三菱商事の洋上風力撤退で国のエネルギー戦略に打撃。建設費2倍で採算取れず

三菱商事などの企業連合が8月27日、秋田県沖と千葉県沖の計3海域で進めていた洋上風力発電事業からの撤退を発表しました。8月28日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、この撤退が日本の再生可能エネルギー戦略に与える影響について、元NHK解説委員で政治外交ジャーナリストの増田剛さんに伺いました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く再生エネルギーの切り札だった
世界的な物価高と円安に伴う建設費の高騰により、発電しても採算が取れないことが撤退の理由です。政府は洋上風力を再生可能エネルギー拡大の切り札に位置付けていただけに、国のエネルギー戦略に大きな打撃を与えることになります。
洋上風力発電は海上に設置されるため、周囲に山や建物がないことから安定した風力が得られ、騒音問題も発生しにくいという大きなメリットがあります。
日本政府が今年2月に策定した新たなエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの割合を2040年度には4割から5割程度に引き上げる考えが示されていました。洋上風力はまさにその達成の鍵を握る存在でした。
建設費が想定の2倍以上に高騰
撤退を発表したのは、三菱商事と名古屋にある中部電力の子会社シーテックなどの企業連合です。
風車そのものの原価が大幅に上昇。ウクライナ危機、インフレ、為替変動により事業環境が激変し、想定をはるかに超えるコストになりました。当初1兆円強と見込んでいた建設費が、2倍以上に膨れ上がったのです。
売電価格を倍にしても採算が取れない状況に陥り、事業継続は不可能と判断されました。
経産相「信じられない」と落胆
武藤容治経済産業大臣は、三菱商事の中西勝也社長から撤退理由の説明を受けた際、「信じられないというのが正直な気持ちだ」と述べています。
撤退は日本における洋上風力の導入に遅れをもたらし、地元の期待を裏切るものであり、洋上風力全体に対する社会の信頼を揺るがしかねないと強い懸念を示しました。
採算が取れないから撤退となると、洋上風力に対する社会的な印象やイメージも悪くなる恐れがあります。
政府は事業継続のために再公募する方針。三菱商事が積み立てていた保証金200億円は国に没収されることになります。
三菱商事の損失は524億円、中部電力も356億円の損失を見込んでいます。
問題視された落札価格の妥当性
実は当初から落札価格の採算性を疑問視する声がありました。三菱商事らは政府想定を大幅に下回る1キロワット時当たり11.99円から16.49円で落札していたのです。
業界からは「安い値段で落札しておきながら、採算を理由に撤退するのは道理に反する」という批判も出ています。
他の事業者も撤退を検討する可能性があり、洋上風力発電そのものの位置づけが問われることになるかもしれません。
秋田県の鈴木健太知事は「極めて残念で極めて遺憾。国家肝入りのプロジェクトで、国を代表する企業が落札して、よもや撤退はないだろうと思っていたので大変な衝撃だ」と語っています。
日本政府が洋上風力発電を再生エネルギーの中核と位置付け、日本を代表する企業連合が後押しする構図だったため、増田さんは「普通は順調に進んでいくと思いますよね」と、今回の撤退の異例さを強調しました。
浮き彫りになった相互依存
今回の撤退は、ウクライナ危機のような遠い地域の紛争が日本の産業に与える影響の大きさを改めて示すことになりました。
世界はグローバルなネットワークで繋がっており、遠く離れた地域での紛争や戦争に関わる資材が、貿易を通じて日本の様々な産業に影響を与えています。今回はまさにその典型的な例でした。
日本の再生可能エネルギー戦略は大きな転換点を迎えています。洋上風力への期待を維持しつつ、現実的な事業環境の変化にどう対応するのか。次の一手をどう打つのか、あるいはこの分野をブラッシュアップしていくのか、真剣に考えるべきタイミングが来ています。
(minto)
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