全身医療脱毛、レーザー脱毛をうたうアリシアクリニックを運営する医療法人社団美実会と関連法人の一般社団法人八桜会は、今月10日に東京地裁へ破産を申請し、破産手続き開始決定を受けました。2社合わせて債権者は9万1818人、負債総額は124億7133万円に達し、過去最大規模の消費者被害となっています。施術を受けていない利用者の前払いの返金はどうなるのでしょうか？12月17日放送の『ＣＢＣラジオ ＃プラス！』では、このニュースについて光山雄一朗と山本衿奈が、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に尋ねます。

会社の破産手続き

まず今回のアリシアクリニックの巨額倒産について、破産手続きはどのように行われるものでしょうか？

正木「よく聞く自己破産は個人の破産で、借金を免除してもらうのが破産手続きです。
会社の破産は法人破産とも呼ばれますが、支払不能や債務超過という理由で経営の継続ができない場合に裁判所に申し立てを行なう『破産法』という法律に基づいて、財産を精算していき、会社をなくすという手続きになります」

アリシアクリニックについては、どのような手続きとなるのでしょうか？

正木「今回通常の流れとは違う部分もありますが、まず、破産手続き開始決定がおりています。これがおりると破産管財人が選ばれます。

これは破産した会社が保有していた財産をお金に変えたり、売掛金とか、なにかしらの回収できるけど未回収なものをお金に換えたり、みなさんに負っている借金や義務がどのくらいの金額あるのかを確定したり、精算した財産から債権者に対するお金を払ったりといった事務手続きをします。
第三者として公正な立場にある方を破産管財人といい、今回はすでに選ばれています」

破産手続開始通知書

9万人を超えるという債権者に対しては、どのような手続きがあるのでしょうか？

正木「債権者に対して『破産手続開始通知書』が送られてきます。今回は債権者が多数なので12月中旬からメールや郵送などで行なわれる予定です。

一般的にはこれが送られてきたら、自分がどのくらいの債権を持っているかという申告をする手続きがありますが、財産がない反面、借金がすごく多いという状況でお戻しできる見込みがないということで、契約者のみなさんにどのくらいの契約が残っているかという手続きは現時点ではしない。

財産がある程度確定してお戻しできる金額があるのでは、とわかった時点で改めて調査を行なうとアナウンスされています」

破産手続きの終了

破産手続開始通知書が送られてきた債権者にとって必要な手続きは何でしょう？

正木「その後に、債権者集会をして、会社がどういう経緯で破産に至ったのか、財産がどのくらいあって、どういうスケジュールでお戻しできるのかできないのか、明らかにする手続きがあります。

今回は債権者が多いので集会は行なわず、来年の4月24日までに、どういう状況かという報告書を管財人がホームページに掲載する予定です。

財産をお金に換えた、そのお金を優先順位に従って分けていきます。
そのような手続きが終わって、財産が残らない状況になったら、破産手続きが終わって法人が消滅します」

山本衿奈も被害者

光山「今回、お金は返ってきそうですか？」

正木「まだ見込みですが、かなり難しい状況だと思います」

ここで「実は私も被害者なんです」と明かした山本。
アリシアクリニックと全5回で契約し、まだ2回しか通っていないとのことです。

正木「どういう支払いかによって差はあります。現金の一括払いの場合は難しいです」

山本「現金一括払いでした…」

正木「となると、現状の見立てでは厳しいです。というのも配分は全員に平等にされるわけではないです。優先順位があります。

まずは破産管財人への報酬、さらに税金、従業員の方への給料が先です。給料が未払い、解雇予告手当、社会保険料も払われてない、そこが払い終えてから残りをみんなで分けるという形になりますから、かなり厳しいです」

ローン払いなら急いですべきこと

光山「ローンならどうですか？」

正木「分割だと支払いを止められる可能性があります。支払先が倒産して施術が受けられなくなったという理由を告げて、信販会社やクレジット会社に支払いの停止を申し出ることができます。

自分の信販会社、クレジット会社に連絡して、契約書とか通った回数がわかる証拠などを揃えた上で、支払い停止の抗弁書という書類を内容証明で送らなければいけません。

そこまでできれば向こうの会社の判断になりますが、支払いを止めてもらえることが多いです。なので、未払い部分については支払いを止めることができる可能性があるので、至急連絡をして欲しいです」

一括前払いは危険

光山「ちなみに脱毛サロンにおける倒産件数は今年、過去最多を数えているそうです」

同様の被害に巻き込まれないため、今後注意すべき点はあるでしょうか？

正木「分割払いか一括かで結論が異なることがあります。ただ一括払いの方が安かったりします。

ですが、こういう前受け金、契約金を一括でもらってそれを運転資金として消費して、どんどん支払いが増えて倒産するというのが多いです。なので、割高ではあるけれど、都度払いにするのが経済上は安全かと思います」

派手に宣伝している企業であっても、ネット上で評判を調べたり、支払い方法をしっかり考えるなど、リスク回避は必要なようです。
（みず）