竜の近本光司になれ!岡林勇希の慢心なき進化に迫る
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
「勝ちたい気持ちが一番」岡林勇希の本音
昨シーズン、高卒3年目の岡林勇希選手は持ち前のバッティングセンスや、身体能力を生かした守備の巧みさで最多安打、ベストナイン、ゴールデングラブ賞と数々の個人賞を獲得してきた。成績を残して実質2シーズン目となる今季、2年目のジンクスといわれるような失速を何とか回避するように奮闘している印象が強い。そんな岡林選手にインタビューで迫った。
去年対戦して敗れたジャイアンツとの開幕戦前日に岡林選手はこう語った。
「相手のミスでもなんでもいいのでまずは出塁することで、相手にプレッシャーをかけられると思うので。チームの勝利のために何ができるかを考えてやっていこうかなと」
そう宣言した岡林選手は初回のスリーベースで見事に役割を果たし、先制の得点をもぎ取り開幕戦勝利を飾った。しかし、その後チームは最下位に沈んでいったが岡林選手の成績は、打率.261、安打数41本、打点8と健闘を続けている。岡林本人はその状態についてこう分析する。
「まだまだ自分の感覚的にも合わない部分がいっぱいあるので、シーズン始まったばかりですけどそこまでいい感覚では正直ない。まあ数字よりか、勝ちたい気持ちが一番なので」
実際、5月に入ってからの月間成績は不調な部分もあるが日々変化するポジションや打順に対応するということを考えれば順応するまでの途中経過とも捉えられる。その中で、与えられた役割をどのようにこなしていくかを考えて成長していると言える。
「(石川)昂弥とは『苦しいな』とは話していますけど、苦しい中でもしっかり楽しんで盛り上げるしかないと。出場しているのも本当に若い選手なのでそういった話はしています」
そういった意識は、4月16日のジャイアンツ戦で3番岡林、4番石川昂、5番細川成也の若手クリーンナップでの勝利に繋がった。そのインタビューでは、僕が打てなくても昂弥が返してくれるという気持ちで打てたと語る。若手選手同士の相乗効果で掴んだ勝利だった。
5月12日のベイスターズ戦で記録したプロ初ホームランについてはヒーローインタビューではこう語る。
「3連敗中だったので、この悪い流れをなんとか打ち切ろうと、セカンドランナーを3塁に持ってこうと思って引っ張りにいった結果がまさかホームランとは思ってなかったので、すごくビックリしました」
そのホームランを振り返ってこう語る。
「あれはもう本当にたまたま右打ちしようと思って、それがたまたま良い結果になったんで」
得点圏の打率でも高打率を残す岡林選手のチームバッティングの意識が最高の形として実った。
「去年は何でもかんでも打っていましたけど、相手も点取られたくないので初球から厳しいボールがきますし、その中でボール球に手を出さないのは大事。しっかり長くボールを見ることを意識しています。自分の今の調子を考えて、何が一番良い作戦かを考えてそういった打席が増えるようになりましたね」
去年の38試合消化時点での安打数は34安打だったが、今年は同試合で41安打と上回っている。打率こそ去年の最終成績の.291と比べると、現在は.261と落ちてはいるがその状態について山田久志氏はこう分析する。
「いろんな打順を打っていながらこうして結果出すっていうのは、何かつかんだねこのバッター。私はね、このバッターはタイガースの近本(光司)になると思っている、そのレベルの選手なの。そうなると本当に勝負力も出てくる、長打も出てくる、見ててください」
去年に比べて、さまざまな役割を考えての打席が増えたにもかかわらずしっかり対応できてきているという評価だった。
守備面・走塁面での心得
守備では持ち前の機動力や肩の強さを生かしセンターとライトのポジションを兼任していることについてこう語る。
「守備位置が変わればグラウンドの見方も変わるので、そこは難しいところはありますけど与えていただいたポジションでしっかり自分のできるプレーをしようかなと思っています」
さらに、リーグトップの盗塁数についてはこう話す。
「まだ思い切ったスタートを切れていないと思いますし、自分の中で自信なさげに走っている時もある。もっともっとアウトになっても良いから盗塁の企画数を増やしたいと思います。今は周りも若手が多いのでその中でも引っ張っていきたい気持ちはあるけど、まだまだ自分の実力的にもそこには達していないので失敗しても良いという気持ちで思い切ってプレーしようかなと思います」
秀でた打撃センスに高い身体能力を持ちながらも、着実に自分の課題に取り組んでいる岡林選手はこの一年でまた一回り大きく成長するだろう。いつもの明るく人懐っこい岡林選手の様子とは打って変わって謙虚でありながらも真っ直ぐに語る姿にその期待は裏打ちされる。どんな進化を遂げるのか楽しみに見守っていきたい。
筆者の感想まとめ
ここ1週間勝ちがつかない連敗で最下位から抜け出せない中で、希望を見出せるのは若手選手たちの成長だ。昨シーズン活躍し、一気に外野のポジションを固めた岡林選手はどうだろうか。インタビューにもあったように、昨シーズンに比べるとまだ感覚が掴めていない様子は見ていても感じる。
しかし、そんな中で複数のポジションをこなしながらも、ここまでエラーは1と守備力は安定しており不安定なチームの守備の軸を担えるようになってきている。一方で、打撃は打率の低下に伴って出塁率が下がっていることは課題だが、本人も語るように様々な打順で積んだ経験は、チームバッティングの中で何を求められているかが明確になることにおいて今後に活きてくるだろう。山田氏が言うように近本選手のような、いや、そこを超えられるような選手になってもらいたい。
澤村桃