先進国では最低レベル。最低賃金が「1,054円」に決定
中央最低賃金審議会の小委員会が、2024年度の最低賃金引き上げ額の目安を50円にすることを決めました。この通りに改定された場合、最低賃金の全国平均は現在の1,004円から1,054円に5%引き上げられることになります。7月25日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士が、このニュースについて解説しました。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く高校生の頃の時給は?
実際の引き上げ額は、この目安を参考に都道府県ごとの審議会で議論し決定され、例年10月に新しい最低賃金が適用されます。
それぞれの県の最低賃金が50円上がると、全都道府県で時給が900円以上になります。
永岡歩アナウンサーが高校生の時のアルバイトはプールの監視員で、時給が800円。
永岡よりも9歳年下の山本衿奈は、高校生の時の和食屋のアルバイトで時給が750円。
正木弁護士の時代は650円~700円だったそうです。
なぜ5%?
最も高くなるのは東京都の1,163円、最低は岩手県の943円。日本の中でも200円以上の差が生まれています。
今回の値上げは、生活必需品に限った消費者物価指数の直近の上昇率の5%、そして春闘で5%超えの大幅賃上げが実現したことから、最低賃金も5%の値上げが良いのではと考えられたそうです。
物価高が続く日本において給料が上がるというのはとても大切なことですが、一方で払う企業の方にも大きな影響があることを忘れてはいけません。
人件費が増えて企業の利益が減る、それによって雇用が縮小する可能性もあります。
増加する少額倒産
今年の上半期の倒産件数は4,887件。昨年比で22%の増加です。
一方で負債額の総額は減少傾向。つまり少額での倒産が増えてきているということです。
倒産の理由はゼロゼロ融資。コロナ禍の無利子・無担保で借り入れをしたものの、事業が改善しなかったというもの。
そして物価高が倒産を招いたというケースもあります。
正木「物価高を価格転嫁できず、これ以上人件費だけが増えてしまうと、さらなる倒産を招いてしまう恐れがあります。
政府も『価格転嫁をして人件費にする好循環を』と言っているものの、やはり価格転嫁率が上がっていない以上、中小企業にとってはこの最低賃金の引き上げというのは厳しいことにはなるかなと思っています」
中小企業や零細企業に目を向ける
最低賃金のままフルタイムで働いても、年間200万円に届くかどうかのワーキングプアを作ってしまうだけ。
また最低賃金を1,500円以上にするという動きもありますが、そうなると物価も上がることになります。
連合の集計では賃上げが5%を超えましたが、中小企業や零細企業はそうはいきません。
今年の賃上げは、従業員30人未満の企業では2.3%。
中小企業や零細企業にどう目を向けていくのかは大きなところです。
政府に求めること
アメリカではおよそ2,560円、イギリスはおよそ2,210円と、日本の2倍以上の水準です。
この5年の伸び率で見た場合、日本の11%に対して、イギリスは27%、ドイツは33%。
国際的にみても、最低賃金には大きな差が生まれています。
日本でこのまま低い水準が続くと、非正規労働者の生活安定や外国人労働者の確保も不安定になることが考えられます。
最低賃金の着実な引き上げ、そしてそれを基礎づける経済成長は政府に一番力を入れて欲しい部分です。
(minto)