道交法改正から1年。「電動キックボード」がいまだ抱える問題点
一定の条件で電動キックボードが免許なしで乗れるよう「道路交通法」が施行されて1年が経ちました。利便性が高まった一方で、複雑なルールに対する理解は広がらず、違反者も続出しているようです。7月18日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士が、電動キックボードの問題点について解説しました。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く「特定小型原付」の条件
電動キックボードは、もともと原付バイクと同じ扱いで免許が必要でしたが、昨年の7月1日に「特定小型原付」という特別な仕組みができ、一定条件を満たしたものは公道も免許なしで乗れるようになりました。
条件はいろいろありますが、本体の条件としては「長さ190cm以下、幅60cm以下」「時速が20km以下」「走行中に最高速度の設定の変更ができない」「最高速度表示灯の装備」など。
本体以外の条件では「自賠責保険の加入」「ナンバープレート」があり、「ヘルメット」は努力義務です。
自動車専用通行帯、路側帯といった車道側を走るのが第一条件。
「ヘッドライト」「テールランプ」「ブレーキランプ」「クラクション」「ウインカー」「ブレーキ」といった保安設備も必ず必要です。
これらが備えられていないものは「特定小型原付」には当たらないため、ただの原付、または公道を走れない乗り物です。
反則金や違反者講習も
原付との違いは歩道を走れること。
電動キックボードは許可された場所であれば歩道走行が認められています。
しかし歩道走行の場合は、最高速度を6km以下に抑えた「歩道モード」にする必要があります。
信号を守らない、定められていない場所を走る、携帯電話を使いながら走る、といったさまざまな違反があり、反則金も取られます。
悪質な違反を繰り返した場合は「違反者講習」が命じられ、受講をしないと5万円以下の罰金に処せられるというような厳しいルールも設けられています。
利用が難しい「電動スーツケース」
最近SNSでよく見られるのが、乗って移動できる「電動スーツケース」。
「電動スーツケース」は電動キックボードとは違う枠組みで、法律的にいえば「原付バイク」の扱いになるため、原付バイク以上の免許が必要となります。
保安設備も付いていないため、公道で乗ることも当然できません。
国内の空港内では走行禁止のアナウンスをしているところが多く、実際に国内で利用できる場所はかなり限られてくるといえます。
道路交通法改正のきっかけ
電動キックボードは、「ラストワンマイル」という短い距離の移動手段として、海外のシェアリングサービスで普及しました。
しかし、しっかりとしたルールがなかったため、歩道でスピードを出すといった危険な走行や、飲酒運転、転倒事故などがかなり多くみられたといいます。
さらに歩行者のひき逃げ事故も発生して、加害者が過失運転致死傷罪で逮捕される事件もありました。
このような危険な走行や事件が増えてきたことから、昨年の7月、電動キックボードに関する「道路交通法」の改正が行われました。
わかりづらさが事故を誘発
16歳以上という未成年でも使用できるにもかかわらず、走れる場所がわかりづらいということ、また「特殊小型原付」にもさまざまな種類があるため、まだまだ誤解や違反がわかりやすい状況は続いています。
「歩道モード」に切り替えないまま歩道に進入して、摘発されるというケースも。
このように法律上わかりにくい状況が、事故を誘発する原因となっているため、利用者が事前に乗り方や交通ルールを学ぶ必要があります。
海外では「走っても良い道路」がかなり整備されているので、日本も同じように安全な環境整備が求められます。
国によって道路整備状況や免許の有無、走れる場所、年齢制限など全く異なります。
事故が増えているため、「規制を強めるべきではないか」という意見も出ているそうです。
日本でも同様の議論がこれからも求められること、そして増加する外国人観光客への広報活動も重要になるということです。
(minto)