竜の1位はキャンプ地・沖縄のエース仲地礼亜~異例ドラフト2022総括~

竜の1位はキャンプ地・沖縄のエース仲地礼亜~異例ドラフト2022総括~

記憶に残っている最も古いドラフト会議は、中日ドラゴンズが早稲田大学のスラッガー・谷沢健一選手を1位指名した1969年(昭和44年)である。以来、半世紀以上も毎年ドラフトを見守ってきたが、2022年はかつてない異例のドラフトとなった。

竜のドラフトを見続けて・・・

ドラフト会議が好きである。その歴史には数多のドラマがあった。ドラゴンズのドラフト指名を中心に毎年楽しみに、当日は胸を弾ませてきた。テレビ中継もインターネットもなかった1975年、高校生だった当時は、学校の公衆電話から球団事務所に電話して、田尾安志選手の1位指名を知り、クラスで速報した。

1987年に新婚旅行先のローマから実家に国際電話して知った1位指名は、現監督の立浪和義選手だった。最近では何と言っても2018年ドラフト。4球団競合の末に根尾昂選手を引き当てた時の歓喜は、今も忘れられない。そんな毎回のワクワク感からすると、2022年ドラフト会議は、静かに淡々と迎えた印象である。

9球団が1位を事前公表

その理由は、多くの球団が1位指名の選手を事前に公表したことだ。最初は讀賣ジャイアンツだった。ドラフト会議の1か月近く前に、高松商業高校の強打者・浅野翔吾選手の指名を明らかにした。事前公表は巨人だけに留まらなかった。

福岡ソフトバンクホークスが愛知県・誉高校の内野手イヒネ・イツア選手の指名を発表し、次々と各球団が続いた。

事前の指名公表は、最終的には12球団の内9球団に達した。そして、名前が挙がった選手はどのチームも競合しないという不思議な事態。過去にも事前公表はあったが、競合も多かった。新型コロナ禍の影響を受けた世代と言われ、さらに多くの球団が集中する目玉選手がいなかったとも見られる。

最終的に12球団の指名選手が69人と、2010年以来70人を切ってしまったことでも窺い知れる。それにしても、ここまで整然と“棲み分け”されるとは。先手必勝?配慮?バランス重視?ドラフト会議当日のワクワク感はかなり削がれてしまった印象だった。

水面下でのドラフト駆け引き

ドラフト会議の前日に動きがあった。「事前公表はしない」と語っていたドラゴンズの立浪監督が、沖縄大学の右腕・仲地礼亜投手を1位で指名すると公表。「将来的に長くドラゴンズを背負ってくれる投手」と評価した。すると、その1時間余り後に、これも「事前公表はしない」と言っていた東京ヤクルトスワローズの高津臣吾監督が東芝の右腕・吉村貢司郎投手の1位指名を公表した。

両球団の動きに結びつきがあるのかどうかは分からない。しかし、どちらも“即戦力投手”獲得をめざしていた。その駆け引きの中での事前公表であったことは想像できる。

結果的に、本番の会議で競合したのは2選手で、抽選の結果は事前に1位指名を公表していた2球団がくじを引き当てた。こうした動きを見ると、ドラフト戦略というものは、会議当日をクライマックスとしながらも、実は長きにわたって繰り広げられてくるものだと、あらためて実感した。

沖縄のエースに期待高まる

ドラゴンズが1位指名した仲地投手は、沖縄県の読谷村出身。1997年からドラゴンズ2軍の春季キャンプ地である。沖縄の大学からは初めてのドラフト指名となった。小学生の頃には、読谷球場(現・オキハム読谷平和の森球場)へ行き、中学時代は少年野球「北谷ボーイズ」に所属した。北谷町は1軍のキャンプ地である。沖縄県に生まれ育ちながらも、ドラゴンズにとっては、まさに“地元の選手”と言えよう。

整ったフォームから投げ込む速球は150キロを超える。力強い投球に期待したい。甘いマスクも魅力的である。浅尾拓也さん(現・投手コーチ)や伊藤準規さん(OB)らに続き、女性ファンの人気を集めそうである。

二遊間の強化は立浪竜の悲願

ドラゴンズは7人の選手を指名した。1年前は外野手の指名が目立ったが、今回は内野手が4人。ショートのポジションでプロ野球人生を始めた立浪監督にとって、二遊間を固めることは最重要テーマだった。しかし2022年シーズン、なかなか固定することはできなかった。

2位では、明治大学のセカンド・村松開人選手を指名した。伝統校である明治で、キャプテンとしてチームをけん引した選手。故・星野仙一さん、川上憲伸さん、そして柳裕也投手ら明治大学の主将経験者は多いが、二遊間からチームをしっかり固めたいという立浪監督の強い意志が表れている。

7人の内、投手は仲地投手含めて2人。もう少し投手の補強数が多くてもよかったのでは、とも思うが、育成ドラフト3人の内2人は投手であり、投手は4人になる。いずれにしても、こうした順位がつくのはドラフト会議までであり、あとは入団後の勝負となる。指名された合計10人の今後に期待したい。

ドラフト会議は終わった。竜にとって最大の課題である打線の強化へ、トレードはあるのか、新外国人選手の補強はあるのか、立浪竜2年目への熱いシーズンオフは続く。そしてそれは、ファンにとっても夢を描く大切な時間であるということを決して忘れずに、球団一丸となって、来季の逆襲へ取り組んでほしい。
                                    

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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