郵便料金が今年10月から値上げ!郵便の「これまで」と「これから」を考える
日本郵便は今年の10月1日より郵便料金を値上げすると発表しました。年賀はがきも含めたはがきの値段は63円から85円に。定形郵便物や速達、レターパックなども値上げされる予定です。日本郵便によると、今回の値上げは郵便サービスの安定的な提供を維持していくためとのことです。6月17日放送の『CBCラジオ #プラス!』では「郵便のこれまでとこれから」について、CBC論説室の石塚元章特別論説委員が解説しました。
関連リンク
この記事をradiko(ラジコ)で聴く郵便を心待ちにする感覚
この話題に入る前に、まずは「聞いてほしい曲がある」とリクエストする石塚。
その曲とは、カーペンターズが歌う「プリーズ・ミスター・ポストマン」です。
耳なじみのある曲ではありますが、今回は歌詞がポイント。
この曲は、実は「好きな男性から届くはずの手紙を心待ちにしている女性」の話です。
石塚「なぜこれをお聞きいただいたかというと、そういう感覚って今なくなりつつありませんかと」
パーソナリティの光山雄一朗と三浦優奈も、通信手段が増えた今は「郵便を待つ」ということはないようです。
手紙は単なる通信手段として始まったものですがそれだけではなく、「思いを込める」「大事なことを伝える」など、いろいろなものが不随して発達してきました。
画期的な郵便システム
まずは郵便の歴史を紐解きます。
最初の通信手段としては狼煙や飛脚などがありましたが、それはあくまでも権力者が用いるものでした。
日本でいうと、庶民も通信手段を使えるようになったのは明治になってから。
「郵便の父」として知られる前島 密(まえじま ひそか)は、日本に郵便の仕組みを築いた人として知られていますが、彼がモデルにしたのはイギリスでした。
19世紀頃、イギリス郵便制度の改革者、ローランド・ヒルが画期的ないろいろなアイデアを出して、現在も世界中で使われている郵便のシステムを作り上げました。
それは例えば、今では当たり前の「全国均一料金」や「従量制」など。
中でも石塚が最も画期的だと思うことは、郵便料金の「前払い制」。
こうすることで、配達先でのトラブルがなくなったといいます。
「ポスト」といえば…
しかし、郵便は「出す人が減った」という大きな課題があります。
ピークは2001年度の262億通。最近は年間135億通とほぼ半減しているそうです。
これは、さまざまな通信手段が登場したことで、人も企業も郵便を使わなくなったため。
また「郵便ポストの数」も課題です。
元々、郵便ポストはどこにでもあって、少し探せば見つかる便利なものでした。
現在「ポスト」といえば「X(旧Twitter)」に投稿することを指すため、そのうち若者の間で「ポスト」とは郵便ポストではなく、こちらになる可能性もあります。
1通も入っていないポスト
今、日本にある郵便ポストは17万5000本。
しかし、1ヶ月の間に30通ほど、つまり1日1通しか郵便を入れてもらえないポストがそのうち4分の1を占め、1通も入っていないポストも4%あるといいます。
しかし「どうせ入ってない」と集めに行かないわけにはいきません。
この人手不足の時代に、あまりにも労力がかかりすぎです。
配達そのものも減っていて、2021年からは土曜日の配達がなくなっています。
郵便の「ユニバーサルサービス」
「ユニバーサルサービス」という問題があります。これは「誰でも同じようなサービスを受けられるようにするべき」という考え方のこと。
日本の郵便法の第1条には「この法律は、郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする」とあります。
つまり、たまにしか郵便物が入らないポストをなくしてもいい、ということにはなりません。この大命題が、日本の郵便には突きつけられています。
1~2年で再び赤字に
現在の郵便事業は、年間220億円の赤字。これを立て直すにはまずは「値上げ」ですが、これにも問題があります。
総務省の試算によると、値上げにより一時的に黒字になるものの、1~2年でまた赤字になると出ているそうです。
今回の値上げでまかなえる分よりも、郵便物の数が減る率、他に乗り換えられる率、人口が減る率の急激な影響が大きいということです。
郵便を新しいビジネスに結びつける、手紙を完全にないものにするなど、何かを考えていかないと、日本の郵便の未来は見えなくなってしまいます。
(minto)