無形文化遺産登録へ!「トムヤムクン」の起源
12月4日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、タイのエビ入りスープ「トムヤムクン」を無形文化遺産に登録しました。12月6日放送のCBCラジオ『ドラ魂キング』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員がこのニュースについて、西村俊二アナウンサーと安藤渚七を交えて解説します。
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ユネスコ無形文化遺産と言えば、日本の伝統的な酒造りも登録されました。
輸出拡大や地域の活性化につながるとして、関係者は大いに盛り上がっています。
日本としては今回で23個目の登録とのことです。
そもそもユネスコ無形文化遺産への登録は、芸能や技術、社会的習慣や儀礼などの形のない文化を保護する目的で行われます。
酒造りはその土地の気候や文化が密接に関わっていることが多いため、過去にも世界各国の酒造りの技術が無形文化遺産として登録されているといいます。
石塚「ジョージアの伝統的なワインとか、ベルギーのビールだとか、キューバのラムとか、モンゴルの馬乳酒だとかね」
安藤「馬乳酒?」
石塚「馬のお乳で作るお酒ね」
酒造りひとつとってもこれだけ種類が多く、世界の技術や文化の多様性を実感します。
石塚「実はね、トムヤムクンも登録されたんです」
「トムヤムクン」とは?
安藤「えー!わたし大好き!」
トムヤムクンも含む、タイやベトナムの料理が大好きだという安藤。
ところで「トムヤムクン」って、どういう意味なのでしょうか?
石塚「『トム』は煮る、『ヤム』は混ぜるとか和える、『クン』はエビ」
西村「つまり、エビのまぜまぜスープということなんですね?」
エビの旨味が詰まったスープを、赤唐辛子やレモングラス、ナンプラーなどで辛みと酸味のある味付けにした、食べ応えのある代表的なタイ料理です。
石塚「川エビの頭と殻から出汁を取って、ハーブでいろいろ味付けするのが基本のようですね」
興味深い起源
トムヤムクンは世界3大スープのひとつに数えられます。他にはブイヤベース、ふかひれのスープ、ボルシチが挙げられます。
石塚「全部で4つあるじゃないかって話なんですけど(笑)これらの内のどれを3大とするかは、国によって違うみたいですね」
このトムヤンクン、どのように生まれたのでしょうか?
石塚「起源には諸説あるんです」
ひとつはアユタヤ王朝時代にフランスから来た使節団をもてなすために、フランス料理で有名なブイヤベースを真似て作ったという説。
もうひとつは、川沿いに暮らしていたタイ人の家庭料理が広まったという説。
日本人にとってエビといえば海産物だと思いがちですが、タイでエビといえば昔はほとんどが淡水産だったのだとか。
生活の中で身近な川エビを採ってスープを作っていたのが、広く根付いたのではないかという考えです。
今回トムヤムクンが無形文化遺産に登録されたのは、自然との調和を重んじる人々の暮らしが評価されたため、というのがその理由。
起源はどうあれ、地元の食材に関する伝統的な知識を体現した料理であることは間違いないようです。
ブーム加速の兆し?
ハーブやスパイスの刺激的な香りが食欲をそそるエスニック料理。
日本でも最近はエスニック料理専門店が増え、コンビニ飯やインスタント食品でも見かけるほど、身近なものとなっています。
石塚「2016年の『今年の一皿』にはパクチーが選ばれてますしね」
「今年の一皿」は株式会社ぐるなびが発表しているもので、その年に流行または話題となった食が選ばれています。
石塚「西村さんはあんまり好きじゃない?」
西村「いや私もトムヤムクン好きなんですけど、辛いもの食べると発汗量がすごいので(笑)」
食べたいけど、人前で食べるのは恥ずかしいようです。
そして最後に石塚が、大切なポイントについて解説しました。
石塚「無形文化遺産を考える時は、背景にある技術や伝統、文化が注目点になってくる。そこを忘れないようにしたいですね」
タイ人たちの生活に思いを馳せながら食べるトムヤムクンは、さらに美味しいかもしれません。
今回の無形文化遺産登録を受けて、エスニックブームはさらに加速するのではないでしょうか。
(吉村)