災害活動の自衛隊に与えられる「特別な権限」
地震や台風などで大規模な災害が発生すると、自衛隊の災害救援部隊が被災地に入って支援します。災害救援部隊は武力事態ではありませんが、被災者のために一般人の土地に入ったり、家屋を撤去するなどして救助を行なっています。そもそも自衛隊にはどのような権限があり、どのような行動を取ることができるのでしょうか?8月31日放送『北野誠のズバリサタデー』では、Webメディア『乗りものニュース』の記事を基に、災害活動に関する自衛隊の権限について、オリンピア法律事務所の原武之弁護士が解説しました。
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よく警察が検問などを行なっていますが、これは警察官職務執行法に基づいて行なわれているものです。
この法律が自衛隊にも準用されて、同じようなことができるようになっています。
警察の役割を自衛隊が担う例として、例えば事故現場などで封鎖を行ない二次災害が出ないようにすることや、緊急事態で物を壊して入ったり、私有地を使ったり、場合によっては民間人に手助けを求めることなどが挙げられます。
原弁護士「基本的に警察官と同じだと思ってもらったらいいんですけど。警察官もそうたくさんいないので、自衛隊が(警察の業務を代わりに)やっていると思っていただけたらいいんですね」
比例の法則
自衛隊も警察官と同じ権限を持つことがあるとのことですが、ここで原弁護士が重要だと語ったのは「比例の原則」というもの。
権利を行使する側(つまり警察)は、行使される側とバランスを取らないといけないというもので、例えば相手が素手で攻撃してくるのであれば、警察の代わりとなる自衛隊もいきなり武器を使用してはいけないということになります。
北野は以前とあるショート動画で、酔っ払った外国人が日本の警察官に絡んできた時、警察官は武器などを使わずに手首をひねって制圧した様子を観ましたが、これも相手は武器を持っていないから。
そのため、日本の警察官は武術や護身術を習っているのです。
自衛隊は警察を上回る武器を持っていますが、「比例の法則」の適用で相手によっては使えないことになります。
そうなると、騒擾(社会を乱すような大きな騒ぎ)が起きたとしても、自衛隊は警察官と同じようにまずは説得をして、それでもダメなら拳銃をなるべく使わずに盾などで制圧するという、大変な作業をしなければなりません。
ちなみに先日、中国の情報収集機が日本の領空を侵犯した問題が発生しましたが、相手は武器を持っている飛行機ではないため、「比例の法則」で攻撃してはいけないということになります。
撤去後の補償
災害時の自衛隊の活動に話を戻すと、二次災害防止や人命救助のために、家の窓ガラスを割らないと入れない、二次被害を防ぐために家を完全に壊さなければならないケースがあります。
法律上こうした撤去作業は可能ですが、警察官職務執行法の補償規定に基づき、あとで補償することになります。
緊急時はいちいちその家の人に許可を求めている時間はありませんが、作業後で壊した物を補償するということにはなります。
(岡本)