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根尾昂を待ち続けたファンの日々~ドラゴンズ2019総括(前編)

根尾昂を待ち続けたファンの日々~ドラゴンズ2019総括(前編)
論説室コラム

根尾昂を待ち続けたファンの日々~ドラゴンズ2019総括(前編)

 2019年10月3日(木) 10:10
北辻 利寿
北辻 利寿

CBCテレビ:画像 『サンデードラゴンズ』

背番号「7」の1軍デビューは、彼が高校時代に華やかに躍動した甲子園球場だった。
2019年9月29日。シーズンも残すところ2試合。そして、前夜のラグビーW杯で、日本が優勝候補アイルランドに勝利し列島がその余韻に浸り続ける中、中日ドラゴンズのスーパールーキー根尾昂は7回の守備から自らの新たな1ページを歩み出した。

Bクラス脱出の起爆剤は?

心のどこかでずっと信じていた春だった。与田剛監督は根尾昂選手を1軍の開幕戦でデビューさせるであろうと。
昨シーズンまで6年連続Bクラスのドラゴンズ。2リーグ制になって以降は1968年(昭和43年)からの3年連続Bクラスが最長で、こんなに長い低迷は83年におよぶ球団史でも初めてのことなのだ。ここからの脱出は投打の戦力アップは当然のこと、その上で「とんでもないこと」すなわち「よほどのこと」をしないといけないとずっと言い続け、書き続けてきた。Aクラスのチームですら前年と同じことをしていては転落する可能性がある。まして長きにわたって、ある意味で“負け癖”がついているチームが上昇するためには「起爆剤」が必要だと思ったからである。

社会現象だったルーキー根尾昂

中日・根尾昂選手©CBCテレビ

1年前のドラフト会議で、就任したばかりの与田監督は自らの右腕でその「カンフル剤」を引き当てた。地元・岐阜県飛騨市出身の高校球界のスーパースター根尾選手を見事に獲得した2018年ドラフト。ドラゴンズファンはもちろんだが、野球ファン以外でもほとんどの人が「根尾昂」という名前を知っていて、名古屋市内の書店には読書家である根尾選手の「愛読書コーナー」がお目見えするなど、根尾選手のドラゴンズ入団は2018年秋の社会現象となった。ナゴヤドームの年間シート席も売れ、公式ファンクラブへの入会数も激増した。沖縄での春季キャンプでは根尾グッズが売り切れとなった。

根尾の姿は1軍になかった

しかし、根尾選手は直前に足を負傷してキャンプは2軍スタートとなった。調整遅れは必至だったし、「まだプロの身体ではない」という評論家の見方もあった。それでも開幕での「とんでもないこと」は起きると思っていた。
監督の初年度「トレードなど補強は一切しない。今の戦力が10%ずつ力をアップすれば勝てる」と現有戦力で戦うことを宣言した2004年の落合博満監督ですら、開幕投手に過去3年間一度も登板のなかった川崎憲二郎投手を起用する「とんでもないこと」を実現したのだから。
シーズンに入って、根尾選手はウエスタンリーグの試合で打撃フォームを崩す三振が目立ち、また守備で手に裂傷を負うなど、ファンから見ても1軍レベルには届いていなかった。その意味でプロの指導者の目は確かなのであろう。しかし「ドラフト1位で根尾獲得!」という“熱”を新監督での出直しシーズンに反映させることはできなかったのか。「根尾昂」ブランドを勢いとして活かすことはできなかったのか。切ない片思いは悶々と残り続けた。

10代バッテリーに拍手喝采

CBCテレビ:画像 『チャント!』

与田采配で待望の「とんでもないこと」が起きたのは、ペナントレース前半戦も終了間際の7月9日ナゴヤドームだった。与田監督は根尾選手と同じ高卒ルーキーの石橋康太捕手をスタメンに起用した。すでに予告先発で2年目の清水達也投手の先発は発表されていた。ドラフト制以降では球団史上初となる「10代バッテリー」の登場である。
「キャッチャー石橋」がコールされたナゴヤドームの大歓声はすごかった。石橋捕手はプロ初安打となるタイムリー三塁打を打つなどの活躍で、チームも勝利した。長いシーズンには、チームが勢いをつけるこうした勝利が必要である。しかし、この時点でシーズンも半ばに差しかかっていた。根尾の開幕戦登場という「とんでもないこと」から比べれば、時計の針は少々進み過ぎていたように思う。

奮闘するも結果は5位

与田ドラゴンズの1年目は68勝73敗2分で3年連続のリーグ5位。昨シーズンは借金15だったので、同じ5位でも負け越し5は進歩したと言えようが、5位は5位である。
新監督の選手起用は新鮮で積極的だった。過去あまり活躍できなかった阿部寿樹選手、井領雅貴選手、そして加藤匠馬捕手らにチャンスを与えて、見事に開花させた。特に阿部選手は勝負強い打撃によって、昨シーズンで引退した荒木雅博選手の後を埋めるセカンドに成長した。投手陣ではプロ初勝利を挙げた投手が今シーズン5人もいた。清水投手の他、阿知羅拓馬、勝野昌慶、山本拓実、そして梅津晃大、「投手王国」復活は確かな手応えとなった。
だからこそ、Aクラス、そして与田監督が就任以来目標に掲げてきた優勝へ駆けあがる勢いがほしかった。9月23日マツダスタジアムでの広島カープとの試合。1週間前にノーヒットノーランを達成した大野雄大投手の力投、そして9回表に起死回生の同点ホームランを放ったダヤン・ビシエド選手の打球音、ドラゴンズファンは歓喜した。しかし最後は力尽きて今季12度目のサヨナラ負けを喫した。6年間Bクラスのチームとリーグ3連覇を果たしてきたチームの力の差を見せつけられた思いだった。

来季へ持ち越された初スタメン

CBCテレビ:画像『写真AC』より阪神甲子園球場

根尾選手は高校球児の“聖地”甲子園球場で、相手チームである阪神ファンからも大きな声援を受けてデビューした。しかし、ドラゴンズファンとしては、地元ナゴヤドームでの大声援によって、おらがスーパールーキーの記念すべき第一歩を祝福したかった。ただしスタメンでの出場は見送られた。本拠地でのデビューは「初スタメン」と共に、2020年シーズンまで楽しみとして持ち越された。同時に「Bクラス脱出にはとんでもないことが必要」という思いも継続である。6年連続が7年連続に増えてしまったが・・・。

来季はルーキー根尾昂選手からも、与田剛新監督からもそれぞれ「新」という文字は消える。ファンとして温かい声援を送ることに変わりはない。しかしそこには当然だが、2年目への厳しい視線も加わる。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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