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落合監督が認めたスラッガー森野将彦~ドラゴンズ立浪新政権コーチ列伝(2)

落合監督が認めたスラッガー森野将彦~ドラゴンズ立浪新政権コーチ列伝(2)

立浪ドラゴンズの秋季キャンプが始まった。11年ぶりペナント奪還へ、3代目「ミスター・ドラゴンズ」立浪和義新監督が選んだ指導者たち、現役時代にも竜を支えた魅力的な顔ぶれが揃った。そんなコーチたちの横顔を、ファンから見た思い出を中心に紹介する。
第2回は、1軍打撃コーチを担当する森野将彦さん。

かつてのライバルをコーチに

今回のコーチ人事で最も驚いたのは、森野将彦さんの参画かもしれない。2年前まで2軍で打撃コーチを務めていて、その指導力については折り紙つきだ。注目したのは立浪新監督との“因縁”である。2004年から8年間にわたった落合博満監督の時代、新たにレギュラーの座を勝ち得たのはただ一人、森野さんだけである。それほど落合監督が選手に求めたレベルは高かった。それに“合格”した森野さんが、3塁のポジションを奪った相手こそが当時の立浪選手だった。先輩と後輩、両者の間には当然のように微妙な空気感が漂っていたと拝察するし、場合によってはこうした関係が引きずられるケースもある。しかし立浪新監督は、森野さんを選んだ。その観察眼、包容力の大きさ、そして懐の深さに感服した。

スラッガー森野の実力

もちろん、それは「森野将彦」という打者の力量が大きな理由である。1996年(平成8年)のドラフト会議で、東海大相模高校からドラゴンズに2位指名を受けた森野選手は、ルーキー年にプロ初安打を初ホームランで飾る。高卒選手の新人ホームラン、実は1988年の立浪選手以来のことだった。1年目の「7」から始まり「8」「16」「31」「30」再び「7」と背番号が替わった森野さんは、守備でもバッテリー以外すべてを経験した。その目まぐるしさについ惑わされがちだが、打者としての成績は素晴らしいものがある。安打1581本はチーム歴代11位、2塁打333本はチーム4位、そして782打点はチーム9位。ちなみに、この3つの部門のチーム歴代トップはいずれも立浪監督、ここにも“因縁”があると言えよう。

森野が語る名監督たち

「サンデードラゴンズ」(C)CBCテレビ

森野さんが執筆した著書『使いこなされる力。』(東京ニュース通信社・2020年発行)には、ところどころに選手に対する指導法が垣間見られる。入団した時の監督である故・星野仙一さんについて「1軍に上がると、すぐに試合で使ってくれた」と2軍の選手をやる気にさせた若手起用法を褒める。森野選手を語る上で欠かせない落合監督による猛ノックにも触れて、自分そして“アライバ”井端弘和選手と荒木雅博選手の他に続く選手がいなかったと嘆き、「私の晩年にはBクラスが当たり前のチームになった。その原因はチーム全体に厳しさが足りなかったからだ」と厳しく分析している。

森野コーチへ、そして選手たちへ

この2年間、ドラゴンズには左打者の打撃コーチが不在だった。森野さんのコーチ就任でそれは解消される。根尾昂、岡林勇希、そして土田龍空らの各選手、ドラゴンズには有望な左打者が多い。森野コーチにはこうした若竜のバッティング育成にも期待するが、同時に“絶対的なレギュラー”だった立浪選手からポジションを奪ったプロの厳しさを、是非叩き込んでもらいたい。
そしてドラゴンズの選手たち。森野将彦コーチから、勝負強かった打撃と野球に向き合う厳しさを学び、打って打って打ちまくってほしい。
                             

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。          
          
<引用>
・森野将彦『使いこなされる力。』(東京ニュース通信社・2020年)

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