プロ初打席でHRもその後苦しい二軍生活…竜に移籍後は「野球をやっている実感がある」 細川成也の今
「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム
燻っていたベイスターズ時代、移籍への意気込み
現役ドラフトでドラゴンズに移籍してきた細川成也選手。持ち前の長打力で、クリーンナップを担う期待の若手に単独インタビューを行った。細川選手はドラゴンズ移籍後、19試合で打率.317、打点8(4月29日時点)の成績を上げている。赤星憲広氏は「反対方向にも打てるようになったことで、打点以上の貢献を感じる」と評価する。さらに細川選手は、中学生時代にジャベリックスローで77.42mを記録し全国2位の成績を残すほどの恵まれた身体能力を持っている、これからがますます楽しみな選手だ。
細川選手「一軍の舞台で出させてもらって、すごく楽しいというか野球をやっている実感があるので、僕自身はすごく嬉しい」
そう話す細川選手もベイスターズで苦しんだ6年間があった。プロ初打席で初ホームランを放ったものの二軍生活が続いた。その二軍では、4年連続2桁本塁打という驚異的な成績を残すも一軍の舞台でその実力を発揮することはなかった。
細川選手「二軍ではいい成績が出せて、一軍に上がったら出せず、一軍と二軍をいったり来たりの生活で。正直苦しかったというか、野球をやっているという心地はしなかった。『このまま終わってしまう…』とベイスターズのときは考えた」
そんな細川選手に現役ドラフトという大きな転機が訪れる。出場機会に恵まれない選手を対象とする移籍制度だ。
細川選手「現役ドラフトはあるんじゃないかなと思っていましたし、一からやり直そうという気持ちでいい機会になるんじゃないかなと思っていたので『クソっ!』っていう感情はなかったですね」
ポテンシャルの力を引き出す和田コーチの指導
ドラゴンズ移籍後初のキャンプでは、和田一浩コーチからこんな指導を受けた。
和田コーチ「力はあるんですけど、上手く下半身というか足を使ってバッティングができない選手なので、野球の動きだけで覚えるというよりは、いろいろなことを刺激を入れながらやっていくとひょっとしたら今までわからなかったことがわかるかもしれないので、色々アプローチしていきたい」
和田コーチの指導が見事にはまった部分をこう語る。
細川選手「僕自身タイミングとるのが下手くそだったので、テニスの練習もそうですけど『間』をとる練習というか、ちょっといい感覚が掴めたのは、室内でやっていた練習じゃないかなと思う」
その結果、実戦で3本のホームランを放ち、立浪監督がキャンプMVPに指名するほど期待される存在に。だがオープン戦では思うように力を発揮できず開幕スタメンに名を連ねることはできなかった。
そこから、開幕2戦目に巡ってきたチャンスに代打でついに期待に応えることができた。これによりスタメンの座をつかみ、クリーンナップとして打線を牽引している。
細川選手「多少引きつけて打てたりだとか、変化球を拾えたりだとかベイスターズの時とは違う打撃ができているので。チームを引っ張っていく存在になってほしいと言われている。僕だけではないですし、若い子達で引っ張っていける存在になってほしいと伝えられているので、そうなれるようにとは思っていますね。」
ファーストの守備とアピールポイント
守備面では現状チーム編成の兼ね合いで、本業ではないファーストでの出場が続いている。ビシエド選手の年齢を考えても、ファーストが守れる長距離砲がいることは長期的な視点でも大きなメリットとなる。
細川選手「渡邉コーチからは基礎的なファーストの動きを教えてもらっているので、外野も内野も守れた方が出場機会も増えるので、頑張りたいなと思っています。」
経験が少ないためにまだ不慣れながらも、チャンスをもぎ取る姿勢で無理せずにできることをしっかりとこなしている印象だ。細川選手の一番の魅力となるのは、長打力だ。それを引き出す筋骨隆々とした身体は、米1kgは食べられるという食欲によって支えられている。以前はカルビが好きだったものの24歳ながら脂っこいものが食べられなくなってきたというが、人一倍の食欲で長打力を発揮できる礎を作っている。
細川選手「プロ野球選手である以上は一軍の舞台で活躍したいっていうのが一番なので、ホームランが僕自身の一番のアピールポイント。20本打てたらいいなとは思っていますけど、どうなるのかなって感じですね。」
目の前のことに落ち着いて向き合えている今、その充実感が爽やかな表情に現れていた。更なる結果を積み重ねて若き長距離砲として、その姿勢を誇りながらチームを引っ張る存在となってほしい。
筆者の感想まとめ
プロ野球選手に珍しい細川選手の控えめな話し方からは、自分の結果と真摯に向き合いながら戦っている姿勢が窺える。その姿勢が結んだ結果に、SNSなどでベイスターズファンからも「開花して良かった!」「活躍して嬉しい!」などポジティブな声がたくさん見られる。
移籍を新しい出発点と捉え静かな炎を燃やしながら、和田コーチとの指導をしっかりと吸収した。テニスラケットを使った練習は、キャンプだけにとどまらず不調の時に感覚を取り戻す手段となっている。ポテンシャルの魅力もさることながら、こうした地道な積み重ねが結果に出ていることがとても嬉しくなる。打撃は波があるからこそ、小さな積み重ねを怠らないことが重要になる。ドラゴンズが渇望する和製大砲の完成を焦らずに見守りたい。
澤村桃