、出発用は縦に「A滑走路」と「C滑走路」、到着用は横に「B滑走路」と「D滑走路」と2本ずつ“交差”するような形になっています。例えば、「A滑走路」や「C滑走路」から離陸しようとする場合に、目の前の「D滑走路」に着陸機が近づいていたら、到着を待たなければなりませんでした。
しかし、新しい飛行ルートでは、着陸に「A滑走路」や「C滑走路」を使用して、同じ方向から空港に入るため、到着便の着陸を待たずして出発できることになるわけです。
新飛行ルートの経済効果
国土交通省では、さらに都心上空を通らないルートなども加えれば、国際線の発着数は、現在の年間6万回から4万回近く増えて、9万9000回にまで増えると試算しています。成田空港の場合は、東京駅からおよそ1時間かかりますが、羽田空港には30分ほどで行くことができます。このアクセスの便利さも加わって、日本を訪れる外国人客の数もさらに増えて、年間4000人を目標としています。2019年に過去最多の3188万人を記録しましたがそれを大きく上回る数、そして経済波及効果も年間で約6500億円と試算するなど、この新たな飛行ルート導入は大きな効果をもたらすと見られています。
騒音問題など課題もある
その一方で課題もあります。まず騒音の問題です。2020年2月には実際に大型旅客機を飛ばしてのテストが行われ、騒音測定も実施されました。国土交通省では「ほぼ想定の範囲」と分析し、さらに着陸の際の高度を引き上げるなどの対策を発表しています。しかし、新ルート下の住民からは苦情の声も出ており、この騒音問題は新ルート開始後も続くものと見られます。同時に住民からは、落下物への不安の声も寄せられています。国土交通省は、機体に対する抜き打ち検査や厳しい罰則なども用意していますが、一度たりともあってはいけないことゆえ、万全の措置が求められます。
こうした騒音を抑えようと、着陸する際の高度を高くするため、空港への侵入角度もこれまでの3.0度から3.45度へと急になるため、パイロットに対しては高度な技術が求められます。また滑走路への離着陸の“さばき”も当面、注視が必要でしょう。
世界中を席巻している新型コロナウイルス、その感染の拡大が続く中、各航空会社は国際線の便数を大きく減らしています。せっかくの新飛行ルートですが、外国人客の増加など当初描いた目標をクリアするには、まだしばらく時間がかかりそうです。
【チャント!「金曜論説室」より by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】