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大きさと異形の姿に恐れを抱く。東大寺の不空羂索観音像

大きさと異形の姿に恐れを抱く。東大寺の不空羂索観音像

毎週木曜日の『ドラ魂キング』では、CBCの佐藤楠大アナウンサーが仏像に関するトピックを紹介します。8月21日の放送で紹介したのは、奈良市・東大寺の不空羂索観音。「大きさと異形の姿が魅力」と佐藤アナ。いったいどんな仏像なのでしょうか?

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東大寺コレクション

佐藤「東大寺コレクション。東大寺には大仏以外の魅力がありますよ。それを伝えていきたい」

この日は、東大寺の法華堂で見られる不空羂索観音像を紹介しました。不空羂索は「ふくうけんじゃく」とも「ふくうけんさく」とも読むそうです。

法華堂の位置は大仏のいる大仏殿を正面に見て右側、大仏殿を通り過ぎて石の階段があるところを進みます。法華堂自体も国宝で、東大寺最古の建物です。

佐藤「法花堂を中心として東大寺が建てられた。なので東大寺の前身とも言えます」

中には10体の仏像があり、全て奈良時代の作品で国宝。その中心となっているのが不空羂索観音像です。

不空羂索観音の名前は「不空」と「羂索」という言葉の組み合わせだそうです。不空の意味は「必ず成し遂げます」。

羂索とは「縄」。何に使う縄かと言うと、人々を救い上げるためとのこと。
つまり「不空羂索」とは、「必ず人々を救いあげます」という意味。頼もしくもありがたい観音様です。

異形の観音

以前、観音は十一面観音とか千手観音などいろんな形に変化すると語っていた佐藤。
不空羂索観音も変化した観音のひとつだとか。

その姿は三目八臂(さんもくはっぴ)。目が三つ。おでこに、縦にしたような細長い目があるそうです。
そして腕が八本。三目八臂の臂は肘の意味です。人間とはかなりかけ離れた姿です。

佐藤「仏像を見た時に、三つの目があって八本の腕があったら不空羂索観音と思ってもらえばOKです」

衣装も特徴的。鹿の皮で作ったとされる衣を肩から纏っているので、仏像では、肩や腕の辺りにひらひらと衣が舞っている様子が見られるとか。

観音は、手に閉じた蓮華の花を持っているそうですが、不空羂索観音の持っている蓮の花は若干開いているそうです。

輝き続ける宝冠

法華堂は大仏殿ができるよりも前にあった最古の建物で、この不空羂索観音像も東大寺の大仏よりも前に制作されたものです。
700年代前半に作られたものと見られ、非常に良い状態で残っているんだそうです。

全高は3.62メートル。普通の人間の2.5倍ぐらいの大きさです。

佐藤「想像以上の大きさと、三目八臂と言う人間とかけ離れた姿。恐れ多さを感じて、私はぐっと惹かれました。
​​​​​​注目して欲しいのが頭にかぶっている宝冠。これがまた贅沢なんです」

冠だけで高さが88センチ。重さがおよそ11キロの銀製の宝冠。

この宝冠の中央に小さな阿弥陀如来が載っていて、その周りは、1万個以上のひすい、水晶、トルコ石などの輝かしい貴石で仏の世界観が表現されているとか。

佐藤「時代の流れに衣装の緊迫は剥がれてしまうんですが、この貴石は輝き続けているんですよ。ここも注目ポイントなんです。1300年以上前のものですからね。すごく魅力的です」

今も残る理由

東大寺の不空羂索観音像と同時代に作られた仏像が、以前このコーナーで紹介した興福寺の阿修羅像。

阿修羅像は、脱活乾漆造という漆を何層も塗り重ねて作る技法。中が空洞なので非常に軽い仏像です。
700年代前半に作られた東大寺の不空羂索観音像が残っているのは、災害や騒乱が起きても運びやすい軽さにあったそうです。

軽さに反比例するように費用は莫大。脱活乾漆造は、当時、非常に高かった漆が大量に必要で、手間と時間がかかった技法。
興福寺の阿修羅像の3倍近くの全高があるので費用は莫大だったそうです。

莫大な費用

佐藤「安置されているお堂を建てた料金と、仏像を作るお値段が一緒。当時の人たちが、どれだけの人員とお金をつぎ込んだかがわかりますよね」

東大寺の正倉院にある文書には「仏像用の漆の価格が堂の建築費に匹敵した」と書かれているそうです。

佐藤「そして、その法華堂の中にいる残りの9体も全部国宝、ということも頭に入れておいてください。つまり、あと9回は私のネタが尽きないということです(笑)」

東大寺の法華堂にある不空羂索観音像は通年で見られるそうです。 
(尾関)
 

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