全身に影響を及ぼす歯周病

2021年6月20日(日)放送 【第461回】
全身に影響を及ぼす歯周病

サマリーSummary

ゲンキスチューデント:北原里英
ゲンキリサーチャー:なすなかにし
ドクター:東京医科歯科大学歯周病学分野 主任教授 医学博士 岩田隆紀 ほか
歯周病は、近年の研究によって心臓や肺・関節・脳など身体のさまざまな場所に歯周病が悪影響を及ぼす事がわかってきたといいます。そこで今回は、歯周病について徹底リサーチ。原因や予防法などを専門医に教えてもらいました。

歯周病について

歯周病とは、歯肉炎と歯周炎の総称。初期は「歯肉炎」、進行していくと「歯周炎」になります。歯周病は、30歳以上の約80%がかかる病気といわれており、誰でも発症する可能性があるそうです。

歯周病の初期「歯肉炎」とは?

歯磨きをしなかったり、不十分だったりすると歯周病菌を含む悪い菌が増えていき、歯垢になっていきます。この歯垢が原因で炎症が起こるのが「歯肉炎」です。口の中は、温度・湿度・栄養素など、菌が増える環境が整っているので、繁殖の条件が最高になると30分~1時間で菌が倍増するのだとか。ただし、口の中の菌は、健康な状態だと免疫が働いて増える事はないので、誰もが歯周病になるわけではありません。口の中が常に不潔な場合や、年齢が高くなってくると、免疫が落ちて歯周病のリスクが高まってしまうそうです。

<あなたは大丈夫!?歯肉炎チェック>
下記の項目に1つでも当てはまる場合は、歯肉炎の可能性があるそうです。
□ 口臭を指摘された・自分で気になる
□ 朝起きたら口の中がネバネバする
□ 歯磨き後毛先に血がつく・すすいだ水に血が混じる事がある
□ 歯茎が赤く腫れてきた

進行した歯周病「歯周炎」とは?

歯肉炎を放置すると、歯茎の炎症がさらに悪化し、歯茎のバリア機能が壊れてさまざまな菌が入り込んでしまいます。すると、身体は強い免疫作用のある「サイトカイン」を作り出して対抗。しかし、サイトカインは強力なため、菌を倒すとともに歯槽骨という歯の周りの骨も溶かしてしまうのだとか。この状態を「歯周炎」といい、最悪の場合歯が抜けてしまうそうです。

<あなたは大丈夫!?歯周炎チェック>
下記の項目に1つでも当てはまる場合は、歯周炎の可能性があるそうです。
□ 歯茎が下がり、歯が長くなった気がする
□ 歯茎を押すと血や膿が出る
□ 歯が浮いたような気がする
□ 歯並びが変わった気がする
□ 歯が揺れている気がする

歯周病と身体の病の関係

歯周病は、自覚症状が少なく、沈黙の病気「サイレント・ディジーズ」とも呼ばれ、知らないうちに身体のさまざまな病気を引き起こす場合もあるそうです。

<歯周病と関係があるといわれる身体の病>
・関節リウマチ
関節リウマチとは、免疫の異常により主に手足の関節が腫れたり、傷んだりする病気の事。歯周病を放置すると、炎症部分から体内へ歯周病菌が入り込んでいきますが、それが関節リウマチの原因物質を増やすと考えられているのだとか。実際に、歯の本数や歯茎の量が減る数と比例して、関節リウマチの原因物質が多くなるという研究結果もあるそうです。
・糖尿病
糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンの働きが弱まるなどして、血管内の糖が多くなりすぎてしまう病気の事。歯周炎になると体内で発生するサイトカインは、歯槽骨を溶かすだけでなく、インスリンの効果も阻害してしまうため、糖尿病につながる恐れがあるそうです。
・誤嚥性肺炎
・脳梗塞
・心筋梗塞 など

<歯周病が新型コロナウイルスなどの感染症にも影響!?>
先生によると、歯周病で上皮のバリア機能が落ちると、さまざまな菌が入りやすくなり、感染症を発症するリスクも高まると考えられるのだとか。実際に、アメリカのある研究によると、インフルエンザの流行期に歯科医師による口腔ケアを受けた人の発症率は1%、受けなかった人の発症率は9.8%というデータもあるそうです。

ドクターおすすめ!歯周病菌の増加を防ぐ方法

歯周病菌の増加を防ぐには、日々の歯磨きや、歯間ブラシやフロスなどの補助具を用いてのセルフケアなどが大切だそうです。なかでも、先生オススメの予防法をご紹介します。

<歯周病菌おさえこみ作戦①つまようじ法ブラッシング>
▼歯ブラシの毛先を少し上に向けて歯と歯茎の境目にあてる
▼歯ブラシの毛先を押し込み反対側まで通して抜く
▼「入れて」「出して」を1か所につき10回程度行う
▼上記の方法で歯の表側と裏側から、すべての歯間を磨く
歯ブラシの毛1本1本がつまようじだと思って、歯間に入れるようにしてみてください。歯間が詰まっている場所は1、2本でも大丈夫!先生曰く、最初は出血量が増えたと感じる事があるかもしれませんが、徐々に出血量が減って歯茎のマッサージ効果が期待できるとの事。歯周病で歯がぐらつく人につまようじ法で歯をブラッシングしてもらった所、74%の歯でぐらつきが改善されたという研究結果もあるそうです。

<歯周病菌おさえこみ作戦②緑茶を飲む>
先生がおすすめするもう1つの予防法は、緑茶を飲む事。緑茶には抗菌作用のあるカテキンが豊富に含まれており、歯周病菌の繁殖を抑え、歯を失う可能性を減らすと考えられているのだとか。実際に、日本の高齢者で調査をしたところ、緑茶を1日に4杯以上飲む人は緑茶を飲まない人に比べ、約1.6本多く歯が残っていたそうです。

<ドクターおすすめ!歯磨きのポイント>
先生曰く、歯磨きは回数よりも磨き残しがない事が重要!時間のある時に1日1~2回、歯の外側と内側を全部きちんと磨きましょう。磨き方は、小刻み(1~2mm)に歯ブラシを動かし、1か所につき20回以上往復させてください。歯をマッサージするイメージで行うと良いそうです。一方、歯ブラシを大きく動かしてゴシゴシ磨くのはNG。力強く磨くと、血が出るだけでなく、歯が削れたり、歯茎が下がったりして元に戻らない事もあるそうです。

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