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星野仙一さん、最後のラジオ生出演。聞けなかった野球界の未来への思い

星野仙一さん、最後のラジオ生出演。聞けなかった野球界の未来への思い
星野仙一さん

今年1月に亡くなった、中日ドラゴンズ元監督・星野仙一さん。ちょうど一年前の12月12日、CBCラジオ「ドラ魂KING」にゲスト出演。これが生前最後のラジオ生出演となりました。
きょうはその時の模様を振り返ります。

最後のラジオ生出演

2017年12月12日。滅多にラジオ出演はしない星野さんですが、長年交友を続けたCBC・久野誠アナウンサーが定年退職間近ということで、特別に出演してくれました。

オープニングは、星野さんの野球殿堂入りについてのお話。2017年1月、野球殿堂入りを果たした星野さん。表彰式はオールスターゲーム第1戦。奇しくも、球場はナゴヤドームでした。

《表彰式はオールスターの第1戦に行なわれるということで、今年はたまたまですね、オールスターゲームがナゴヤドームで行なわれるということで。》(久野アナ)
《そうなんだよね。あれもなんか偶然じゃないみたいな偶然だよね。》(星野さん)
《だから僕の中では、大阪でも仙台でもない、やっぱり星野さんは名古屋の星野仙一監督なんです。》(久野アナ)
《いやいや、もちろん名古屋に育ててもらった。でもやっぱり井の中の蛙になるのが嫌だった。やっぱり野球全体を見たかったし、だから思い切って外で羽ばたこうと。》(星野さん)

星野さんといえば、2001年のシーズンを以って中日の監督を辞任した直後、阪神の監督に就任しました。ドラゴンズファンにとって寝耳に水の出来事でしたが、当時の心境はこのようなものだったのですね。

打倒巨人の原点は

監督としては中日、阪神、楽天と3球団をリーグ優勝に導いた星野さん。その現役時代は、巨人キラーとして名を馳せました。打倒巨人の精神は、いつ芽生えたのでしょうか。話は1968(昭和43)年のドラフトに遡ります。

《ジャイアンツは田淵を一位指名する、と。田淵がよそに先に獲られた場合、星野、お前を指名する、という話が最初ですね。》(星野さん)

現在のドラフト会議は、一斉入札で指名が重複した場合に抽選を行う「入札方式」ですが、当時のドラフト会議は、選手を指名する順番を事前の抽選で決める「指名順抽選方式」でした。
事前抽選の結果、指名順は阪神が3番目、巨人は8番目、中日は10番目。巨人より先に指名できる阪神が田淵幸一捕手(法大)を1位指名。田淵選手を取られた巨人は当然、星野さんを指名すると思いきや、1位指名は島野修投手(武相高)でした。

《”シマ”と”ホシ”を間違えたんじゃないかと、司会者に僕が言ったことがあるんですけど》(星野さん)

かくして星野さんは中日に入団。ここに「打倒巨人」を掲げる、燃える男・星野仙一の誕生か…と思いきや、実はもう少し後のことのようです。

《名古屋へ来ました。そうすると、中日新聞と読売新聞の新聞戦争じゃないですか。それで、本社の方は”巨人”とか”ジャイアンツ”とか言わないんですよ。”読売”にとにかく勝てと、”読売”に勝てと。それを洗脳されたというか…》(星野さん)
《しかも強いし、V9時代ですから。巨人に勝って、読売に勝ってナンボのもんだ男は、という意識はものすごい強かったし。東京モンに負けてたまるか、と。そういうある意味、小さな田舎モンの劣等感をものすごいエネルギーにした》(星野さん)

対巨人の通算成績は35勝31敗。35勝は歴代6位タイ。巨人相手に30勝以上した13投手の中で、勝ち越しているのは星野さんを含めた3人だけ。勝率5割3分は、その3人の中で最も高い数字です。

底辺拡大のために

番組の最後には、低迷するドラゴンズに対して激励の言葉もありました。
《森監督は若いやつも使ってるし、これからじゃないの?ただ、もっともっと、名古屋気質というか、東海人の文化というか、歴史というか、そういうものを大事にしてほしい。もっとファンを惹きつける。サラリーマンの野球をやってたんではダメ。個性がないと》(星野さん)

さらに、プロ野球の今後に対する危機感を持つ久野アナウンサーの「コミッショナーなんかやっていただけませんか」という問いかけに、星野さんは野球の底辺拡大に向けての考えがあることを明かしました。
《いやコミッショナーはお金もうけできる人、そういう人で。そのアドバイザーとして、やっぱりね、底辺拡大。こどもたちにどうやって野球をやらせるか、その環境作りをどうやってやるか》(星野さん)
《プロ野球なんていい加減なもんなんです。ドラフトでパッパッとお金で釣るだけだからね。それまでアマチュアの監督がどれだけ苦労してるか、(選手を)育てるのに。それを一生懸命これから考えていこうと、もう考えてますけどね、僕はね》(星野さん)

プロ野球のみならず野球界全体の発展を願いながら、その考えを話すことなく亡くなった星野さん。放送で元気な姿を見せてからわずか3週間後のことでした。改めて、ご冥福をお祈りいたします。

【CBCアナウンサー 榊原悠介
中日ドラゴンズ検定1級。日付からドラゴンズの過去の試合を割り出せる特技を持つ】
毎週水曜日連載。

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