2004年開幕投手は「カワケン」?川上憲伸が勘違いした衝撃采配の裏側

CBCラジオ『ドラ魂キング』。「川上憲伸、挑戦のキセキ」は、野球解説者の川上憲伸さんが、自身のプロ野球人生を「挑戦」という視点から振り返るコーナーです。4月16日の放送では、川上憲伸さんが2004年の開幕戦をめぐる“ダミー開幕投手”としてのエピソードや、実際の開幕投手・川崎憲次郎さんとの“カワケン”混乱事件、さらに自身が登板した3戦目のサヨナラ勝利までを振り返りました。聞き手は宮部和裕アナウンサーです。
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前回の放送で、川上さんは落合博満監督から「川上はとりあえず開幕投手はないから」と告げられ、森繁和ピッチングコーチからは「開幕3戦目」と聞かされていたことを明かしています。
このシーズン、実際の開幕投手は川崎憲次郎投手でした。FA移籍で中日ドラゴンズに加入後、怪我で3年間ほとんど1軍登板がなかった投手です。「情報を味方にも漏らすな」という時代。開幕投手が誰なのか、当日までチーム内にも明かされていませんでした。
川上「金曜日(開幕日)にブルペンで投球練習をして。当時は予告先発がなかったので、僕が開幕投手のようなふりをしなきゃいけないんですよ。ダミー役」
川上さんは「いかにも今日投げる」という人を寄せ付けない雰囲気で早めに上がり、16時半過ぎにはブルペンに入り、トレーニングルームでトレーナーとリハビリ的なエクササイズをしていたそうです。
開幕投手は「オレー!?」
そんな中、「2004年!映えある開幕投手は!」という場内アナウンスが響きます。このとき、川上さんの耳に聞こえたのは「カワ…ケーン…」という言葉でした。
川上「『オレー!?』と思って。『来た!このサプライズ来た!アカンやつや!』と思ったんですよ。『もう肩作ってしまったし。無理無理!カワとケン、カワケン(川憲)やんか』と思って。『俺、昔カワケン、カワケン言われとったぞ!』と思って」
3戦目と聞かされていたのに、まさかの開幕投手?試合直前にとんでもないサプライズだと慌てた川上さん。
トレーナーに「ちょっとストップストップ、待って待って待って待って」と声をかけ、「ユニフォームに着替えないと」と急いでロッカールームに向かったところ、そこである人物の姿を見かけたのです。
もうひとりの「カワケン」
川上「もうひとりのカワとケンが去って行ってるのを見たんです。『えっ?この人が本当なら、確かにカワケン…一緒やな、川と憲。崎と上が違うなぁ。憲のあとに次郎があるなぁ…』」
ここで川上さんは、開幕マウンドに立つ「カワケン」が自分ではなく、川崎憲次郎投手だということを理解しました。しかし、川上さんは川崎さんが投げているシーンを一度も見たことがなかったため、驚いたといいます。
「頭がぐちゃぐちゃ」と混乱する川上さんに、ロッカールームにいた岩瀬仁紀投手が「落ち着け、どうしたの憲伸」と声をかけてくれました。
川上さんが「一瞬、僕のこと言われなかった?」と尋ねると、岩瀬さんは「いや、川崎憲次郎って言ってた」と返答。川上さんはようやく「なるほどね」と納得したそうです。
読めない落合監督
この出来事について川上さんは、落合監督との会話の少なさや最初の挨拶の違和感から、どんな人柄なのか全く読めなかったと振り返ります。
「ひょっとして、こういうサプライズをする人なのか。最高のサプライズだな、やっぱり僕が開幕投手なんだ!」と、大きな期待が胸をよぎったといいます。
実際には開幕投手ではないと聞かされていたため、川上さんは徳島から来る予定だった両親のためのホテルをキャンセルし、確保していた開幕戦のチケットも他の人に譲っていたそうです。
この開幕戦では、先発の川崎投手が2回に5失点でKO。しかし、ドラゴンズの中継ぎ陣が踏ん張り、さらに打線も広島東洋カープの大エース黒田博樹投手から6点を奪い逆転。
最後は新守護神の岩瀬投手が逃げ切り、奇跡の逆転勝利で開幕戦を飾ったのです。
3戦目の大役と逆転勝利
その後、開幕3戦目に登板した川上さんは、延長11回まで157球を投げ切り、広島にサヨナラ勝ちを果たしました。
川上「開幕戦の始まりも素晴らしかった。自分にとっての開幕戦勝利というのも、かなり勢いつきましたよね」
「先発ピッチャーで一番嬉しい勝ち星の取り方」として、サヨナラ勝ちや自分が交代した後にチームが逆転して勝ちを付けてくれることを挙げ、この試合ではその2つが実現して「めちゃくちゃ嬉しかった」そうです。
開幕3連勝、落合監督としては最高の船出となりました。
宮部によると、後に落合監督は「このチームは3つ目が絶対に落とせない試合だった。そこにエースの川上を持っていったんだ」と語っていたといいます。
結局、この落合監督による情報戦略は的中し、2004年初年度のセ・リーグ優勝へと繋がっていくことになるのです。
(minto)
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