食中毒&ノロウイルス徹底対策
サマリーSummary
ドクター:北里大学大村智記念研究所 ウイルス感染制御学 教授 獣医学博士 片山和彦
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
今回のテーマは「~冬の時期こそ要注意!~食中毒&ノロウイルス徹底対策」
これからの時期に患者数が急増する食中毒「ノロウイルス」。感染力がとても強く治療薬もないため、いかに感染を防ぐかがとても重要なのだとか。そこで今回は、ノロウイルスの感染対策や冬に注意すべき食中毒の予防法について専門医に教えてもらいました。
冬に急増する食中毒「ノロウイルス」
ノロウイルスによる食中毒は、人から人への感染が約9割。牡蠣などの二枚貝によるものは1割未満といわれています。先生曰く、ノロウイルスは酸に強く胃を通過して小腸にも到達。そして、小腸の上皮細胞で急激に増殖して小腸を傷つけ荒らすため、嘔吐や下痢などの激しい症状を引き起こすそうです。
<強烈な感染力を持つノロウイルス>
ノロウイルスは、100~1000個ほどのウイルスで感染するといわれています。その感染力は、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの約10倍。患者数は、例年11~12月にかけて約4倍も増加するそうです。
ノロウイルスの感染拡大防止法(1)消毒は「次亜塩素酸ナトリウム液」で行う
新型コロナウイルスやインフルエンザのウイルスには「エンベロープ」という脂質でできた膜があります。エンベロープはアルコールや石けんなどで壊れやすい性質があり、その膜が破れると感染力が失われるそうです。一方、ノロウイルスは表面が丈夫な外殻で覆われており、エンベロープよりもアルコールに強い事がわかっています。そのため、ノロウイルスに対してはアルコールでの消毒は効果が期待できないのだとか。消毒をする際は、次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めた次亜塩素酸ナトリウム液で消毒すると良いそうです(消毒や拭き取りの場合:濃度6%、液10mL、水3L)。
ノロウイルスの感染拡大防止法(2)トイレの蓋は閉めてから流す
トイレの蓋をせずに水を流すと、便座やペーパーホルダー、壁にまでしぶきが飛んでしまいます。先生によると、水滴1粒あたりに約1万個のノロウイルスが含まれている可能性があるのだとか。そのため、トイレの蓋は必ず閉めてから水を流すようにしましょう。
ノロウイルスの感染拡大防止法(3)排便の際は腕まくりをする
長野県の保健所が行った検証では、排便後に手の一部と袖口にウイルスが付着する事が判明したそうです。手や袖についたウイルスからさらに感染を拡げる可能性があるので、排便の際はトイレの外で腕まくりをしてから入るようにしましょう。
ノロウイルスの感染拡大防止法(4)手洗い後のタオルを共用しない
タオルを共用するとウイルスが付いたタオルを他の人が使う事になり、感染が拡がる可能性があります。そのため、ノロウイルスに感染したら使い捨てのペーパータオルを使用するのがオススメだそうです。
ノロウイルス感染後に気をつける行動
先生によると、症状を和らげるために下痢止めを使うのは間違いとの事。下痢は、ウイルスを体外に排出しようとする反応なので、なるべく早いうちに出し切ってしまった方がいいのだとか。薬で止めてしまうと状態が悪化する可能性もあるそうです。また、嘔吐や下痢などの症状によって脱水症状を引き起こす恐れがあるので、水分補給も忘れずに行いましょう。
ノロウイルス感染後の嘔吐物の処理方法
嘔吐物には数万個~数億個のウイルスが含まれているといわれています。さらに、ノロウイルスは乾燥や寒冷に強く、乾いたままの状態で20日以上は感染力を保ち続けるといわれているのだとか。そのため、正しく処理をして感染拡大を防ぐ事が大切だそうです。
<準備するもの>
・マスク
・使い捨てビニール袋
・エプロン
・ビニール袋(靴カバーとして使用)
<嘔吐物の処理方法>
▼嘔吐物に直接触れないようにマスク手袋などの装備をする
▼嘔吐物の上に吸水できるペーパータオルなどを敷き吸い取る
▼ペーパータオルの上から次亜塩素酸ナトリウム液をかけしばらく置く
▼外側から内側に向かって集めしっかりと拭き取りをする
<嘔吐物を拭き取った後はスチームアイロンがオススメ>
ノロウイルスは、85℃以上で1分以上加熱すると死滅するそうです。そのため、嘔吐物を拭き取った後は、スチームアイロンでの処理がオススメ。ウイルスが飛び散らないように濡れたタオルを敷き、その上からしっかりとアイロンをかけましょう。目安は、濡れタオルが乾く程度だそうです。
<洗い物の仕方>
粉末タイプの酸素系漂白剤を使い、37℃の温水で10~20分つけ置きすると、ウイルスを死滅できるそうです。
<ゴミの処理方法>
嘔吐物などに触れたものを破棄する場合は、感染拡大を防ぐために次亜塩素酸ナトリウム液に浸してから捨てるようにしましょう。
ノロウイルスの症状がおさまった後に気をつけたい事
先生によると、症状がおさまった後もウイルスは1~2週間体内に残っているそうです。症状がある時に比べると数は減りますが、強力な感染力は失われていないのだとか。そのため、トイレや手洗いなどの対策を忘れないようにしましょう。また、先生の調査によるとノロウイルスに感染しても無症状の人がいるとの事。そのため、家族の中で感染者が出たら、症状が出ていなくても手洗いや共用している物の消毒など対策をしっかり行いましょう。
他にもある!冬に気をつけたい食中毒(1)アニサキス
アニサキスは、サバ・アジ・サンマ・カツオ・イワシ・サケ・イカなど魚介類の体内にいる事がある寄生虫。食べてしまうと激しい腹痛などの症状を引き起こすそうです。
<ドクター直伝!アニサキスの防ぎ方>
アニサキスは、通常魚介類の内臓の表面にいるそうです。そのため、魚を丸ごと買ったらすぐに内臓を取り除きましょう。そして内臓を取り除いた後に目視で確認する事も大切。幼虫を見つけたら取り除いてください。また、-20℃で24時間以上冷凍をするとアニサキスを死滅できるとの事。70℃以上での加熱も有効だそうです。
他にもある!冬に気をつけたい食中毒(2)カンピロバクター
カンピロバクターは、動物の腸管内に生息する細菌。感染すると発熱や嘔吐などの症状が出るそうです。
<ドクター直伝!カンピロバクターの対策法>
カンピロバクターは、熱に弱く食材の中心部を75℃以上で1分間以上加熱すると死滅するそうです。そのため、調理の際はしっかりと加熱処理をしましょう。また、調理に使用した器具は、しっかりと洗浄・殺菌する事が大切だそうです。
(2022年11月20日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)