「根尾はドラゴンズに入る!」予感的中の中日・京田の心中は?背番号1を奮い立たせた言葉。
人間の直感はかなり正確らしい。
10月25日。ドラフト会議。その日、中日ドラゴンズ京田陽太はバスの中にいた。宮崎フェニックスリーグの楽天戦を終え、宿舎へ移動中だった。チームメイトと車内のテレビに注目。根尾昂の名前が次々にアナウンスされる。4球団競合。空気が張り詰める。京田は思った。
「根尾、ドラゴンズだな」
次の瞬間、与田剛監督がガッツポーズをした。バスは歓声に包まれた。しかし、京田は静かに画面を見つめていた。
「正直、最初はいい気がしなかったです。根尾についてコメントを求められることが。確かに僕には大した実績もありませんし、我慢して使ってもらった身です。ただ、プロの1軍でプレーした事実はある・・・」
小春日和のナゴヤ球場。言葉を選びながらも、京田は意地とプライドを覗かせた。
「玉突きコンバート」、「京田セカンドへ」など新聞の見出しは自由に踊った。京田は10月に右肩を痛め、秋季キャンプは別メニュー。2年目のジンクスにはまった怪我人より球界の宝と期待される地元の逸材にスポットライトは当たる。
「自分のことに専念しようと。まずは右肩の治療。肩甲骨の可動域を取り戻すトレーニングをしたり、超音波や電気を当てたり、トレーナーさんにマッサージをして頂いて、11月末には完治しました」
背番号1を奮い立たせた言葉
周りの雑音にとらわれず、地に足をつけて己を鍛えるのみ。そんな京田はこのオフ、様々な指導者から「奮い立つ言葉」をもらっている。
「キャンプ中に立石(充男)巡回コーチが『目指すはこれ』と言って動画を見せてくれたんです」
スマートフォンには埼玉西武ライオンズの安打製造機が映っていた。
「秋山(翔吾)さんは素晴らしいバッター。特にタイミングの取り方。どんな球でも対応できる。だから、1番守りにくいんです。振り出すバットの角度で凡打になりそう、こっちに飛んで来そうというのは分かるんですが、秋山さんは崩されてもヒットになったり、予想した方向と逆に飛んで来たりする」
京田は打撃の目標を明言した。
「180安打です。これをクリアすれば、打率や出塁率も付いてくるはず」
次に守備。今年の失策は6個。守備率9割9分1厘はセ・リーグのショート部門1位。ただ、根尾はショート1本を公言。京田の胸中に迫った。
「もちろん、受けて立ちます。しかし、試合に出るためには色々な所を守れるようにします。実は奈良原(浩)コーチに『お前は侍ジャパンに入らないといけない選手。それなら複数ポジションを守れないと』と言われました。そういう考え方もあるんだなと。モチベーションは上がりました。今思えば、去年の代表戦で稲葉(篤紀)監督にも『セカンドも守ってくれてありがとう』と感謝されました」
そして、プロとしての心構えを選手会納会の夜に学んだ。
「たまたまお二人と一緒になったんですが、同じことをおっしゃいました。『毎年、新人と外国人が入ってくる。時にはFA補強も。つまり、毎年が勝負。そのポジション争いに勝って初めて試合に出られる。仕事場が確約された実感なんて引退するまでなかった』と」
岩瀬仁紀と荒木雅博コーチの言葉には重みがあった。
さぁ、根尾が入る。京田が待つ。私は見たい。背番号1と7の戦いも共存も。中日はきっと強くなる。人間の直感はかなり正確だ。球春よ、早く来い。