中高年は転倒に注意!寝たきりや認知症に繋がることも
12月20日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』には、「何かにつまずいた時、次の一歩がでにくい」との相談が寄せられました。50代や60代になると、つまずいて転倒することが増えますが、身体に何が起こっているのでしょうか?この相談に心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が答えます。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くつまずくのは「3つの老化」
寄せられた相談の詳しい内容です。
「50歳も半ば過ぎた頃から、何かにつまずいた時に次の一歩が出にくくなり、こけそうになって危なかった、という機会が増えてきました。
どういうことが身体に起きているのでしょうか?また、少しでも改善するにはどのような対策をすればいいでしょうか?」(59歳・女性Aさん)
まず、中高年になるとつまずきやすくなる理由について「3つの老化」を挙げる吉田先生。
吉田「まず筋肉の老化です。ふくらはぎの筋肉は極端に衰えることはないです。逆に、つま先をあげるというのはふくらはぎの反対側の脛の部分の筋肉で、もともと筋肉が少ない上に、中高年になるとさらに衰えるので、つま先が上に上がりにくくなりつまずきやすくなります。
ふたつ目は、耳の奥で平衡感覚を担う内耳の機能が老化し、バランス感覚が悪くなること。
3つ目が目の老化。足元の段差、障害物が見えにくくなる。この3つの老化が重なってつまずいてしまいます」
とっさに足が出ない
つまずいた後、次の一歩が出にくいのはなぜでしょう?
吉田「若い頃はつまずいて前に倒れそうになっても、反対側の足が前に出て踏みとどまれる。これは医学では踏み出し反射といいます。頭で考えなくても、無意識のうちに反射的に反対の足を前に出すのです。
これは脳の小脳とか大脳基底核とか、脊髄という部分でものすごく速く情報処理を行うことで、人間はバランスをとっています。
実はこの脳の情報処理の能力は老化がとても速いです。踏み出し反射は中高年になったら情報処理に時間がかかって、反対の足を踏み出す前に転んでしまいます」
つまずくと骨折や頭の強打が
つまずいた場合はどのような危険があるのでしょうか?
吉田「転んだ時に地面に手をついて最悪手首骨折することがありますが、それで命を落とすことはまずないです。転びそうになって、なんとか踏みとどまろうと不自然な姿勢で粘る人が結構危険です。
大腿部頸部骨折(足の付け根の部分の骨折)で、長期の入院とか寝たきりが必要になる場合があって、それで脳の老化が加速して、認知症になったり、誤嚥性肺炎で命を落とす人も多いです。
倒れた時に最も多いのは頭の強打です。血管が破れて頭の中に大きな血の塊ができる硬膜下血腫、硬膜外血腫というものになって命を落とす人も少なくないです」
倒れるときは前向きに
つまずいた時は、前に倒れる方がいいのでしょうか?
吉田先生「そうです。頭蓋骨は前より後ろが薄いです。後頭部を打つのが最も危険です。だから基本的に前に倒れた方がいいですが、中高年だと骨が弱くなっているので、普通に手をついただけで手首を骨折してしまいます。
対策は両手の手首を曲げずに、肘を曲げること。そうすると手のひらから肘まで全体で同時に地面につけられる。力が分散するので骨折を防げます」
後ろに倒れてしまったらどうしたらいいのでしょう?
吉田「その時は真っ先に思いっきり顎を引く。これ、大事です。背中を丸める。これだけで後頭部を強打するのはかなり防ぐことができます。
さらに膝を曲げ、お尻を後ろに突き出す。そうすると自動的に尻もちがつけます。ただ、前に倒れられる場合は、前を優先すべきです」
予防のための運動
つまずきを要望する運動を紹介する吉田先生。
吉田「つま先を上げる運動です。イスに座ってつま先を10回くらい上にあげる運動をやっていただきたいです。これを毎日やるとかなり効果があります。
家の中の段差をなくしたらいいんですが、意外に落とし穴になっているのが、カーペットやマットがめくれてつまずく人が多いです。あと、散らばった電気コードや配線でつまずくことが多いです。
夜中にトイレに行くことも増えますが、足元の照明が暗すぎることも多いので照明を明るくすることも検討してください」
さらに60代になると、もう一段リスクが高まると吉田先生。
吉田「だいたい10歳ごとにどんどん転びやすくなります。『今まで大丈夫だったから大丈夫』といった過信は禁物です」
老化はじわじわとくるのではなくて、ある時を境に一気にがくっとくるそうです。だから日頃の運動が大事になってきます。
(みず)