返還で話題!「パンダ外交」が必要な理由

和歌山県白浜町にあるアドベンチャーワールドで暮らしている4頭のパンダが、来月中国に返還される予定です。さらに上野動物園(東京都台東区)の2頭についても、来年2月には中国に返還されることになっており、日本からパンダがいなくなる日が迫っています。過去を振り返ると、パンダが政治や外交の道具として使われてきた事情が見えてきます。5月21日放送『CBCラジオ #プラス!』ではCBC論説室の石塚元章特別解説委員が、日本と中国とのパンダ外交の歴史や今後について解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと三浦優奈です。
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パンダ、とりわけジャイアントパンダは、中国の一部地域にしかいない固有種で、珍しい存在です。
1869年(明治2年)にフランスの宣教師が中国四川省の奥地に行った際、漁師から白黒の毛皮を見せてもらったことがきっかけでヨーロッパで知られるようになります。
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936年(昭和11年)にはアメリカの女性探検家が中国でパンダを捕まえて、シカゴの動物園で見せたことでアメリカでも人気となります。
欧米での人気を知った中国は、これは他国との外交に利用できると考え、「パンダ外交」へとつながっていきます。
日本でパンダフィーバー
最初に「パンダ外交」が始まったのは1941年(昭和16年)とされています。
日中戦争の真っただ中、中華民国のトップ・蒋介石がニューヨークの動物園にパンダを贈りました。
その理由はアメリカを味方につけるためと言われています。
戦後、米ソ対立が中心となる東西冷戦の際は、中国が旧ソ連や北朝鮮にパンダを贈るようになります。これは東側が一致団結して強くなろうという思惑を示したものだそうです。
その後、1972年(昭和47年)に米ニクソン大統領が電撃訪中したことで、アメリカと中国が雪解けムードとなり、中国はワシントンの動物園にパンダを贈りました。
そして同年に日中国交正常化が実現し、その記念として上野動物園にパンダのカンカンとランランがやってきて、大フィーバーとなりました。
なぜパンダはもらえない?
実は上野動物園には一時期、パンダがいない期間がありました。
パンダ不在の時期と中国との関係が悪化している時期がリンクしていることが多い、と石塚委員。
また、昔は「贈る」と表現したようにパンダはもらっていたのですが、最近は「貸す」という扱いになっています。
これは1981年(昭和56年)に中国がワシントン条約に加盟し、1984年(昭和59年)にパンダが絶滅危惧種に指定されたため。
現在は学術研究や繁殖させるためといった理由があれば、貸すことは可能となっています。
借りる以上はお金が必要で、カップルだと年間1億円ほどかかるそうです。
このお金の使い道については、自然保護に使うのを目的として、世界自然保護基金(WWF)がチェックしているとのことです。
パンダの経済効果は?
パンダは借りる動物のため、必ず返す時期が来ます。
返還時には健康な状態でなければならないため、環境の良い施設で育てなければならず、毎日の食費もかかります。
とは言え、例えば上野動物園では、パンダがいることで1年間の経済効果が最大308億円になるという試算もあるほど。
石塚委員によれば、パンダの承知に名乗りをあげているのは、上野や白浜以外に、日立市や仙台市もあり、日中友好議連が交渉しているとのこと。
アメリカと中国の関係が険悪な中で、「パンダ外交」は日本を引き込む効果が強そうです。
(岡本)
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