夏休みはこどもの「スマホ依存症」に要注意!
こどもたちが夏休みに入り、暑さから家にいる機会が増えました。するとスマホを触ったり、ゲームをしたりという時間が増えてしまうのでは?と心配な親も多いでしょう。7月26日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』には、41歳女性から「こどもにスマホをどれくらい見せていい?」との質問が寄せられました。この質問に、心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が答えます。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴くスマホ依存症の危険
まずは相談の詳しい内容です。
「こどもにスマホをどのくらいの時間見せるのがいいのでしょうか?我が家は小3、年長、年少と3人います。どうしてもゲームを3人ともやりたがります。時間はどのくらいさせるのが、目にも脳の発達にも成長にもよいのでしょうか?」(41歳、女性)
この質問にまず「夏休みのスマホゲームはとても危険」と回答する吉田先生。その理由を語ります。
吉田「スマホ依存症もゲーム依存症も、こどもの場合は1年のうちで圧倒的に夏休みに起こりやすいです。
そうでなくても、スマホやゲームの時間が増えて、夏休み明けに学校に通えなくなったり、真面目に勉強することができなくなるお子さんも増加しています。
そこまでいかなくても、脳やメンタルに悪影響が出るということが、多くのお子さんに起きています」
デジタルドーパミンの怖さ
なぜスマホやゲームで、登校や勉強ができなくなるのでしょうか?
吉田「人間の脳は快感物質のドーパミンの作用を利用して必要な行動をとっています。例えば朝起きて学校に行くのも、頭を使って勉強するのも、苦痛をともないますけど、やりとげると脳内にドーパミンが出て、その快感を求める形で脳が頑張ります。
ところがゲームやスマホは、まったく努力しなくても苦痛なしに大量のドーパミンが出る性質があり、こういうのをデジタル機器によるドーパミンという意味で『デジタルドーパミン』といいます。
脳がこれに慣れると、努力して苦痛を乗り越えてドーパミンを得るという本来の行動ができなくなります。
番経が嫌いだけど、やり遂げて親からほめてもらえばドーパミンが出る。それを求めて、宿題ができていたお子さんが、ゲームとかスマホで大量のデジタルドーパミンに触れてしまうと、親からほめられて出るわずかなドーパミンでは頑張る気力が湧かなくなります」
小学校で2時間まで
小学校までのこどもがスマホを見続けていい時間はどれくらいですか。
吉田「アメリカ小児科学会では、デジタル機器の画面を見ていいのは、2歳~5歳までのこどもは1日あたり1時間以下、6歳以上のこどもは健康的な使用を奨励しているということで、この場合はひとつの目安は2時間だという見解があります。
ただ、デジタルドーパミンの危険性を考えるとできるだけ少ない方がいい。特に現在こどもにスマホとかゲームを与えていないご家庭は夏休みデビューをさせずに、親はできるだけ粘った方がいいです」
デジタルドーパミンが出だすと、元に戻るのは難しいのでしょうか?
吉田先生「そうなんです。もちろん程度はまったく異なりますが覚醒剤と同じ仕組みです。脳内でA10神経という神経系が努力なしにドーパミンが出る。それを経験すると、自分の意思では離脱が困難になります。
こういう仕組みについては覚醒剤と共通しています。実際、お子さんのスマホの時間を減らすというのは、親にとってはすごく大変です」
いい影響は?
スマートフォンには、いい影響がほとんどないのでしょうか?
吉田「それは確かにあります。スマホやゲームを行うとそのコンテンツに関する脳の機能は高まります。例えば敵と戦うゲームをやっていると俊敏に反応する能力が高まる。
まだ小学生なのに『信長の野望』というゲームを極めた結果、戦国武将2000人の名前とその人がどんな武将か全部記憶しているお子さんがいます。これはデジタルドーパミンの作用で記憶も脳に鮮明に刻み込まれるということが起きているためです。
その分だけデジタルドーパミンがなければ記憶に残りにくいので、そのお子さんは小学校の授業で習ったことはなかなか記憶できないです」
中学生でデジタルデビュー
吉田「今後さらにデジタル機器に依存した社会になっていくことは間違いないので、脳が適応するために、こどもにゲームとかスマホをさせた方がいいという意見はあります」
しかし、スマホやゲームはある程度遅くまで延ばした方がいいということでしょうか?
吉田「そうです。ひとつの区切りは中学生です。おとなになるまで、まったくデジタル機器を使っていないと、使いこなす能力が低かったり、デジタルストレスといって、使っているとストレスホルモンが急増したりします。
だからまったく触れずに大人になるのはよくないですけど、触れるのは脳の成熟が進む中学生以上で十分です」
筋肉を使うこと
夏休みについスマホを使わせてしまいますが、このバランスはどうしたらいいですか?
吉田先生「大事なのは夏休みにしっかり運動させることです。脳は筋肉を使うことによる肉体の疲労、それからスマホやゲームによる脳の疲労、このバランスがとれると、デジタルドーパミンによる脳の暴走が起きにくくなることがわかっています。
実際、昔は夏休みにはラジオ体操や野球などして身体を動かしていましたけど、今は暑くてそういう運動ができなくなりました。
これが夏休みにスマホ依存症、ゲーム依存症を増やす要因、あるいはその悪影響が脳に大きくなる要因になっています」
部屋で運動を
肉体を使った改善方法はないのでしょうか?
吉田先生「ご相談者のお子さんは小3、年長ということで、おすすめは部屋の中で風船を使って、サッカー、バレーボールをするとか、ピンポン玉で野球をすることです。風船とピンポン玉を使ったらほぼすべての球技は冷房のきいた部屋で可能ですので。
もう少し年齢が上がれば、親子でビデオを見ながらダンスをしたり、ヨガをする。実際、こういう活動でゲーム依存症やスマホ依存症から立ち直ることができたお子さんは多いです」
テレビの画面は問題ないのでしょうか?
吉田「不思議なことにスマホの小さい画面だと依存症になりやすいです。ところが、テレビの大きな画面だとそういう反応が出にくいという研究成果もあります。だからYouTubeもテレビで見た方がいいです。
おすすめは親子でテレビでオリンピックを観戦して、こどもが興味を持つ競技があったら、ぜひ夏休み中に親子で体験レッスンなどに行くことです」
(みず)