松原タニシも注目!朝宮運河『日本ホラー小説史』古事記から令和ホラーまで
2月17日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、事故物件住みます芸人の松原タニシが、朝宮運河さんの『日本ホラー小説史 怪談、オカルト、モキュメンタリー』(平凡社新書)を紹介しました。古事記の時代から令和のモキュメンタリーホラーに至るまで、日本人と「怖い話」の壮大な関係を紐解く一冊です。
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松原が紹介したのは、怪奇幻想ライターの朝宮運河さんが今年1月に出版した『日本ホラー小説史』です。日本のホラー小説がどのように始まり、現代に至るまでどう発展してきたのかを解説した一冊です。
現在は「令和のホラーブーム」が来ており、その代表格が背筋さんのホラー小説『近畿地方のある場所について』です。昨年映画にもなったこの作品は、フィクションなのかノンフィクションなのか一見わからない作りの「モキュメンタリーホラー」というジャンルで、今、書店にはこのジャンルの作品が数多く並んでいます。
事故物件をはじめとする怪談本の人気も相まって、ホラーブームの火つけ役になりました。
そうしたブームがある中で、そもそも日本のホラー、特にホラー小説はどのように成り立っていったのかを解説しているのが『日本ホラー小説史』です。
怪談とホラーの明確な違い
古くは奈良時代の古事記から現在に至るまで、日本にはホラーが見え隠れしてきたといいます。
日本人はホラーが大好きで、それがずっと続いてきました。ただし「ホラー小説」に関しては、戦後から始まったということがこの本には書かれているそうです。
ここで松原は、怪談とホラーの違いについて説明します。現代の考え方では、ホラーはフィクション、怪談はノンフィクション。これが両者の違いだといいます。
ただし戦前は「怪談」という言葉自体が「ホラー」を意味しており、小泉八雲の『怪談』もフィクションとして書かれた作品でした。
ホラー好きな日本人
古事記は神話に近いものですが、そこにホラーな要素が含まれています。続く平安時代中期の『源氏物語』には、「夕顔」の話の中に生霊や死霊が登場します。
『今昔物語集』では安倍晴明が百鬼夜行と戦う話が書かれ、中世の鎌倉・戦国時代になると、能楽の「夢幻能」で死者を舞台に登場させるといった表現も生まれました。
江戸時代に入ると、怪奇物語集『伽婢子(おとぎぼうこ)』で中国の『牡丹燈記』が翻案され、これがのちに、四谷怪談・皿屋敷と並ぶ日本三大怪談のひとつ「牡丹灯籠」として広く知られるようになります。
さらに上田秋成の『雨月物語』や曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』なども生まれ、江戸時代を通じてホラーな要素を持つ作品は人気を博していきました。日本人は昔から怖い話が好きだったのです。
明治の反ホラーと海外ホラーの流入
ところが明治に入ると、江戸時代に流行っていたものをすべてやめようという風潮が生まれ、「反ホラー」の時代が訪れます。
三遊亭圓朝の『真景累ヶ淵』という怪談作品のタイトルにある「真景」は「神経」をもじったもので、幽霊は人間の神経が見せているものだという考え方を表しています。文明開化の時代、幽霊やオカルトが否定される風潮が広がっていきました。
しかし、皮肉なことに、この文明開化によって海外のホラーが日本に入ってきます。フランケンシュタインやドラキュラといった新しいホラー文学が紹介され、再びホラーへの関心が高まっていったのです。
小泉八雲の『怪談』が出版され、夏目漱石も怖い話を書き、日本人はやはり怖いものが好きだという機運が高まる中、作家の泉鏡花が大きな役割を果たします。
大のお化け好きだった泉鏡花が「怪談会」を開催したことで、怪談文化が爆発的に広がりました。
柳田國男は『遠野物語』で座敷童などの話を記録し、大正時代には芥川龍之介がその『遠野物語』に触発されて自ら怪談を収集しに出かけたといいます。
二度訪れた逆風
しかし、大正時代に関東大震災が起きると、怪談やホラーは一気に衰退してしまいます。
そんな中、時代小説を書いていた岡本綺堂が転機をもたらします。時代小説には時代考証のための古い資料が不可欠ですが、震災で資料が焼けてしまったため、岡本綺堂は時代小説を断念。代わりに、昔から好きだったホラーを書こうと決意し、怪談話を書き始めたのです。
そして江戸川乱歩が登場します。探偵小説の作家として人気を博していた乱歩ですが、第二次世界大戦中は探偵小説の執筆を禁じられていました。
『芋虫』のようなグロテスクな作品は発禁処分にもなっていたといいます。
ホラー小説というジャンルの誕生
戦争が終わると、人々は自由に好きなものを求められる時代になりました。江戸川乱歩は「探偵小説がもう一度来る」と確信し、新しい雑誌『宝石』を立ち上げます。
この雑誌で海外ミステリーの評論を書くうちに、好きだった海外の探偵作家たちがホラー的な作品も書いていることに気づきます。
それまでホラー的な作品は、SF作品や神話、物語の一部としてしか存在していませんでした。しかし乱歩は「ホラー小説は探偵小説の中にあるのではなく、単体として存在するのではないか」と気づいたのです。
探偵小説が合理的で人間の仕業を追求するのに対し、ホラー小説は幽霊など非合理的なものを扱います。乱歩はその違いを認識した上で、それらが混在する作品を「ホラー小説」と呼んでいいのではないかと提唱しました。
ここから戦後の日本ホラー小説の歴史が始まり、横溝正史をはじめとする作家たちがホラー作品を次々と生み出していくことになります。
ここまでがまだ序章の内容です。松原自身もまだ読了途中とのことですが、「すごい読みごたえのある本ですので、ぜひ皆さん一度本屋で探してみてください」と呼びかけました。
(minto)
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