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乗り物のリクライニングシート、あなたは気軽に倒せますか?

乗り物のリクライニングシート、あなたは気軽に倒せますか?
CBCテレビ:画像『pixabay』

夏休みそしてお盆休み、記録破りの暑さや不順な天候が続く中、今年も海に山に故郷に、車、電車、バスそして飛行機などそれぞれの交通機関を使って日本列島の人々が大移動した。

飛行機や新幹線のリクライニングシートが苦手である。いや、リクライニングシートはゆったりできて重宝しているのだが、その使用に関しての“手続き”が苦手なのである。
いつの頃からか、飛行機が安定飛行に入った頃の機内放送では「この先シートのリクライニグをご利用いただけますが、後ろのお客様へのご配慮をお願いいたします」と放送が流れる。要するに「シートを倒すに当たっては後ろの乗客の了解を自分でお取り下さい」と言われているのである。これが何ともプレッシャーなのだ。

プレッシャーを感じる背景には過去2つの経験がある。
最初の経験は機内で「シートを倒してもよろしいでしょうか?」と後ろの席の男性に尋ねた時のことである。「ダメです」と明言された。こう言われたら、なかなかシートを倒せるものではない。倒せない座席に座りながら考えたことは「声のかけ方が悪かった」ということだ。この反省を踏まえて次からは、許可を得るスタイルではなく、「シート失礼します」と一方的に伝えることにした。
しばらくそれで通していたのだが、次の経験が訪れる。「失礼します」と言いシートを倒したところ、後ろの夫婦から「倒しすぎです。もう少し戻して下さい」と求められたのだ。通路をはさんだ第三者の乗客からも「ちょっと倒しすぎだ」と指摘されたこともある。一躍車内の“悪者扱い”。しばらく居心地が悪かった。

アメリカの国内線航空機での座席トラブルを覚えていらっしゃるだろうか?
2014年のことである。ある乗客がテーブルの支柱にはめこんで、前のシートが倒せないように固定する「ニュー・ディフェンダー」という器具を使用。前の座席の乗客と喧嘩になり、その騒動のおかげで飛行機は行き先変更を余儀なくされたというものだ。

「ゆっくり倒すことが配慮」という具体的な内容で

こうしたケースは極端なものとして、小さなトラブルはいたるところで頻繁に起きているのだろう。それによって、いわゆる「配慮放送」が常習化したと推察する。
しかし、そもそも機内や列車内を少しでも快適に過ごすために設置されたリクライニングシートであり、“存在するサービス”の権利を享受するだけなのである。その一方で振り返って声をかけた時に後ろの人が気持ちよく眠っていて、起こしてしまうことになり申し訳ない思いをしたこともあった。どちらが正解なのか?シートを倒す時はいきなりドンと下げたりせず、少し後部を見やってゆっくりと倒せば、配慮はそれで十分なのではないのだろうか。
後ろ手に引いて歩くと周りが危ないキャリーバッグ、イヤホンからの音漏れが気になる音響製品、そして「ながら〇〇」が後を絶たないスマホなど、利便性を求めて開発されたツールにもかかわらず、その導入後に使用に関して新たな注意と配慮が“登場”する時代。先日利用した飛行機の機内放送では「ゆっくり倒すなど後ろのお客様へのご配慮を」という案内放送だった。「ゆっくり倒すことが配慮」という具体的な内容で少し救われた思いがした。

四国を旅した時に出会った場面である。松山の道後温泉から高知の四万十川への観光ツアーバスに乗車した。出発してまもなく、ベテランのバスガイドさんがマイクでバス車内の乗客に呼びかけた。
「このバスにはリクライニングシートがついています。後ろの方が気になって使いづらくならないように、まずは私の合図で皆さん全員が一斉にシートを倒しましょう!いいですね。3、2、1、それ!」
車内は笑い声に包まれ、しばしの旅時間を共有するバスの乗客が一体となった瞬間だった。

【東西南北論説風(57) by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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