ベールを脱いだ根尾昂選手・その魅力に自主トレ見学のドラゴンズファンも喝采
中日ドラゴンズはルーキーのみの自主トレに続き、いよいよ先輩選手たちが加わっての選手会合同自主トレも始まった。名古屋市中川区にあるナゴヤ球場のスタンドには、連日多くのファンが詰めかけている。初日の1月15日、午前10時の開門前にゲートには長い行列ができた。試合ではない、自主トレなのである。でも今のドラゴンズにはかつてなかったことがいろいろ起きつつある。
想像以上!ルーキー根尾昂の魅力
その中心は、背番号「7」のゼッケンをつけたルーキー根尾昂選手である。
秋のドラフト会議での指名以来、ドラゴンズファンはその一挙手一投足に注目しながら、次々と驚かされてきた。そして、その「驚き」は年が明けても続いている。そこに「喜び」という手応えを加えながら。
半世紀以上ドラゴンズファンの立場を続けている。ルーキーを迎えた最初の思い出は、1969年(昭和44年)ドラフト1位だった谷沢健一選手だったと記憶する。前年の星野仙一投手に続く東京六大学のスター選手の入団に、私たちファンは沸き立った。背番号「14」を付けた明るい笑顔とシュアなバッティングに注目が集まった。谷沢選手は見事に新人王に輝いた。
以来、毎年ドラゴンズに大勢の新人選手を迎えファンとしてもシーズンへ胸をときめかせたが、根尾選手を取り巻く空気感は異質、ある意味で別格のように思う。少年野球から甲子園と大舞台で活躍してきたスーパースターであることも理由だが、そのフィールドの広さがケタ違いなのだ。
異例の愛読書コーナーに人気
お正月に名古屋市内の書店を訪れた時、今なおレジの前に「根尾昂選手の愛読書コーナー」が設置されていることに目を見張った。
根尾選手が読んだという『論語と算盤』(渋沢栄一著)や『思考の整理学』(外山滋比古著)といった愛読書が、10月のドラフト1位指名直後にコーナーとして陳列されて話題になった。実際売れているからこそ、このコーナーが継続しているのであろう。
合宿所もあるナゴヤ球場、その近くにある中華料理店では「根尾ラーメン」がお目見えしたが、本拠地ナゴヤドームでも「根尾丼」やスイーツなどを開発して開幕から販売することが決まった。周囲のフィーバー(熱狂)は収まる気配がない。
入寮持参品も別格のユニークさ
本筋の野球においても、驚きは続いている。
ルーキーの入寮で毎年話題になるものはその持参品だが、根尾選手は「野球規則」を手にしていた。本を持参する選手は過去にも多くいたが、野球の公式ルールブックを手にしての入寮とは!
鮮やかな緑色のバランスボールに座って、野球規則を手にインタビュー取材を受ける姿が印象的だった。淡々とそして誠実に。
入寮翌日にはルーキー6人による自主トレが始まり、初日締めの中距離走は1位でゴールを切った。故郷の岐阜県飛騨市に帰っていた年末年始もきちんとトレーニングを重ねてきたことが垣間見られた風景だった。
守備の足さばきとスローイングは軽快そのもの、夏の甲子園の熱闘を思い出させるかようだった。
プロの壁はないかもしれない
2月1日のキャンプインが近づいてくる。根尾選手は、与田剛監督ら首脳陣の方針で1軍キャンプからスタートする。
よく言われる「プロの壁」、しかし根尾選手にはそれがないかもしれない、そんな気が日に日に増している。
壁があったとしても乗り越えてほしい。その乗り越え方は、壁を飛び越えるのか、突き破るのか、あるいは何かとんでもない魔法を使って壁自体を消してしまうのか。結果もさることながら、その歩みが楽しみなルーキー根尾昂の存在感は日一日と増している。
チームは球団ワーストの6年連続Bクラスと低迷が続いている。それでもナゴヤ球場のスタンドからファンが選手たちにかける声援は明るい。時々笑いや拍手も沸き起こる。
ひとりの新人選手がきっと何かを変えてくれると、皆信じて球場に足を運んでいる。
吹き抜ける風はまだ冷たく寒い。それでも降り注ぐ日差しの中には確かな春の兆しが感じられた。
【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。