SNS公開も幼稚園の壁画もNG!「著作物の私的利用」はどこまでOK?
身近な疑問・質問・お悩みを解決する『北野誠のズバリ』(CBCラジオ)の「ズバリ法律相談室」のコーナー。9月18日の放送には、「Tシャツプリントの著作権」についての質問が寄せられました。販売目的でなければ、ネットで拾った画像や漫画をTシャツにプリントしてもよいのでしょうか?オリンピア法律事務所の原武之弁護士がこの質問に答えました。
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「去年、ネットで拾った画像をダウンロードして、無地のTシャツにプリントして着るのが個人的なブームになりました」(Aさん)
その画像は個人の作品で、「絶対に売ったりしないから」と許可をもらっていたそうです。
「今年は縁がなくなり、新しいものを作って着たいのですが、販売しないことが大前提であれば、市販の漫画をそのままプリントしていいのか、それをAI加工すればOKなのか、そのあたりの線引きを教えていただきたいです」(Aさん)
「著作権」と「肖像権」の違い
「著作権」とは、著作物を創作した人に与えられるもので、独自で想像した絵や文字など、あらゆるものに認められている権利です。
特徴は、登録をしなくても著作権者にその権利が付与されるということ。
似たような権利に「肖像権」がありますが、これはプライバシーの一種で個人の姿や顔、輪郭などの肖像に発生するもの。
「著作権」が文章やロゴ、物に発生するのに対して、「肖像権」は人に発生するという違いがあります。
「私的利用の範囲」はどこまで?
Aさんの質問は「販売しなければ市販の漫画や、それを加工したものをTシャツにプリントしても良いか」というものでした。
原弁護士「基本的には、著作権は私的利用の範囲内であれば使うことができます」
自分が持っている漫画を書き写したり、自分だけで使ったりするのは私的利用の範囲になりますが、この「私的利用の範囲がどこまでなのか」ということがいつも議論になるそうです。
SNSへのアップは許されない
Aさんは最初ネットで拾った画像を使用していましたが、これは著作者の許可があったので問題はありません。
しかし例えば、著作者が全く知らないところで、勝手にSNSに上げてしまった場合はどうでしょうか?
原弁護士「皆さん安易にSNSに上げちゃうんですけど、私的利用が仮に認められるとしてもそれは複製、写すことだけ。
アップするのは『公衆送信』といって世間に広めることになるので、ほぼ許されないと思ってもらった方がいいですね」
AIで加工してパロディ化することもアウト。
著作権のひとつに「同一性保持権」があり、加工することがすでに著作権侵害となります。
画像や動画だけでなく、歌詞や小説の文章を勝手に使うことも著作権侵害です。
ディズニーの厳しい措置
原弁護士「幼稚園や保育園でドラえもんやポケモンの絵を貼ったりしますけど、あれも微妙なんですね。私的使用なのかっていう」
1987年には、滋賀県の小学校の6年生が卒業制作としてプールの底にミッキーマウスとミニーマウスの絵を描きましたが、ウォルト・ディズニー・ジャパンが「消してほしい」と要求し、塗りつぶした事例がありました。
原弁護士「日本の社会の中には、商業利用じゃなくて、みんなのために無償で使ってやってる分にはいいんだという変な誤解があるんですけど。商業利用かどうかは関係がないので、学校のプールも商業利用ではないけど、ダメなんですね」
懲役刑の可能性も
もし著作権違反で訴訟となった場合はどうなるのでしょうか?
原弁護士「懲役刑まであります。10年以下の懲役と1000万円以下の罰金で、量刑がむちゃくちゃ重たいんです」
SNSやYouTubeで利益を得てしまっている場合は、損害賠償額がさらに跳ね上がります。
最初は私的な目的であっても、周囲からの評判が良くSNSにアップしてしまい、無意識に広がっていく場合もあります。
著作権法違反は重い罪です。著作者の許可なく使用することは絶対にやめましょう。
(minto)