「台湾有事」で激化する日中対立。観光・留学にも影響拡大
高市早苗総理大臣の台湾有事をめぐる国会答弁を受けて、中国が日本への留学・観光の自粛を呼びかけるなどの報復措置と見られる対抗策を次々と打ち出しています。11月17日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、日中関係の悪化と今後の見通しについて、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が詳しく解説しました。
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高市総理の国会答弁に対し、中国側の動きが活発化しています。
14日に中国政府が自国民に対して日本への渡航自粛を呼びかけたのに続き、16日には日本への留学を慎重に検討するよう中国国民に呼びかけました。
留学自粛の理由について、中国政府は「日本の治安が悪化しているから」と説明していますが、その根拠は一切示されていません。
現在、日本で学ぶ外国人留学生のうち中国人は12万3400人で、国・地域別で最も多い数となっています。
インバウンド産業への打撃懸念
石塚は「治安悪化というのは口実であり、実態は日本に対するプレッシャー」と分析します。
中国からの観光客を止めることで、インバウンドで成り立っている日本の観光業界に打撃を与え、日本政府に圧力をかけているということです。
中国からの観光客は前年比で約40パーセント増加しています。韓国や台湾、アメリカからの観光客も増えているものの、その中でも特に多いのが中国からの観光客です。
このような状況で中国が観光制限を強化すれば、日本の観光業界が打撃を受ける可能性があります。
大阪総領事の過激投稿が波紋
さらに事態を複雑にしているのが、薛剣駐大阪総領事による問題投稿です。総領事は、高市総理の国会答弁に対してXで「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」という過激なポストを投稿しました。
この投稿に対し、日本政府は強く反発。総領事を国外退去処分にするかどうかが注目されています。
石塚は「中国側が日本政府の姿勢を批判すること自体は理解できるものの、総領事の表現方法はあまりにも品を欠いている」と指摘。
しかし同時に、火をつけたのは高市総理の国会答弁だったことも事実です。
石塚は、双方が相手に対して「そこまで踏み込むべきではなかった」と言い合う状況になっていると述べ、エスカレートしてしまっている現状を指摘。落としどころを見つけるのは大変だと分析します。
国外退去処分を実施すれば日中関係はさらに悪化する一方、総領事を処分しなければ高市総理の岩盤支持層からの反発が予想されるため、日本政府は難しい判断を迫られています。
「戦略的曖昧さ」の喪失
石塚は問題の本質について、台湾有事における日本の対応という根本的な課題があると分析します。
台湾有事の際、どのような状況で自衛隊が出動するのかという集団的自衛権の問題について、これまで日本も中国も、明言すれば対立が深まることを理解していたため、あえて曖昧にしてきました。
しかし今回、高市総理がそこに踏み込んでしまったことで、双方の岩盤支持層が黙っていられなくなりつつあります。日本の高市総理の岩盤支持層も、中国の習近平主席の岩盤支持層も、それぞれのリーダーに対して強硬姿勢を求める声が高まっています。
「本来であれば一歩手前で踏みとどまる判断が必要だった」と石塚は指摘します。
これは安倍元総理を含む歴代総理も踏み込まなかった領域です。アメリカも台湾有事に関しては「戦略的曖昧さ」を維持しています。
G20での日中首脳会談に注目
高市総理は今月下旬、南アフリカで開催されるG20首脳会議に出席予定です。
その際、中国の首脳級トップとどのような話し合いを持つのか、あるいは持たないのかが、今後の日中関係を占う上で重要な焦点となっています。
台湾有事をめぐる発言から始まった日中間の緊張は、観光・留学という民間交流にまで影響を及ぼし始めています。
両国がどこで落としどころを見つけるのか、難しい外交の舵取りが続きそうです。
(minto)
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