開幕2軍から奮起!今や竜の主軸となった福永裕基内野手の原点は“悔しさがすべて”
【ドラゴンズを愛して半世紀!竹内茂喜の『野球のドテ煮』】CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)
なかなか梅雨明け宣言できない竜
7月18日、梅雨明けの発表があった東海地方。30度を超える暑い日が続く名古屋だが、ドラゴンズの戦いぶりはなかなか梅雨明け宣言とは言えない状況だ。オールスター前、最後の3連戦となったジャイアンツ戦も残念ながら1勝2敗と負け越し。7月21日現在、今シーズン最多となる借金8。苦しい戦いが続いている。
このような場合、求められるのはなんといってもラッキーボーイの出現。今シーズン、2軍で活躍しても1軍レベルではなかなか力が発揮できず降格する選手を数多く見ているが、混迷を極める今だからこそ我慢の起用を求めたいものだ。いつの世も新戦力がチーム力の底上げにつながるわけで、期待の声が高いブライト健太選手、鵜飼航丞選手、三好大倫選手、そして誰もが期待をかけるダヤン・ビシエド選手の大暴れを1軍の場で見たいドラファンは多いはず。各々の選手ともに、2軍において決して芳しい成績を残しているとは言えない。ただ信賞必罰として1軍でも数字を残していない選手は2軍降格するという焦りを、そして2軍選手は成績を残せば1軍昇格という希望をもって汗を流して欲しいものではないか。
さて今週のサンドラは、4番にも抜擢される活躍を見せている福永裕基選手の特集。開幕1軍入りを逃した悔しさをバネに、いまや竜の主軸を任されるまで成長した福永選手。ここまでの活躍について語ってもらった。
悔しいことがすべて
開幕を2軍で迎えた男が、今ではチームに欠かせない活躍を見せている。7月は8試合連続ヒットを記録するなど好調をキープ。7月12日、バンテリンドームで行われたタイガース戦、プロで初めての4番にも座った。
“マジか!”
試合前、4番を打つと聞かされた福永選手は驚きを隠さなかった。しかし自分の中では4番目に打つバッターとして、特に心が高ぶるなど変化はなかったという。ただただチームが勝つために貢献したい、その一心をもって試合に臨んだ。
今でこそ打線の中心に座る福永選手だが、その歩みは順調なものではなかった。2023年、ルーキーだった昨シーズンは開幕スタメンの座を掴み、5月下旬までは打率3割をキープ。しかし夏場は打率1割を切るなど、プロの洗礼を浴びた。
そして今シーズンの開幕は2軍スタート。福永はもがいていた。
福永選手「自分の実力が足りないだけなので、認めてもらえるまで頑張るしかない」
思い返せば、ここまでの道のりは試練の連続。高校時代は甲子園の出場はなし。大学、社会人と進み、2度のドラフト指名漏れの末、26歳でようやく悲願であった指名をつかみ取った。
“悔しいことがすべて”
福永選手は自らの原点をそう捉える。
開幕1軍を逃した悔しさ、そして自分の力をアピールできなかった不甲斐なさに彼の心に火が付いた。
脱力した中でのフルスイング
逆境には慣れている。再び1軍の舞台へ立つために取り組んだのは、新たなる武器を手に入れること。昨シーズン、わずか2つに終わった盗塁が2軍とはいえ、4月下旬までの27試合で11盗塁という数字を残した。
福永選手「なにかインパクトのあるものを残さないといけないと。とにかくアビールし続けて1軍へ呼んでもらえるように頑張っていました」
一方、持ち味のバッティングもアピール。1軍昇格までに92打数30安打17打点3本塁打、打率.326と好成績を残し、開幕から約1か月遅れとなる4月25日に1軍昇格を果たした。
1年間プロ生活を経験したことで、自分自身の変化を感じ取っている。それは結果を欲しがり、当てにいっていたバッティングは自分の良さを消してしまう。とにかく心掛けるのはしっかり振ること。そしてその中でも打席では力みすぎない。まさに脱力した中でのフルスイングである。
福永選手をプロ入りから指導する和田1軍打撃コーチは飛躍の理由をこう話す。
和田コーチ「プロのスピードやキレに1年間で慣れたことが大きい。元々ポテンシャルは高い選手で何事に対しても全力で取り組む選手。余計に自分の身になりやすい伸びしろはかなり持っているのではないかと思っています」
この日のゲストコメンテーターとして出演した吉見一起さんもプロに慣れたことは大きいとしながらも、もうひとつ成長した理由を挙げた。昨年変化球へのもろさを感じていたが、それも克服。変化球もしっかり振れるようになったのが好調の要因ではないかと解説した。
試練を乗り越え、栄光ある戦士
そして和田コーチが語った無限のポテンシャルが今、開花しようとしている。7月16日、神宮球場でのスワローズ戦。プロ初となる4番に座り、初回に魅せた右方向への完璧な一発。昨年低迷した夏場を迎えても彼の打棒はとどまることを知らない。
福永選手には励みになっているものがある。初めて作られたオリジナル応援歌だ。
“試練を乗り越え 栄光(はえ)ある戦士となる 広角に打ち返せ 福永裕基”
まさに福永選手が歩んできた道そのもの。目標だった甲子園出場の夢が叶えられなかった高校時代。そして26歳までドラフト指名漏れなど、彼の野球人生は険しい道のりだった。数多くの試練を乗り越え今、プロ野球の舞台で輝きを見せる。竜の主軸を担う男はファンの歌声を背に戦い続ける。
がんばれ福永裕基!
がんばれドラゴンズ!
燃えよドラゴンズ!
竹内 茂喜