紅白戦で夏の甲子園決勝の再現!日本ハムの演出力に負けるなドラゴンズ
さすがだなと感心させられた。北海道日本ハムファイターズである。
プロ野球各球団の春季キャンプも後半に入った2月16日、日本ハムは沖縄本島北部の「かいぎんスタジアム国頭」で紅白戦を行った。先発はルーキー同士、ドラフト1位の吉田輝星投手と5位の柿木蓮投手。まだ記憶に新しい2018年夏の甲子園決勝、そこで戦った両チームの先発投手である。決勝戦の再現が早くも実現した。
劇的だった夏の甲子園決勝
記念すべき100回大会となった2018年夏の全国高校野球、8月21日に行われた決勝の先発は、春夏連覇を狙う大阪桐蔭高校(北大阪代表)が柿木蓮、そして東北勢初の優勝を目指す金足農業高校(秋田代表)が吉田輝星、大会屈指の両投手の投げ合いとなった。結果は大阪桐蔭打線が吉田投手を打ち砕き13対2で勝ち、2度目となる春夏連覇を達成した。
吉田に清宮に“甲子園スター”続々登場
ファイターズはドラフト会議でこの両投手を指名して入団させた。米アリゾナでのキャンプには同行しなかったものの、シーズンに向けての紅白戦で、甲子園決勝で投げ合った両投手を先発させるとは。“やんばる”の球場は時ならぬ熱気に包まれた。
さらに吉田投手に対して打席に立ったのは前の年のドラフト会議で7球団が競合しての1位入団だった清宮幸太郎選手。プロ野球ファンだけでなく高校野球ファンも胸をときめかす見せ場の目白押しだった。
吉田、柿木両投手は1イニングでマウンドを降りたが、テレビの全国ニュースでは大きく取り上げられ、キャンプ便りの大きな話題になった。オープン戦でも練習試合でもない、紅白戦である。紅白戦にここまで注目が集まったことはここしばらくなかった。いかにも栗山英樹監督らしい見事な演出だった。
日本ハム将来戦略の見事さ
ファイターズの戦略はこの2投手だけではない。
ドラフト会議では2位で花咲徳栄高校のエースで4番だった野村佑希内野手、4位で横浜高校のスラッガー万波中正外野手を獲得。吉田、柿木と合わせて甲子園を舞台に活躍したスター選手4人を一気にチームに加えたのである。未来のチーム作りを見据え、さらに話題も提供する。計算し尽くした戦略が見えてくる。
日本ハムは新しい本拠地として、北海道北広島市に日本初の開閉式屋根を備えた天然芝球場の建設をめざす。公開された完成予想図を見ると、これまで国内球場にはなかった斬新さにあふれている。地上4階でグラウンドは地下1階。レフトスタンド上には温浴施設も検討されており、左右対称でない球場の形は実にユニークだ。建設費およそ600億円、2023年シーズンからの開業をめざしているが、その頃に20代前半となった甲子園のスターたちが新球場で成長したプレーを見せることになるのだろう。チームのファンでなくてもワクワクする。
松坂そして根尾に負けるな!
2019年春季キャンプの注目という意味では、中日ドラゴンズも序盤はファイターズとトップ争いをしてもおかしくないほど健闘した。
ここへ来て新たに背番号「18」を背負った松坂大輔投手が負傷によってキャンプ離脱、ファイターズのルーキーたちと共に甲子園を沸かせた根尾昂選手も2軍での練習が続き、初速の勢いは弱まった感もある。
しかし“注目されるキャンプ”を経験したことは、ドラゴンズ選手たちにこれまでとは違った新たな財産をもたらしたはずである。背番号「7」と「18」以外の多くの選手たちが1か月後の開幕に向けてしのぎを削ってほしい。そして与田剛新監督には思う存分タクトを振ってほしい。ファイターズに負けない演出にも是非期待したい。
忘れてはならない。
夏の甲子園大会決勝、吉田と柿木、両校エースの投げ合いの中、吉田輝星投手からバックスクリーンに特大アーチをかけた選手がドラゴンズのユニホームを着ていることを。根尾昂選手には紅白戦ではなく、シーズン交流戦あたりで、甲子園決勝の再現をお願いしたい。
【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。