警察狙撃部隊が出動へ。深刻化するクマ被害に国が本格対応
深刻化するクマによる人的被害を受けて、警察官がライフル銃を使ってクマを駆除する任務が13日から始まりました。11月13日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、永岡歩アナウンサーと、元NHK解説委員で政治・外交ジャーナリストの増田剛さんが、国の対応と今後の課題について詳しく解説しました。
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警察官の派遣期間は当面の危険が収まるまで。対象となるのは岩手、秋田両県です。駆除の現場で対応する警察官は1チーム4人編成で、各県に2チームずつ、計8人が配置されます。
1チームのうちライフル銃を携行できるのは2人で、狙撃手は両県で計8人。山中での発砲はせず、人里に出没したクマの駆除に当たることになっています。
政府は予算委員会で、近くクマ被害対策の施策パッケージをとりまとめ、クマの捕獲費用など自治体への支援を拡充することも表明しました。
猟友会の高齢化と人手不足
増田さんは、一般の住民にとってはもはやどうしようもない状況だと指摘します。
クマはまず顔を狙ってくるため、実際に失明したり鼻を落とされたりした被害者もいます。警察や自衛隊など公的機関に迅速に駆除してもらうしかない状況で、そのための予算的な措置は当然必要だといいます。
一方、猟友会の高齢化と人手不足も深刻な問題です。多少お金が出るといってもほぼボランティアのような状況で、危険な任務を若い人たちが進んで引き受けるかという課題があります。また、12日には新潟県で見回り活動をしていた猟友会の80代男性がクマに襲われて負傷する事故も発生しています。
クマは体が大きいだけでなく骨も非常に強く、通常の銃では銃弾を骨で止めてしまうほどだといいます。そのため、猟友会の皆さんもライフル銃でしっかり撃たないと太刀打ちできない状況です。
駆除の困難さと迅速化への期待
しかし、駆除は容易ではありません。クマは時速40~50キロという陸上選手並みのスピードで襲いかかってきます。
100メートル以内という接近した状態で撃つ必要がありますが、クマも当然避けようとするため、恐怖心もある中で正確に狙撃するのは困難です。また、急所に当たって一撃で倒れてくれればいいですが、暴れてかえって襲われる危険性もあります。
これまでは基本的に自治体職員が発砲するタイミングを判断していました。
しかし、一度判断をしても、クマが移動したら再び周囲の安全を確認して撃つ必要があり、時間がかかるという問題がありました。自らの判断で発砲できる警察官の部隊が派遣されれば、より早期に駆除が完了できる可能性があります。
動物愛護と現実の狭間で
増田さんはワシントン駐在時代の経験を振り返ります。
ワシントンの郊外にはクマではなくシカが出没し、車で走っている時に遭遇することがあるといいます。その時に言われたのは、「シカと衝突しそうになってもブレーキをかけてはいけない、むしろアクセルを踏んでスピードを上げて跳ね飛ばさなければいけない」ということだったそうです。
下手に減速すると、衝突した時にシカがフロントガラスに当たり、重みでガラスが割れて大事故になる恐れがあるからです。
「動物愛護的な気持ちは捨てて、シカがいたらアクセルを踏んで、弾き飛ばした方がいいという話を聞いたことがあって、それを思い出しましたね」
被害拡大の背景と今後の課題
クマの被害が拡大している背景には、山の開拓だけでなく、猛暑などによって木の実が減っていることもあります。食べるものが少なくなり、クマ同士の争いに負けた個体は食べ物を求めて人里に降りてくることになります。
「無差別に襲撃する対話の通じないテロリストがいる、これと同じような状況」という指摘もあり、駆除以外の方法では済まなくなっています。
クマ被害の対策や人手不足の猟友会の支援など、国全体で早急に取り組むことが求められています。
(minto)
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