ドラゴンズ与田剛監督がファンに明かした根尾昂選手「手のひら」の秘密
プロ野球ファンにとって、試合のないシーズンオフのこの時期も楽しい。
なぜなら来季への夢を語ることができる期間だからだ。トレード、FAそしてドラフト会議など各球団の戦力強化や動向を見ながら、ファン同士も今シーズンの思い出そして来季への期待や展望などいろいろな会話を交わす。今だけは、12球団どこを1位に予想しても許される。
世界最速のドラゴンズ祝勝会
複数のドラゴンズファンの集いにも参加している。
11月末にはナゴヤドーム近くにある中華料理店に某監査法人のメンバーそしてそれに関わりのある有志ら20人ほどが集まって、シーズン納会を開催した。
実は「納会」ではない。乾杯のかけ声は「2019年与田ドラゴンズの優勝を祝って!」なので「世界最速の祝勝会」であった。さらに「根尾選手、新人王おめでとう!」という追加の乾杯音頭も飛び出した。
会では全員が知恵を絞って出し合うドラゴンズクイズも行われた。
12球団のフロント幹部や選手たちには、全国各地でこうしたファンの熱い会が開かれていることをあらためて認知していただきたい。
会の主宰者から当コラムに対しての要望もあった「是々非々でお願いします」と。もちろんそのつもりです。
マスドラ会に与田監督登場!
12月10日には東京都内で「われらマスコミ・ドラゴンズ会(マスドラ会)」今年の納会が開催された。「マスドラ会」は1985年にマスコミ関係のドラゴンズファンで結成された。初代会長は『炎熱商人』で直木賞も受賞した作家の故・深田祐介さん。声優の森山周一郎さんらも名を連ねる30年以上の歴史あるファンの会だ。納会には60人が出席、初参加だった私もドラゴンズブルーの空気にすぐに溶け込むことができた。
会の後半にサプライズゲストとして与田剛監督が登場した時、会場の興奮はピークに達した。
マイクを持った与田監督は、穏やかな口調で会員に語りかけた。監督就任後に全国から沢山の激励の声が届いていることへの御礼、そして「ファン、地域の皆さん、選手、そして球団スタッフ、皆で一致団結して戦っていく」と決意を述べた。
グラウンドで戦うのは選手なのだが、真っ先に「ファン」という言葉が出たところに、新監督の矜持を感じた。
根尾選手の秘密を語った
次にファンなら誰もが気になる選手の話題に移った。流石である。
「根尾の話をしましょうか?」
与田監督はこう切り出した。
「実は入団発表の前に新入団選手たちと食事会があり、その時、彼が私の隣に座った。その手のひらを見せてもらったら、マメだらけだった。バッティング練習のためでしょう。『オレ大好きだ、この手のひら』と根尾に伝えた。あの手のひらから彼の日常生活が想像できた」
このように紹介し、遠くを見つめるように目を細めた。まるで根尾選手のちょっぴりはにかむ笑顔を思い浮かべるように。そして嬉しそうに。
負けもカッコよく
監督になることが決まった時に真っ先に思ったことは「ベンチからサインが出せるという喜びだった」と話した上で、しかし現在の自分は右ひじがうまく曲がらないから「サインは伊東勤ヘッドコーチにまかせるかな」と会場を沸かせた。
「負ける時もカッコよく負けますよ」と語ったその口調自体が“カッコよかった”。
「プロだから逆に見えないところもあるので、どんどん球場に来てアドバイスして下さい」
こう締めくくった与田監督を『燃えよドラゴンズ!』大合唱が包んだ。歌詞の「ナゴヤドーム」を「東京ドーム」に替えて。
与田監督の「言葉力」
広島東洋カープの4連覇を阻止できるか。巨大補強の讀賣ジャイアンツを叩けるか。関東のドラゴンズファンも熱い。そんなファンをも魅了した与田監督の言葉力に感心した夜となった。
それはやはりドラゴンズというチームを外から客観的に見て、何が魅力か、何が足りないか、分析できているからであろう。
「選手に対しては“教える”より“伝える”」と自らの哲学を語る与田監督。
自身が大切なポイントとして挙げている「コミュニケーション」の基本である言葉力の強さに来季への期待がますます高まった。
ペナントレースの間はゲームに一喜一憂する。シーズンオフの間は来季への夢を語る。
プロ野球ファンにとっての師走がゆく。年が明ければ、すぐに“球春”がやって来る。