後続台風もこのクラス?台風10号の特徴と意外な効果
のらりくらりと迷走を続け、各地に大雨をもたらしている台風10号。その進路に注目が集まっています。8月29日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、気象予報士でもある沢朋宏アナウンサーが、台風10号の特徴と台風が持つ地球科学的な働きについて解説しました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くギリギリ予報圏内だった九州コース
今回の台風10号の特徴について「むちゃくちゃ」と沢。
台風10号は、もともと東海や関東のあたりに南から直撃しそうという予測がたてられていましたが、実際にはまさかの九州へ行きました。
しかしこれは「気象庁の予報のギリギリ範囲内だった」そう。
沢「テレビや新聞ではどうしても、予報円の真ん中に×を打って、点線で繋ぐんですよ。だからあの点線通りに進むと思いがちなんですが、気象庁はあくまでもあの予報円という円の中は『どこに行ってもおかしくない』という解釈で出しています」
今回の場合は、予報円の最も西側のコースを通っていきました。
台風は予報円の真ん中を通るような印象があるため、今回は大外れだったように見えますが、実際はそうではないということです。
予報円の重なりが示すこと
予報は外れていないにも関わらず「むちゃくちゃ」と話した沢。その理由は?
沢「ここから先がむちゃくちゃなんです」
明日ぐらいまでは進路予測のめどが立っていますが、気象庁がいよいよ「土日月火はわかりません(意訳)」と発表したのです。
通常の予報円は、アイスクリームのコーンの先にトリプルのように丸がいくつも並びますが、今回の台風は縦並びのイメージ。
最新の予報円では円が重なってしまっています。
これは「ずっとそこにいるかもしれない」し、「うろちょろするかもしれない」ということ。
現段階では「何もわからない」ということです。
過去の迷走台風
永岡歩アナウンサー「台風って、行ってちょっと戻ってきますってあるんですか?」
沢「あります」
2000年代に入ってから変な動きの台風が増えてきているそうです。
過去にはこんな例があります。
東海~関東の辺りに上陸した台風は、日本海から抜けたり東北へ向かうものが多いですが、ある時の台風はそこから西へ戻り、静岡~関東の辺りに上陸してから、愛知の山の中を通過し、岐阜を超え、関ヶ原から西へ行って、瀬戸内海を九州の方へ行ったというのです。
今回の台風10号の動きは、翌日までの予測はできるものの、その先は予報円が重なっている状況。
四国に行くのか、東海から関東を駆け足で駆け抜けていくのか、2~3日その場に留まるのか、まだまだわからないのです。
台風10号が「むちゃくちゃ」な理由
永岡「弱まらないんですか?」
沢「弱まるのに時間がかかるという表現でいいでしょうか」
台風10号は、少なくとも9月3日(火)までは台風で居続けるとの予測はできているそうです。
ただその時点で台風の居場所が、気象庁の予報では「青森かもしれない」し、「愛知かもしれない」となっています。
もはや「予報」とは呼べない状況ですが、このぐらい今回の台風は「むちゃくちゃ」なのです。
沢によると、これは夏の台風にありがちなこと。
秋には、西から東へ吹く「偏西風」が南の方に下がり、日本付近にやってきていた台風は、これに捕まって東に流れます。
夏の偏西風は北海道より北にいるため、8月の台風は「迷走」が起こりやすいといいます。
台風の意外な役割
永岡「8月末にまだ10号というのは、数としてはまだ少なめ。少なかった分強くなる、というのは関係ないですか?」
沢「それは100%その通りです」
地球科学的にいうと、台風には役割があるといいます。
沢「台風が赤道付近の熱を、北へ北へと渦巻きで運んでいるんです」
台風の湿った空気は赤道付近の熱を、日本の辺りの中緯度帯へ運ぶという役割があるそうです。
もし台風が世の中になかったら、赤道は今より「10℃ぐらい気温が上がり」、中緯度帯の日本は「10℃ぐらい気温が下がる」かもしれないといいます。
沢「実は台風があることで、暑い・寒いはあるとはいえ、ある程度、均衡が保たれている気候環境が作られています」
台風の数が少ないということは、1つあたりの運ぶ量が多くなったということ。
1つあたりのパワーが強くなり、エネルギーや熱、水分を南から北へ運ぼうとしているのです。
台風8号がもたらしたもの
沢「軽トラ何台かで運んでいたのが、10tダンプ1発でドーン!っていうことになってきた」
今年の台風が少ないのはよくない傾向だと感じていたという沢。
これからやってくるであろう台風も、今回と同じような強い台風である可能性は十分にあるそうです。
それが、海水温の高いところを通ってくる台風なのか、低いところを通ってくる台風なのかということもポイント。
関東の沖を通過し、岩手県辺りに上陸した先日の「台風8号」のおかげで、日本の南の東半分の海面水温はかなり下がったといいます。
沢「台風の風でかき混ぜるので、海の深いところの水を持ってくるので、海面水温が下がるんですよ」
今後の台風にも注目
今回の10号は全く冷めていない西側の海を通ってきたため、強い勢力のまま北上中。
気象予報士が注目しているのは、「10号が通ったあとの海水温が下がるかどうか」ということ。
下がらない場合は、同じところで強い台風がやってくるかもしれないということです。
すでにアメリカは、この先10日の間に台風11、12、13号が次々と発生するという予測を始めているといいます。
今回の台風はもちろんですが、今後の台風の動きにも注意が必要です。
(minto)