便利な「炭素素材」が、EUで使用禁止議論がされる理由

車や航空機・スポーツ用品・人工衛星やロボット・半導体など、私たちの生活にも欠かせない素材となっている炭素繊維。便利で用途が多い一方で、欧州各国では廃棄処理時に人体に悪影響を及ぼすことから原則使用を禁止することが検討されています。4月16日放送のCBCラジオ『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、つボイノリオと小高直子アナウンサーが「炭素繊維」について取り上げます。
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今月8日の日本経済新聞などで、EU(欧州連合)が、自動車の材料として使われる炭素繊維を原則禁止にする検討をしていることが報じられました。
炭素繊維は、軽くて強くて腐らないだけでなく、耐熱性や導電性が特徴。
原料はアクリル樹脂や石油、石炭などの有機物で、有機繊維を高温で焼いて炭素含有量を90%以上にしたものが炭素繊維となります。
鉄よりもかなり軽く、飛行機の軽量化などにも役立てられています。
炭素繊維が様々なものに使われていることは知っているものの「特別な材料ではないのでは?」とEUの動きにピンとこないつボイ。
廃棄がかなり厄介
なぜEUで使用禁止の議論がされているのかというと、炭素繊維を廃棄する時に問題があるからだとか。
小高「廃棄する時に、細かい繊維が人体に悪影響を及ぼす恐れがあるからなんです」
炭素繊維は皮膚や粘膜にくっつくと、かゆみや痛みが出ることがあります。また、廃棄する時に出る細かい繊維を吸い込んでしまうと、肺や胸膜に炎症を引き起こす恐れがあるそうです。
意外に厄介なものだったことを知り、「そんなに大変なの?」と驚くつボイ。
現在炭素繊維を廃棄する際は、産業廃棄物として処理することが義務付けられています。
適切な廃棄方法が見つかるか
番組を放送する東海地方でも、炭素繊維を使った製品を作っている企業が多数あります。
特に自動車産業が盛んなエリアのため、使用禁止にされると大きな影響が予想されます。
実はこの炭素繊維、2024年時点で日本のメーカーが世界シェアの約52%を占めている主力商品。具体的には、東レ、帝人グループ、三菱ケミカルなどが該当します。
小高「もし炭素繊維が禁止されると、日本メーカーが困る事態になりそうなんです」
つボイ「いくら便利な素材でも、人体に悪影響があるのならよくないということですね。これまでの様々な事例から廃棄方法の工夫がいるんじゃないでしょうか」
現時点では焼却処理ができないため、ほぼ埋め立て処理されているそう。リサイクル方法も研究されているものの、有効な方法は見つかっていないとのこと。
このままEUをはじめとして世界各国で使用を禁止し、他の素材に置き換えていくのか、それとも最適な廃棄方法を見つけて共存していくのか。
今後の議論から目が離せない状況が続きそうです。
(葉月智世)
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