高い時給で若者に人気「ワーキングホリデー」。大きな落とし穴も…。

高い時給で若者に人気「ワーキングホリデー」。大きな落とし穴も…。

若者がキャリアアップやスキルアップのために海外に行き、旅行、仕事、語学の習得と自由度の高さが魅力の「ワーキングホリデー」。人気も高まり年々増加傾向にありますが、実際に現地に行ってみると理想とは違い大変な思いをする方もいるそうです。7月23日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の北辻利寿特別解説委員がワーキングホリデーの現状について解説します。聞き手は光山雄一朗アナウンサーと山本衿奈です。

働きながらの休暇

夏休みが始まり、この機にワーキングホリデーに旅立つ若者も多いと思います。

北辻「ワーキングホリデーを訳すと、働きながらの休暇です。2つの国の取り決めによって18歳以上の若者がお互いの国に行って休暇を楽しみながら、語学を勉強しながら、滞在資金を得るために向こうで働くという制度です。そのビザも発給されます。

日本では1980年(昭和55年)、44年前、オーストラリアとの間で制度がスタートしました。現在30カ国の国と協定を結んでいます」

ワーキングホリデーの目的は何でしょう?

北辻「基本2つあります。海外で暮らすことで広い視野を持った若者を育成する。お互いの行き来で相互理解を深める、です。

その国で休暇を過ごすことで、旅をする、遊ぶ、働く、学ぶ、暮らすわけです。特に働きながら遊ぶのがワーキングホリデーで、海外での生活を体験できるというメリットがあります」

オーストラリアが人気

30カ国の中で一番日本人に人気が高いのはオーストラリアだそうです。

北辻「一般社団法人の日本ワーキング・ホリデー協会によると、この制度を利用して外国に渡っている日本人の若者は年間およそ2万5000人います。
このうちオーストラリアに行っているのが1万5000人、6割です。次いでカナダ、ニュージーランドとなります」

なぜオーストラリアが人気なんですか?

北辻「最初にオーストラリアが第一号で始まったという長い歴史もありますが、他にも理由があります。

人気都市のシドニーでは日本からの進出企業が多く、日本語が通じる日本食レストランも多く、働きやすい。次にビザの延長もしやすくて条件を満たすと3回で3年間も延長できます。

そして、何よりも賃金が高いです。オーストラリアの最低賃金は時給で今月から24.1オーストラリアドル。日本円にすると2,500円です。これは大きな魅力です」

仕事がない!

この日本の約2.5倍となる賃金の高さが、最近ある問題を起こしているそうです。

北辻「ワーキングホリデーはお互いの理解を深める交流ですが、遊びよりとにかく働いて稼ぐことが主になっているという傾向があります。長引く円安が、海外での収入に有利なので、まず海外に働きにいこうという若者が増えています。

現在オーストラリア政府は50カ国にビザを出していますが、日本人に対しての発給率が過去最多です。それだけ日本から行く若者が多いそうです」

その代わり、現地でただいっぱい行くので、向こうで仕事に就くことができない若者も増加しているとのこと。

北辻「その背景には新型コロナウイルスの感染拡大によってワーキングホリデーで来ていた世界の若者たちがみんな帰ってしまった。だから、オーストラリア自体もレストランなど受け入れ態勢を縮小していました。それがコロナ禍が終わって、次々と若者が殺到するわけです。

現地の報道によると、英語の能力においては日本人よりも他の国の若者の方が使いやすい。もうひとつ、オーストラリアは農業国で農場もたくさんありますが、そうなると体格が大きく力があって、英語も話せる他の国の若者が有利ということが起きてしまっています」

新たな問題に

せっかく行ったのに働き先がない場合、どうなるのでしょう?

北辻「円安で持って行ったお金はあまり使えない。そうなると、公園でホームレスの人たちに無料で配布される食品の行列に日本人の若者が並んでいる、という風景もあるという現地からの報道もあります」

外務省でも、最近は海を渡っても働くことができないという問題を把握しているようです。

北辻「オーストラリアから始まったワーキングホリデー制度も45年になりますが、新型コロナ、今の円安、この時代の流れによっていろんな変化が生まれているといえます」
(みず)
 

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