海の幸に異変!?いま伊勢湾で水産資源を巡る死活問題が起こっている

海の幸に異変!?いま伊勢湾で水産資源を巡る死活問題が起こっている

黒潮が流れ込む伊勢湾。その玄関口に浮かぶ三重県の答志島は、海の幸の宝庫です。しかし、島の一角に山のように捨てられていたのは、地元の名産「クロノリ」でした。いま、島の水産資源を巡って大きな問題が起きています。問題の背景を取材しました。

養殖したクロノリに異変

CBCテレビ:画像 『チャント!』

答志島の南部で海面に白い網を張って養殖している「クロノリ」。三重県内でも有数の産地で、濃厚な磯の香りが特徴。例年春になると、収穫したノリを加工する最盛期を迎えます。

しかし、加工場の隣には茶色い山が…。島でノリを20年養殖している答志クロノリ研究会の川原栄策さんに聞きました。

川原さん「これノリですね、もう売れないので。経費うんぬんの前に、一生懸命育てているものなので。やっぱり(捨てるのは)何とも言えない」

手塩に掛けたノリを、泣く泣く廃棄せざるを得ない現状がありました。

加工場は明かりすら点いていません。2022年はクロノリが緑っぽくなり、売り物にならない状態でした。味も悪く、市場に出しても値が付きませんでした。ここ数年、黒潮の流れが蛇行し、ノリの栄養が減ったことなどが要因です。

また船の燃料となるガソリン価格の高騰や、莫大な設備投資を踏まえると作れば作るだけ赤字は膨らみます。網などの資材代も高額で、漁業関係者にとっては死活問題となっています。

産卵前のサワラを守りたい

CBCテレビ:画像 『チャント!』

答志島で漁師たちがいま最も力を入れているのが、サワラです。たっぷり脂が乗っていて、まるで中トロのような味わい。重さ2.1kg以上、脂が10%以上のものを「トロサワラ」としてブランド化し、地元の旅館や料亭に卸しています。

ところが、和具港(答志島)では2019年をピークに、サワラの水揚量が3分の1に。特に「サゴシ」と呼ばれる0歳魚のサワラが獲れなくなっています。

サワラが釣れなくなった原因は、網にありました。全長約1Kmもある「流し網」は、サワラを一網打尽に収穫することができます。水産資源保護のため使っていい時期を“サワラの産卵期が終わった7月以降”と愛知と三重の漁師の間で取り決めています。そのため、答志島の漁師たちは産卵期が終わるまで一本釣りでサワラを獲っていました。

しかし、愛知県側では「流し網」を「カゴメ網」と呼んでおり、この網を3~4月にスズキやボラを獲るために使います。いまこの網に、産卵を控えたサワラが多く掛かっているのです。

漁師の西川豊浩さん「産卵を控えたサワラを獲ってしまうと(サワラが持続的に育たなくなる)…後継者のために何とかしたい」

答志島の漁師たちは、産卵前のサワラを守るため行政にルールを作ってほしいと訴えます。

三重県と愛知県が共存するための模索

CBCテレビ:画像 『チャント!』

三重県水産資源管理課の土橋靖史課長は、「サワラ類を持続的に利用するには産卵新魚の保護が重要なため、2021年にも愛知県に“狙い獲りしないよう申し入れをしている」と言います。対する愛知県水産課の堀木清貴課長補佐も、「三重県の漁師から苦情があることは把握しており、その都度漁協になるべく控えるようお願いはしている」と言います。

答志島では、漁師の8割以上がサワラの一本釣りと、ワカメの養殖で生計を立てています。どちらか一方が獲れなくなれば、たちまち大きなダメージとなりますが、サワラが減ってきている今、産卵期の一本釣りすらも禁止しようという動きもあります。

鳥羽磯部漁協 和具浦支所の山本千年理事は、何とか大切な海洋資源をみんなで守りたいと考えています。

山本理事「不安で不安でしょうがないので、将来のことを考えて資源をみんなで守ろうと。ひとりではできないので」

伊勢湾を隔てて同じ水産資源を獲る三重県と愛知県。双方の漁師たちが共存するための模索が続いています。

CBCテレビ「チャント!」5月4日の放送より。

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