円形脱毛症の原因はストレスではなかった!
薄毛、脱毛の原因について「ストレス」が挙げられることが多いですが、最近の研究で脱毛のメカニズムがわかってきたようです。8月9日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、60歳男性からの相談に、心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が答えます。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴くハゲと円形脱毛症
「半年ほど前に後頭部に丸い形のハゲを見つけました。いよいよ自分もハゲ親父の仲間入りかと思っていると、しばらくして、そこからまた毛が生えているのに気が付きました。特別なことはしていません。何が原因でハゲになったのでしょうか?」(Aさん)
この「丸い形のハゲ」とは、いわゆる円形脱毛症でしょうか?
吉田「そうですね。髪の毛の薄くなる原因として圧倒的に多いのは、男性ホルモンの作用で髪の毛が抜けてしまう男性型脱毛症です。
この場合はなかなか元に戻らないし、脱毛の進行も通常はおでこから進むことが多く、後頭部から進むことは滅多にないです。これらを考えると、この方はほぼ間違いなく円形脱毛症です」
吉田先生によれば、円形脱毛症の特徴は、円形、または楕円形で、わりとくっきりとした脱毛のエリアができること。Aさんのように髪の毛が再び生えてくることも多いそうです。
ストレスではない?
吉田「あと特徴としては、こどもにもできる、若い世代にもできる。また、女性もなります。むしろ発生の頻度は女性の方が多いのが特徴です」
円形脱毛症の原因はストレスだ言われることが多いですが、これは本当でしょうか?
吉田「円形脱毛症=心の病気みたいなイメージの方が多いですが、実際には、それほど深刻なストレスを抱えてないのに、円形脱毛症になる人はたくさんいます。中には悩みはまったくない人が円形脱毛症になることもあります」
それでは、なぜストレスが原因だと言われてきたのでしょうか?
吉田「これは医者にも責任がありますが、未解明の病気に対しては、『わかりません』と言いにくいので、心の問題とかストレスのせいにして、お茶を濁していたところがあったと思います」
自己免疫疾患
それでは、現在はストレス以外の原因がわかったきたのでしょうか?
吉田「そうなんです。最近になって、円形脱毛症は医学研究が発展して一気に解明が進んでいます。その結果、円形脱毛症は自己免疫疾患であることがわかってきました」
本来は体内に入ってきたウイルスや病原菌に対し、白血球で撃退しようとします。
ところが、本来異物を攻撃するはずが、何らかの原因で正常な自分自身の細胞を破壊することがあります。これを「自己免疫疾患」というそうです。
吉田「円形脱毛症の場合は白血球、その中でもT細胞と呼ばれる白血球の一部が正常な毛根の細胞を攻撃してしまうので、髪の毛が成長できなくて抜けてしまうのです」
免疫の抑制で効果
円形脱毛症の場合、なぜ再び生えてくるケースがあるのでしょうか?
吉田「男性型脱毛症の場合は男性ホルモンの作用で最終的には毛根を作る細胞が死滅してしまいます。だから元通りにするのは難しいですけど、円形脱毛症の場合は、毛根が髪の毛を作るのを白血球が妨害しているだけです。
毛根を作る細胞自体は残っていますので、だから白血球が妨害するのをやめたら、また元通りの髪の毛が生えてきます」
治療法も一気に進んでいるという吉田先生。治療は免疫力の暴走を抑えるためにステロイド、あるいは免疫抑制剤が使われるようになって、効果が出ているそうです。
吉田「いま円形脱毛症になられている方は、ぜひ皮膚科を受診していただきたいです」
アレルギー体質の人がなりやすい
円形脱毛症になりやすい人はどういう人なのでしょうか?
吉田「まず遺伝の影響はすごく大きいです。一卵性の双子の場合、片方が円形脱毛症になったら、もう片方も確率50%で円形脱毛症になります。
それからアレルギー体質の人、具体的にいうと、アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー鼻炎を持つ人はなりやすいです。
本人は大丈夫でも、血縁者がアレルギー体質だと円形脱毛症のリスクが高くなるというデータも出ています」
レバー、大豆がおすすめ
普段から予防法はありますか。
吉田「ビタミンB群、鉄、亜鉛が予防に効果があるとわかっています。豚、鶏のレバーはいずれも豊富に含まれています。ただレバーを過剰に食べるとビタミンAの過剰摂取で、頭痛が起きたり、肝機能障害を起こすこともありますので食べ過ぎは注意です」
吉田先生のおすすめは豆腐とワカメのサラダ。
また大豆に含まれるイソフラボンが毛根の細胞分裂を助けるという論文も出ており、二重に予防効果があるとのこと。
吉田「男性型脱毛症も含めて、大豆製品は豊富に摂りたいです。髪の毛はたんぱく質ですし、毛根に『しっかりと髪の毛をたくさん作ってください』というシグナルを与えるという効果もあります」
(みず)