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続・ドラゴンズはノーヒットノーラン投手の宝庫だった!

続・ドラゴンズはノーヒットノーラン投手の宝庫だった!

ノーヒットノーランをプロ野球史上最年長の41歳1か月で達成した中日ドラゴンズ山本昌投手は、自身の引退記者会見で「生涯のベスト」と明らかにしたのは、実はノーヒットノーランの試合ではなかった。それほど大記録達成というものは摩訶不思議であり、「野球の神様」が差配するものなのかもしれない。

大野雄大が成し遂げた快挙

ドラゴンズの背番号「22」大野雄大投手が、ノーヒットノーランを達成した。
2019年9月14日。「左腕」「舞台はナゴヤドーム」「9月」「連休の週末土曜日」「デーゲーム」「相手は阪神タイガース」「内野手のエラーによって完全試合ではなくなった」など、山本昌投手の快挙との共通項の多さが今さらながら感慨深い。
このゲームでの大野投手の大胆不敵な表情と所作は、昨2018年シーズンでは見ることができなかったものだ。今季、登板の度に私たちファンはそれを頼もしく目撃してきた。そしてこの日は回を追うごとに、その大胆不敵さは深まっていったように思う。
打者29人に対し126球。こうして大野雄大はプロ野球81人目の、ドラゴンズでは12人目のノーヒットノーラン投手として、歴史に名を刻むことになった。

「エースの座」それは崇高であれ

「サンデードラゴンズ」より大野雄大投手(C)CBCテレビ

厳しい見方をすれば、大野雄大という投手が「エースの座」に就いたことはこれまでなかったのではないだろうか。
エース候補ではあった、しかしエースではない。一番の理由は勝ちと負けの数が拮抗していることである。2013年に初めて二けた勝利を挙げた時も10勝10敗、翌年こそ10勝8敗と2つ勝ち越したものの、自己最多の11勝した2015年も10敗している。野球が勝ち負けを競うゲームである以上、この“貯金”の少なさは残念だ。
通算成績も今シーズン前で49勝53敗と4つの負け越し、「エース」という称号は崇高なもの、だからこそ、あえて大野投手には厳しい視線を注いできた。
しかし、今回のノーヒットノーラン達成によって「エース」という肩書を自らの手で力強く手繰り寄せた。そんな成長ぶりを感じて嬉しかった。大野投手には早く通算成績での“貯金”を積み上げてほしい。

蘇った45年前の歓喜

ところで、このノーヒットノーラン試合、ゲームセットの瞬間。大野投手の126球目を近本光司選手のバットがとらえた鋭いライナーはサード高橋周平選手のグラブに収まった。「3塁ライナー、捕った!」。
この懐かしい既視感。きっと同じ場面を思い出された年配のドラゴンズファンもいらっしゃるかもしれない。それは1974年(昭和49年)10月12日の中日球場(現ナゴヤ球場)、讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止してドラゴンズが20年ぶりのリーグ優勝を決めた試合である。エース星野仙一投手が投じた一球、大洋ホエールズ山下大輔選手のバット一閃、そして3塁ライナーがサード島谷金二選手のグラブに収まった歓喜の瞬間。
「3塁ライナー、捕った!」。竜党にとって忘れられない45年前の興奮も胸に蘇った。

「予言コラム」の真相は?

「サンデードラゴンズ」より大野雄大投手(C)CBCテレビ

このコラムのタイトルに「続」を付けたのは、ある理由がある。実は大野投手が大記録を成し遂げた前日の9月13日、福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大(こうだい)投手のノーヒットノーラン達成をきっかけにドラゴンズの達成者11人についての文章を書いて、インターネットで配信していた。コラムは最後に柳裕也投手や大野雄大投手の名前を挙げた上で、こう締めくくっていた。
「ドラゴンズ12回目のノーヒットノーラン、まもなく実現かもしれない。」
“その日”はすぐ翌日に来てしまった、突然に。もちろん偶然の巡り合わせである。「神コラム」という光栄な感想もいただいたが、これは「野球の神様」がドラゴンズ論説コラムにもちょっぴり微笑んでくれたお陰であろう。

山本昌さんが「生涯のベスト」に挙げたのは、実はノーヒットノーランを達成した次のゲーム、大記録から2週間後の2006年9月30日、甲子園球場での阪神タイガース戦だった。これは「中日ドラゴンズ検定」1級でも出題されたエピソードである。このゲーム、山本昌投手は8回を投げて5安打1失点、通算190勝目となるシーズン10勝目を挙げて、チームは優勝へのマジックを9から7に減らした。それが山本昌さんにとっての「生涯ベスト」試合だと言う。
球団12人目のノーヒットノーラン投手となった大野雄大投手にとっては?
次の登板が今から楽しみである。心からの拍手でマウンドに迎えたい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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