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書評家おすすめの名作!植松三十里『梅と水仙』

書評家おすすめの名作!植松三十里『梅と水仙』

水曜日の「CBCラジオ #プラス!」では、書評家の大矢博子さんがおすすめの書籍を紹介します。6月26日の放送でピックアップしたのは、7月から発行される5千円札の肖像で話題の津田梅子さんの物語である、植松三十里の『梅と水仙』です。梅子とその父・仙の親子の物語とは?

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あらすじ

津田梅子は日本初の女子留学生としてアメリカに渡り、帰国後は津田塾大学などを創設し女子教育のために奔走された偉人です。

そんな梅子の生涯を描いた『梅と水仙』。
物語の始まりは幕末です。
幕府の英語通訳だった梅子の父・津田仙は、福沢諭吉らとアメリカ使節団に入り活躍していました。
長崎に訪れた際、外国語を使う能力がないと思っていた女性が通訳をしていることに衝撃を受けた仙は、明治に入るとわずか6歳の娘・梅子をアメリカへ留学させることに。

梅子は勉学に励みますが、一緒に留学した人が次々と脱落していき、残ったのは3人。
そんな中で10年間アメリカで学び、16歳になった梅子は帰国します。

しかし梅子はすでに日本語をすっかり忘れており、日本の習慣も覚えておらず、正座もできない状態に。
そんな彼女たちが働ける場所が日本にはありません。

一体何をしに留学したのか?葛藤と苦闘も描く歴史小説です。

読みどころその1

読みどころは「帰国してからの日本の状況」と大矢さん。

津田梅子というと、大学を作って教育に奔走されたとまとめられますが、この物語では帰国した時の日本がどんな状況だったのかがつぶさに描かれています。

西洋化を進める政府の肝入りで留学したものの、帰ってきたら受け入れる場所がない矛盾した取り組み。
また、家族は留学直後の梅子に対して次は結婚して子どもを産めと勧めるなど世間の感覚は古い現状です。

例えば外交官の妻が接待で外国人とダンスをすると淫らだと思われたり、夫が外で子どもを作っても妻は文句も言えないような時代でした。

進む西洋化と古い価値観が混在するこの時代に梅子が何を考え、どうすべきかを導き出す過程が一番の読みどころです。

読みどころその2

この物語は梅子の話だけではなく、父である仙の話が交互に描かれます。

日本語を忘れた娘を見て感じたことや、娘のためにやったことが本当に娘のためだったのかと悩む葛藤も読み応えがあると大矢さん。

また、仙は日本の農業改革のために働く傍ら、キリスト教の信者として福祉活動を行っていました。
仙は日本で初めて街路樹を作った人でもあり、日本で初めて通信販売を行った人でもあるなど、偉大な功績を残した人物のひとりです。

大矢さんは、梅子と仙の親子を中心とした評伝小説は珍しいといいます。
親子の人生を描いた歴史小説、新札発行の機会に味わってみてはいかがでしょうか。
(ランチョンマット先輩)
 

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