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1月2日の羽田空港事故原因、海保機の「思い込み」と管制の「見落とし」が明らかに

1月2日の羽田空港事故原因、海保機の「思い込み」と管制の「見落とし」が明らかに

運輸安全委員会は、今年1月2日に発生した羽田空港での日本航空機(JAL)と海上保安庁機(海保機)の衝突事故について、事故の経緯や海保機内の音声記録をまとめた経過報告書を公表。海保機の副機長ら乗員5人が死亡したこの事故で、複数の要因が重なっていたことが明らかになりました。12月26日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員とパーソナリティの永岡歩アナウンサーが、このニュースについて解説しました。

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海保機側の誤認と思い込み

海保機側は滑走路への進入許可が「出ていた」と誤認していました。機長は運輸安全委員会の調べに対して、「飛行目的が震災の支援物資輸送だったため、離陸の順位を優先してくれたと思った」と証言していたことも明らかになっています。

1月1日に起きた能登半島地震の物資を届けるためということで、「先に行っていいんだ」という思い込みがあったようです。

運輸安全委員会は3つの重要なポイントを示しています。

海保機が管制官から許可が出たと考えて、滑走路に進入した点、管制官が海保機の侵入に気付かなかった点、そしてJAL機が海保機に気づかずに着陸した点です。

海保機は今から飛ぼうとして滑走路に入り、JAL機は着陸しようとして同じ滑走路に進入。その結果、衝突することになりました。

指示の記憶と現実の食い違い

機長は管制官の指示を受けた際、「Line up and Wait」つまり「滑走路に入って待機」と言われたと記憶していました。副機長とも復唱してから滑走路に入ったと説明。

海保機は滑走路に進入後、管制官から「離陸支障ありません」との許可をもらったとも記憶していましたが、管制記録にはこういったやりとりは残っていませんでした。

特に、海保機は当日中に羽田に帰る予定で、乗員の帰宅を考慮して「なるべく早く帰したい」という思いがあったとも明らかになっています。

管制システムの警告と視認性の課題

管制官が海保機の侵入に気付かなかった背景には、システム上の問題もありました。

滑走路への侵入を検知する「滑走路占有監視支援機能」が警告を発していましたが、管制官はこの注意喚起表示に気付きませんでした。

JAL機が海保機に気付けなかった理由として、海保機に取り付けられた衝突防止灯の問題も指摘されています。後ろから見える光が白色で、滑走路中心線の照明とほぼ同じ色だったため、区別が困難だったのです。
 

人的要因と安全対策

空港の管制システムは非常に高度で優れたものですが、最後は人間が口頭で指示を伝えます。聞く側と伝える側、双方にミスがあると事故につながる典型的な例となりました。

また、「ハリーアップ症候群」という言葉が事故当時から指摘されていました。時間に追われていると、的確な判断が鈍ることがあります。こうした状況をどのように補っていくかが課題となっています。

事故を受けて、警告表示に音を付けるなど新しい試みが始まっています。常に画面を見ていないと気付かない現状から、アラーム音で注意を促す仕組みへと改善が図られています。

また、管制官のチェック体制も強化され、確認用のスタッフを増員する方針です。

JAL機の迅速な避難対応

一方で、JAL機では乗客乗員379人全員が無事に避難できました。

機長の指示を受けた前方の客室乗務員が左右2か所の扉を開け、4分後には非常脱出を始めました。すでに煙が出ていた後方では機長からの指示が受けられない状況でしたが、客室乗務員が自主的に判断。会社規定に従い燃料漏れがないかを確認した上で、非常ドアを開放しました。

逃げ遅れた人も機長が最後に確認し、全員が無事脱出。その2分後には黒煙が広がり、火災は客室内へと及びました。事前の準備と適切なマニュアル対応が、全員避難を可能にしました。

教訓と今後の課題

復唱が機械的になりがちな問題も指摘されています。言われた通りにちゃんと復唱したつもりでも、実際には違う内容を復唱している場合や、お互いに事実と異なることを勘違いしたまま了解してしまうケースがあります。
今回の事故でも、似たような状況があったと考えられています。

言葉の確実な伝達や、お互いの認識の確認など、最後は人の力が重要です。
このような悲しい事故を二度と起こさないよう、安全に対する意識を高く保ち続けることが求められています。
(minto)
 

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