「巨人・菅野さんのボールが“エグかった”」皆に愛されるドラゴンズ藤嶋健人投手、多くの仲間から掛けられた言葉とは
「勝てた試合はめちゃくちゃ嬉しいです。小笠原慎之介先輩に自慢します。慎之介さんは、よく寮のお風呂に、シャンプーと防水スピーカーを片手に、レスラーのように入場してくるので、その時に。」と屈託なくニッコリするドラゴンズ藤嶋健人投手。12月5日のCBCラジオ『ドラ魂KING』にゲスト出演し、今シーズンを振り返りました。二十歳の彼は、プロ野球という個人事業主の次元を超え、仲間から愛され、多くの言葉を掛けられました。
先発投手としての手ごたえ
藤嶋投手といいますと、所沢での大仕事。松坂大輔投手の先発緊急回避により、試合開始15分前に伝えられたプロ初先発初勝利があまりにも衝撃的。
ただ、本人は、「プロ2勝目と3勝目を挙げた各直前の先発登板が手ごたえになりました。」と、振り返ります。
プロ2勝目の前試合は、8月19日の東京ドーム、ジャイアンツ今村投手に投げ勝ち、一度は勝ち投手の権利を手にするもチームは逆転サヨナラ負け。あの試合、出番までブルペンで、何度も何度も肩を作った岩瀬投手が、長い東京ドームの通路で呟きました。『藤嶋をどうしても勝たせてやりたかった』。
藤嶋本人は、先輩達からの思いをすぐに次の登板に繋げます。8月26日のマツダスタジアム。広島先発の高橋昂也投手との同学年の投げ合い。
「昂也より長くマウンドに立っているという強い気持ちでいきました」とむき出しのライバル心を粘りの投球で表しました。7回1失点の好投に十分な援護点が入ります。特に二打席連続本塁打のビシエド選手は、『藤嶋がこのところ素晴らしいピッチングをしていたから、皆で助けたかった』と、ベンチの思いを4安打につなげました。
さらに翌登板、9月1日の地元ナゴヤドームでのジャイアンツ戦。菅野投手と堂々投げ合い、共に4失点で試合は引き分けに終わりました。
「自分の打席での菅野さんのボール、ボクなんかに対してでも“エグかった”です。その軌道を少しでも次の登板に活かせたら」(藤島投手)
7日後の9月8日ナゴヤドーム、優勝マジックを10と減らしたカープ戦。藤嶋投手が大瀬良投手と渡り合う中、味方打線が奮起し、二度に渡る逆転劇。中盤6回、高橋、福田の連打に松井雅がタイムリー。そして、『フルカウントからでも、何としてでも点取ろうという気持ちだった』と平田の二本のタイムリーが生まれ、藤嶋投手の自身3勝目を呼び込みました。
森前監督からもらった言葉
「ただ、勝てた試合より、いま頭に残るのは森前監督からいただいた言葉ですね」(藤島投手)
それは、プロ初勝利の次の先発、神宮球場での惨敗の後、森前監督からファーム落ちを宣告され、同時にかけられた言葉。
『下(二軍)ですべきことを考えてこい。俺は、お前の球が140キロそこそこでも、内角へあれだけ突っ込めているから、必ずまた一軍に呼ぶ。緊急初先発の時にも言ったよな。そのためには、長いイニングを全力だけど8割の力で続けられるように。吉見投手たちを見ろ』
これを夏場の一か月で見事に体現し、イニングを重ねるごとにテンポが上がる、その姿こそが、仲間の援護点を生んだのでしょう。
所沢でのウイニングボールは、豊橋の父親に託し、彼の笑顔は、すでに来季の勝利に向かっています。