夫の会社がブラックすぎる!会社を辞める前に労働基準監督署に訴えるべき?
身近な疑問・質問・お悩みを解決する『北野誠のズバリ』(CBCラジオ)の「ズバリ法律相談室」のコーナー。 8月7日の放送に寄せられたのは、「夫の会社がブラックすぎる」という相談です。残業したのに勝手に短縮して申請、早朝出勤の深夜帰宅、事故をしたのに労災もおりないなど問題だらけ。「退職代行を使ってでも退職する予定ですが、その前に労働基準監督署へ行くべき?」という相談に、オリンピア法律事務所の原武之弁護士が回答しました。
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今回の相談者は、夫が岐阜のホテルに勤めているというリスナーAさん。
このホテルが、なかなかのブラック企業だというのです。
「今日も『残ってくれ』と言われ、月に残業時間が80時間になっているのですが、会社に出すと『多すぎるから60時間にしておくわ』と言われたそうです」(Aさん)
朝3時に出勤。通常であれば15時には帰宅しているはずなのに、帰宅は22時過ぎ。
なのに翌日も朝から出勤という生活が続いているといいます。
「挙句の果てには居眠りでトラックと正面衝突をし、車は廃車です。しかし、会社からは『労災には審査請求しないでくれ』と言われたそうです。もし会社を辞めさせてくれないなら、『退職代行にお金を払ってでも頼む』と言っていますが、労働基準監督署に行った方がよいのでしょうか?」(Aさん)
過労死ラインの赤信号
「すごいですね。文面通りだったらものすごいですね」と、あきれた様子の北野誠。
時間外労働の上限は「働き方改革」に伴う改正で「月45時間以内、年360時間まで」という決まりが設けられています。
残業は労使協定の36協定を結ばないと「1日8時間、週40時間」を超えてはいけないことになっています。
労働者側と使用者側の双方の合意があれば、上限までは残業していいということになっているそうですが、協定を結んでいるとしても、月の残業時間は多くても「60時間まで」という決まりがあります。
Aさんの夫の会社のように勝手に「多すぎるから60時間にしておく」というのは、完全な法律違反です。
それどころか、60時間を超える残業は「過労死ライン」の黄色信号、80時間を超える残業は赤信号だといわれています。
会社が犯した2つの罪
北野「当然、双方合意とは思えないですよね」
原弁護士「そうですね、『削ります』って言ってるので。違法ですから刑事罰もあるという状態になりますね」
労働を違法にさせた「労働基準法違反」で、今回の場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課せられます。
「80時間の残業を60時間にしてくれ」ということは、20時間分の賃金を払わないということでもあります。
原弁護士「二重の意味で悪質ですね。時間規制を無視してることと、賃金を適正に払っていないという2つの罪を犯していることになります」
完全な労災隠し
労災への申請をしないように促すのは、完全な「労災隠し」。
原弁護士「これは違法なので、労働災害の場合には労災申請をしないといけない。通勤災害だからということでひとつ理由があるのかもしれないんですけど」
通勤災害の場合は、労働者側が「労災を使わない」という判断をすることはできますが、会社が言っていいことではありません。
原弁護士「事故を起こした本人が、労災を使わないで自動車保険を使うというのはOKなんですけど」
労基署ができること、できないこと
そしてAさんからの投稿には「労働基準監督署に行くべきか」という一文もありました。
原弁護士「会社をきちんと処罰したいと。先ほど言ったよう刑事罰もあるほど違反しているので、労働基準監督署に行けば調査して、罰則を課すことはできます」
しかし「残業代を払ってもらいたい」という場合は、弁護士を頼んで裁判をする必要があるそうです。
労働基準監督署は「処分」や「指導」はできても、払わせることはできないといいます。
原弁護士「仲間のためにもやっておかないと、多分自分が出たら次の人が同じような目に遭いますよね」
今回のAさんの夫のケースは、労働基準監督署に行ってしかるべき事案だそうです。
(minto)